GVVC Weekly – Week 311

Mandrake Handshake – The Change And The Changing

ロンドンの大所帯バンド、マンドレイク・ハンドシェイクが来年2月にリリースするニューアルバムからリードトラックを公開。これの他、今年にパラパラと出していたシングル2曲も収録です。
他のシングル含めた楽曲のレンジの広さを考えると結構複雑な音楽性で、サイケ、ソウル、クラウトにスペースロックそしてダブといった要素がそこそこメロウなボーカルを主役にまとめられている面白いサウンド。
その中でも今回は特にはっきりと歌モノとしての強度がある仕上がりで、ちょっとソフトなインディソウルポップの亜種とも比較できるようないい意味でのライトさがあり、彼らがこれまでリリースしたトラックの中では最も聴き易い部類かな。新作アルバム、この辺ともう少し渋め路線との分量バランスと馴染みが良ければなかなかの好盤になりそう。


Cloth – Polaroid

グラスゴーの男女双子デュオ、クロスが昨年のアルバム以来となるプロパー新曲を単発のシングルでビデオ公開。
控えめに整理されたギターやストリングスなどで余白を広く残しながら音場を飽和させないレベルでキレイ目に装飾しつつ、ボトムは捻りのない8ビートを強めにしっかり刻んで高揚させていくというタイプのとってもモダンなインディロックに仕上がってまして、最終的に派手なバーストなどはなく終わります。
以前はもう少しアトモスフェリックな部分というか、アンビエントロックのような雰囲気を強めに醸し出してはいたものの、楽曲構造自体はそこそこオーセンティックな印象だったので、この方向性はとても納得できますね。
でもねえ、これ、今回はちょっとThe Weather Station意識したサウンドに聴こえるかなあ。顔も少し似てるし。ただ、まだまだこれでも進化途中な雰囲気ありありなので、現時点の感触からいくと最終到達点は割と面白そうですし今後も注視です。


Ex-Vöid – Pinhead

ロンドンのイーエックス・ヴォイドが来年1月にリリースする新作アルバムから二つ目の先行曲を公開。
Joanna Gruesomeの主要メンバーLan McArdleとOwen Williamsによるバンドで、少しパンクというか粗さの残るサウンドであった前作から進化し、大きな方向転換は無いものの全体的にマイルドに整理された完成度の高い質感に。
今回の楽曲はモダンシューゲイズになったVelocity Girlのような仕上がりで、最近の流行のオルタナ風味にジャングリーまでカバーできる広義のギターポップラインと前バンドにあったガレージの獰猛さが全て融合しており、単体で目立つ明確なシグネチャー要素というよりはこのミックスバランスで意外と他に互換性のあるようなバンドが居ない着地点を見つけてます。カバーアートと内容が全然合致してないとこも含めてこれは面白いし、キラリ光る独自性を感じますね。


dodie – Old Devil Moon (Chet Baker cover)

Chet Baker Singsの70周年を記念してDecca Recordsがチェットベイカーのボーカル曲カバーコンピを来年4月にリリース。そちらから最初の先行公開はUKのSSW、Doddie Clarkのプロジェクト、その名もドディによるOld Devil Moonのカバーです。
原曲が良すぎる上に、劇的にリコンストラクトしているという程でもないのでどうしても追い風参考というか何ともな部分はあるのですが、ちょっとEU~北欧のモダンな歌モノ・ニュージャズバンドラインのスタイリッシュ仕上げになっている所、そこに微かにですがアートポップ的なスパイスも入ったアレンジがボーカルに完璧にマッチしており、非常にオシャレな音像です。全体的にあっさり風味なのがポイント。
なおアルバムはレーベル的にも基本UKの人たちによるカバーになってまして、ウチで馴染みのあるラインでいくとPuma Blueにmxmtoon、Hohnen Fordあたりも参加しています。中々良さそう。


Ashibah – It’s All Love [Extended Mix]

デンマーク系エジプト人で現在はコペンハーゲン拠点(一時的にブラジルにも居たみたい)の女性プロデューサー、アシバがThis Never Happenedからニュートラックをリリース。空手の黒帯で10代の頃はバスケットボールのエジプト代表、現在は動物園で働いているという属性のてんこ盛り具合がヤバ過ぎて書かずにはいられない。
サウンドはこのトラックに関して言うと割とストレートにシンプルなエレクトロニック・ダンス仕様のボーカルハウスで、ブリブリ具合とサンプル含めた歌の比重が絶妙な塩梅で気持ち良いです。
やはりクラブ系のコンポーザーでも本人が直接歌える人を圧倒的に贔屓してしまうね。カラーが明確にわかるし、なんだかんだオマケ程度でも生の声が聴きたいんだよそいつ自身の。全曲とかじゃなくていいからさぁ。足場…。

今週のLP/EPフルリリース

Juanita Stein – The Weightless Hour (LP)

Howling Bellsのボーカリストによるソロアルバム新譜。これでもうソロは4枚目になるのかな?バンドの方はとんと新作を出していませんが解散はしていない模様。
さて、正直前もってのマークはしてなかったですが、これは素敵じゃないの。基本的にはリヴァーブとか深めでドリームポップとまではいかないけど、ウェットにノスタルジック風の音像で処理されたオルタナカントリーといった感じで甘くレイドバックしたサウンド。何となくちょっとイイ女風のボーカル(わかる…?)なんだけど少し鼻につく様な、バカっぽくなる雰囲気スレスレのところで「愛嬌ある」位にとどまっているギリギリ具合が非常にソソる。伝わりますかねこれ…?
とまあ完全に彼女の歌、ボーカルの魅力ありきの音楽ではありますが、意外とこれもっと全編アコースティックにしてしまいがちなところクランチ以上に歪んでシューゲイジングドリーム片足突っ込む瞬間もあり、マジー・スターというかホープ・サンドヴァルのソロとラナ・デル・レイ(歌唱の系統が一緒)のミックスみたいな仕上がりにも聴こえる。バンドより断然こっちの方が好きです。