GVVC Weekly – Week 303

The Weather Station – Neon Signs

ザ・ウェザー・ステーションが引き続きFat Possumから11月にリリースする新作アルバムをアナウンスし最初の先行曲を公開。
前作(コンパニオンアルバムをカウントすると厳密には前々作)アルバムを当GVVCでも大絶賛しましたが、基本路線は大きくは変わらず個人的に特に好みであった部分を見事に強化し、完全に進んで欲しい方向へ進んだ改心のトラックです。
もっと前の作品では残っていた若干のアメリカーナ風味は完全に消え去り、クラシカルで優雅な佇まいとしっかり刻むインディロックのダイナミズムを同居させつつ微かにエクスペリメンタルのテクスチャーを忍ばせたチェンバー・アートポップとでも呼べるような他に近似値のない唯一無二の音楽性。細かいアレンジの枝葉がますます複雑化しておりポストロックすら感じさせる方向性にまでなってきています。表層の質感の部分では演奏に生々しさが増し、よりバンド感の強まったライヴなサウンドへ。この曲に関してはホント完璧なので、他の曲も期待できます。今年も入賞間違い無し。


Faye Webster – After the First Kiss

フェイ・ウェブスターが単発のニューシングルをリリースしビデオを公開。
以前ストリングスを従えたリアレンジEPをリリースしていましたが、今回は最初っからストリングスのバッキング入りで普段の装いよりもいくぶん豪華なサウンドに。楽曲とメロディは彼女の十八番スタンダードなやつですが、ピアノにピチカートにガットギターそして前述のストリングス隊と、カーディガンズよろしく北欧ポップスのような風情が追加されており、やや新機軸と言えるでしょう。
なんだかんだボトムは太めに仕上げてくるのが流石というか非常に「らしい」ですね。主催するハイパーヨーヨーの大会はどうだったんでしょうか。ビデオにDeb Neverが出てます。


Maria Somerville – Projections

4ADと契約したマリア・サマーヴィルが移籍後初の単独プロパーリリースとして単発のシングルをビデオ公開。アルバムのアナウンス等はありませんが確実に次回作に収録されるであろう楽曲です。
霧深い幽玄フォークのテクスチャーで、旋律やコード感はとりたてて別に幽玄ではないむしろ明るめのドリーム・アンビエントフォークを展開していてちょっと面白い。音作りって面は完全に定番の型のひとつで強烈な個性はないですが、なんか爽やかだし歌のメロディは完っ全にシューゲイズです。ボーカルはちょっとLali Punaっぽいかな。


Waxahatchee – Much Ado About Nothing

今年、傑作プロパー新作アルバムを既にリリースしたワクサハッチーが早くもニューシングルをリリースしビデオ公開。
またしてもMJ Lendermanが全面参加しており、サウンドは完全に先の作品の延長戦上にある凛としたオルタナカントリーでタイム感自体はゆったり流れますが音のインテンシティはなかなか高く、彼女の強烈なボーカルは特に際立った存在感です。
品質的にアルバムセッションからのアウトテイクって感じもしないですが、他の収録曲と区別がつかないほど似通っているので金太郎飴状態になるのを避けたのかな。

今週のLP/EPフルリリース

Dawn Richard and Spencer Zahn – Quiet in a World Full of Noise (LP)

先行曲が良くて期待してた、一発だけで終わると思っていた連名作のLP第二弾。前も思ったけどなんでこれがMergeのリリース?イメージに合わないよね。
サウンドは前作から一気に進化し、ポストクラシカルの趣を多分に湛えたアンビエント・チェンバーポップ・ポストロックといった内容でとんでもなく流麗な仕上がり。非常にスケールが大きく開放感のある音作りで、過度にコンテンポラリーだったり小難しい頭でっかちさ等は一切無い、ある意味でとてもシンプルな美しさ。
今回シンセはかなり脇役に追いやられ、生楽器はヴァイオリン、ホルン、トランペットなんかも入ってくるけど全編に渡り残響がかなり強調されたアレンジ・ミックスなので室内楽っぽさは強くなく、前述の要素に加えスムーズジャズまでも飲み込んだこれ以上ない最強の折衷音楽が顕現してる。
更にドーン・リチャードのボーカルは全くもってインディ云々の枠ではなくホンモノなので、この音楽性との組み合わせにより相当クラス感のある印象を与え、このまんま高級ラウンジなんかにも対応可能な超ハイクラスBGMとしても機能。こういう歌モノかつ生演奏ベースのアンビエントでこれ以上はそうそうお目にかかれないレベルのクオリティになってます。カバーアートも素晴らしいね。