GVVC Weekly – Week 304

Fazerdaze – A Thousand Years

ニュージーランドのフェイザーデイズが11月にリリースする新作アルバムから新たな先行曲ビデオを公開。今回はFlying Numからではないようです。
こちらアルバムのタイトル曲かつオープニングトラックということで本人的にも気合の入った一発なのでしょうか、普段よりもエレクトロニック色が強めのプロダクションで、かといってインディR&Bには振らずにドリーム寄りのALTポップってなとこに落ち着いてます。
逆にこんな感じの方がより一層、宅録感が増し増しで余計にベッドルーム臭が香るのは良いんだか悪いんだか、名を上げてからもう結構経つし、そろそろがっつりハイファイな生演奏バッキングのトラックでも聴いてみたい。家で撮ったっつうセルフのMVはちょっとディレクションがダサいね。


The Unfit – Who’s in Charge

シカゴのパンクバンド、ジ・アンフィットが来月リリースするEPから先行曲のリリックビデオを公開。
これはパンクロックの中でもハードコアパンクと言っていいか少しビミョーなラインではあるが、更に別でガレージの要素もグランジの要素も入ってるしポストパンクも、ごくごく僅かにサイケも…というところで、楽曲そのものは1分40秒で駆け抜けるストレートなクラウトビートの直線トラックなのにも関わらず、よくばりセット並に細かい部分を楽しめるかなり隠し味の多い音楽性です。
最終的なアウトプットはちょっとキャッチーなJesus Lizard、めちゃくちゃ軽くしたO SESSみたいな印象に落ち着いたかな。他の曲聴いてみたけどコレだけが際立ってる。

今週のLP/EPフルリリース

Chat Pile – Cool World (LP)

最初の先行トラック聴いた時点でまずこのアルバムレビューには内定、その後も出す曲出す曲100点満点でもうリリースされる前からベストアルバムまで確定してましたが遂に全容が明らかに。
改めて腰を据えて聴いたまず第一印象だけど、もう笑ったよね。凄すぎて笑う、笑うしかないです。何がそんなに凄いのか?いや、端的には「出音とアンサンブル」としか言いようがないのですがもう職人芸、匠の技ですよこの音作りはね。サウンドは基本的にはメタリック・ポストハードコア〜スラッジの範疇です。でもさ、ここまで苛烈で鋭いインテンシティをどうしてこんなにマイルドにパッケージできるんだろう。エンジニアが相当凄いのかな?ボトムも太いは太いけどShinerのLula Diviniaくらいの感じの鳴りでおさまってて、ノイズロックっていう冠を被ったオルタナというか重すぎるグランジという解釈も出来なくはないよね。
ともかく、前作アルバムも本当に素晴らしくて大絶賛したけど、そこから核になる良さはそのままに、ちょっと聴いた感じには大きな路線の変化もなくひたすらクオリティを向上させ、より歯切れよく纏めた完璧なアップグレード版になってます。例えで音楽性が違いすぎるけど、雰囲気としてはTeen Dream出して大ブレイクし、そんなに間をあけずBloom出した時のBeach Houseね。あの2枚の距離感と内容の差、ブラッシュアップ具合が本当にソックリそのまんま。ある意味SUB POPから出ててもおかしくない。
Consとしては、やさぐれ度合いだけは減退してるのと、全体の構成の中で「抜き」がちょっと足りないとかあったりで、フルレンフグスとしての芸術点は少し劣る。前作のあのちょっとだけカラっとした乾いた質感が侘しさを増幅させてた部分もあり、プロレタリアート感とか魂の希求、その切実さは薄れていて、そこは正直良し悪しかなと。最終的な結論としては前作と甲乙付け難い傑作です。


Black Ends – Psychotic Spew (LP)

ジャケットのイメージからしてもわかる通りで、音楽性的にはウチで紹介することが少ないタイプ…なんですけどこれは間違いなく良いバンド、作品なので紹介します。
基本はスリーピースで客演がちょいちょい入ってくる構成(終いにはチェロやフレンチホルンまで登場します)にサウンドはちょっとグランジっぽいポストパンク〜パンクロックっていう雰囲気だけど割とガチャガチャさせてくるのでシンプルなビートは少なく、キメや大胆な展開も多いので若干のポストハードコア〜マスロック味もありと、本人ら自称してるのはポスト・グランジらしくまあそんな感じ。
しかし、ギター(メインボーカル兼任)上手すぎるでしょうよ。小手先どうのってよりタイム感とアンサンブルの勢いを殺さずに差し込んでくるフレージングがホント絶妙です。編成と歌唱のスタイルからちょっとScreaming Femalesあたりを思い起こすようなところもあるけど、もっと引き出しが多くてレンジの広い音像かな。シアトルってのも何かすごく納得する音してる。たまにこうやって趣向の壁を超越してくる快作に遭遇すると音楽ってイイよね!ってなるわぁ。


Goat – s/t (LP)

正直、明確にサイケデリック・ロックという文脈には自分は明るくなく、生涯通してそれほど嗜好もしておらず味変のいち要素として時と場合によりアリという距離感であるため体系的にはこの音楽をレビューできない。
でも…先行曲の時に書いたことと一部繰り返しにはなってしまうのだけど、この人たちのそれは純粋なサイケの個人的に苦手だなというところがかなり薄まってるんですよね。アクっていうのか、同じようなフレーズ弾いててもその粘りやコシとかの話で論理的に説明するのが非常に難しい部分なんだけど、ちょっと爽やかじゃないです?ワウワウでエグいサウンド出してても比較的クリーンに響く謎のスタイリッシュさがあるというか。でも同時に土臭さもあるじゃない?この人たち。
それと不思議なもんで、これまたおそらくこのバンドの重要な要素であるシャーマニズムもフォークロアもそんな得意ではないんだよな。だけどなぜGoatはこんなに聴けるんだろう、自分。ダンスも入ってるからいけるのかなぁ?民族的なとこは言うて実際の音にはあまり顕現しておらず見た目だけの可能性もあるか。
まぁ、そのへんのサブ要素とミステリアスなブランディング、歌唱のスタイル等かもら4AD移籍する前のGang Gang Danceと少し被るんだよね。いやぁ、今回も聴き易かったです。次があるなら、もう少しだけさらにポップにしてみてくれないか?程々でいいんで。