GVVC Weekly – Week 302

Chat Pile – Funny Man

チャット・パイルが再来週リリースする新作アルバムからこれで三つ目となる先行トラックをビデオ公開。
出る曲、出る曲すべてトップで紹介してしまっておりますが、それ程までに素晴らしいのです。今回の楽曲は前の二つより比較的、前作LPのメイン楽曲を踏襲したような路線になっていて、シグネチャーとして完全に確立された強靭かつ堅牢なメタリック・ポストハードコアの鉄壁アンサンブルが展開されております。
重いけど重すぎず、インテンシティも苛烈すぎず、ある程度の爽快感とリズムの躍動感をバランスよく残しながらヘヴィに突き詰める、とんでもない職人芸のバランス感覚です。演奏からミックスから何もかも本当に完璧なサウンド、100点をつけるしかありません。


Charlotte Jacobs – CYTMH

New Amsterdam Recordsから来月リリースされるシャーロット・ジェイコブズのデビューアルバムより二つ目の先行曲がビデオ公開。
この曲に関して枠としては大別してエクスペリメンタル・ポップといったところになるのでしょうが、トラックのベースになっているのはエレクトロニック駆動とはいえ、室内楽〜コンテンポラリーの雰囲気が多少加味されたフューチャー・アブストラクトR&Bのような仕上がりで、良いとこ取りで構成されるテクスチャーが素晴らしい音像です。
先に出ていた楽曲では後半に被さってくるフリージャズ風にブレイクした生ドラムがかなりオーガニックな響きでしたし、LPのクレジットにはフルートやサックス、ヴァイオリンにチェロなどの客演が入っており、基礎となるエレメントに絶妙に温かみを加えつつ、クラシカルなエレガンスを纏う独自のサウンドが確立されてますね。ベルギー出身で現在NY拠点というバックボーンも非常に納得。


Laura Marling – Child of Mine

ローラ・マーリングが来月リリースする新作アルバムから三つ目となる新たな先行曲がビデオ公開。
オープニングトラックに配置されたこちら、いつもの弾き語りスタイルにストリングスとピアノでバックアップされた、親密な雰囲気とスケールの大きさが同居したアレンジの楽曲で一つ前のシングルに引き続き非常に素晴らしい。
正直な話、母になってダメになったなと感じるアーティストもそこそこおりますが、彼女は創作のアウトプットにも明らかにプラスに作用していて、元々の浮世離れしたような神秘性みたいな部分が程よく薄れ、より柔和に穏やかになっていて、かつあっさりした部分は据え置きなので今回のように少し大味な編曲でも鬱陶しくならないのが強い。これは今作LPが考えようによっては過去最高に聴き易い一枚になるかもれないです。


Andreya Casablanca – Once You Laugh

ベルリンのガレージ系インディロックデュオ、Gurrの片割れであるアンドレヤ・カサブランカによるソロ名義が来月リリースの1stフルレングス作から新たな先行曲をビデオ公開。
バンドの時と違い過ぎる音楽性で、エディット感の強いハードな歌モノのハウスになっており結構簡単な作りなのですがボーカル、キックの鳴り、挿入されるサンプルから何からこう、ラフめなのにもかかわらず妙に求心力というか愛嬌があり「専攻じゃない人間が作ったクラブミュージック」感がマシマシで非常に良い。こういう事故的に発生した好トラックての本当そそります。今の所、他に出てる収録曲はぜんぜんこんな感じじゃないんですよね。

今週のLP/EPフルリリース

Adeline Hotel – Whodunnit (LP)

今年の春に来日公演を行なっていたDan Knishkowyのプロジェクト。確か昨年の前作も紹介したけど、作風の振り幅が広い人なんで今回はまた趣が違うんです。
まず今回は基本的に歌ってるんで、インディフォークっぽい体裁ではあるけどインストの時にもあったそこはかとないポストロック風のタッチはやはり健在。ボーカルのスタイルがソフト一辺倒なもんで、印象としてはNicholas Krgovichあたりの路線とも遠くはない。単にアップライトベースなせいも多分にあるにしろジャズの雰囲気もちょっとだけあって良いスパイスになってるし、あくまで歌モノでもアレンジの振り幅はそこそこ広め。ドラムは結構入ってリズムは弱すぎないし、決してアンビエントな趣は無いんだけど何故か、かなり小さめの音量で夜に家でしっとり流したいと感じるような音楽です。でもまぁ、正直…前のインスト作の方が好きかな。でもこれも悪くはない。
Katie von Schleicherがエンジニア・ミックス(歌でも参加)、Sandro Perriがマスタリングと裏方もソロ作出すレベルにミュージシャンを兼任する人材で固めてあるのが面白いね。