GVVC Weekly – Week 325

Disiniblud (Rachika Nayar & Nina Keith) – It’s Change (ft. Willy Siegel, Katie Dey & Julianna Barwick)

ラチカ・ナイヤルとニーナ・キースによる新ユニット、ディジニブラッドがDomino傘下のSmugglers Wayからデビュー、いきなり7月リリースのアルバムをアナウンスし先行曲を2つ公開です。
ゲストが豪華な方のこちらのトラックは局面によってレイヤーが多すぎてかなりカオスな響きになっており、ビートレスでタッチもマイルドな割りにはパッセージそのものが中々せわしないという妙な作りなため印象としては少し騒がしい。
構成メンバー的にもベースはアンビエントいう他ないでしょうが、ちょっとエクスペリメンタルポップとかポストロックのような方向性のものであってイージーリスニング互換のタイプはないです。でもまあ、他にないようなサウンドにはなっているし面白い。客演陣に関して、ジュリアナ・バーウィックの担当ポイントはなんとなくわかるけど、他は誰がどこやってるかわからないですね。


Tortoise – Oganesson

来日を控えているトータスが実に約9年ぶりとなるプロパー新曲をリリース。アルバムのアナウンスなどはまだ明確にはありませんが、明らかに控えているようです。なお遂にThrill Jockeyからではないようで、在籍メンバー関連作が出まくっているInternational Anthemから。
サウンドの方ですが基本的に変化はなく、Beacons~以降の良くも悪くも少し軽くなった上で歪み成分が付加されたワールド・エクスペリメンタルジャム風のインストはロック的なダイナミズムを超えた先という語義的には本来のポストロックサウンドで、さすが始祖という風格です。
今に始まったことじゃないが、演奏自体は結構アングラっていったらあれだけど極限までスマートになったノーウェイヴとでも言えるような内容なのに、質感とか成形の妙で高級ホテルのラウンジでかかっててもイケる謎のクラス感があるのホント凄いわよね。

今週のLP/EPフルリリース

JJULIUS – JJULIUS-VOL.3 (LP)

先行のM-8が良くて紹介したと思う。過去作を聴いてなかったせいもあり、その時に受けた印象から想像してたモノとはまるで違う内容だったけど、アルバムとしてのクオリティって観点では嬉しい誤算でした。DFAから出るってのはやはり理由がある。
まずこれは北欧ポップ的なメロディを操るローファイぎみのインディ、DIYエクスペリメンタルっていう系譜にあるような単純なものではなくてアフロ、ダブ、広義のポストパンク的な要素がかなり入っている面白い音楽性。全編に渡って角の取れて丸みを帯びた、でも低音の量感はタップリのボコボコビートが存在感のあるボトム重心のトラックが並び、それもそのはずViagra Boysのやつが全曲でドラムおよびリズムトラックの基礎を作っている模様。ほとんど共作と言ってもいいようなレベルでコミットしているようです。
ちょっとメリハリというか、もう少し抜き差しを明確にしてローがスカスカに解放されるパートも欲しくなる(疲れる)し、メロディを光らす局面を作ってもいい気がするが、方向性としてすごく良いし、このままこの先の進化版、より突き詰めて洗練させたバージョンをぜひ聴いてみたいので次もタッグを組んで欲しいかな。ジャケも内容に合っていてマルです。


Yukimi – For You (LP)

Little Dragonのユキミ・ナガノ、ここへ来て遂にソロ作フルアルバムを発表。バンドの最近のホームNinja Tuneから。6月に来日公演も控えてます。
本体からエレクトロニックの要素が薄くなったストリップト・ダウン版のニュージャズ〜ソウル系のソフトでナチュラルな歌モノ楽曲群はintimateだけどユルすぎず。根本的にやはりフォークの人では全くないらしくSSW的な表情には全然ならない。ボーカルパートに関して自分で作ってる時はメロディを薄くしちゃうのは相変わらずで、旋律としてはバンドの時と全く同じクセで紡がれているので互換性あり。もう少しメロディ甘くしていいと思うんだけど拘りなんだろうな。ちなみにクローザーM-13では純日本人の父ちゃんが客演参加。ミュージシャンじゃないはずなので何してるのかは知らない、たぶん最後の喋り。
全体的に悪くないんだけどまあ、ぶっちゃけ悪くない止まりです。これ言っていいのだろうか、ホント世界最高の女性ボーカルだし、リトル・ドラゴンの作品は一つ残らず全て聴いて来てる、数え切れないほどの各所への客演トラックもほぼ全て1回はチェックしておりますが、一番、彼女を魅力的に捉えられてるのはなんだかんだKoopの楽曲なんだよね。だから結局Koop聴いちゃうことが多い。本人はたぶん嫌がるでしょうが、しょうがないんだよ。つーかCOMPOST潰れてないんだからKoopの2nd早く再発してくれ、いつまでも相場2万とかで一向にアナログ買えないんだが。


POPULATION II – Maintenant Jamais (LP)

あまりウチで取り上げそうなタイプではないと思うだろう。もうかなり長いことやってるはずで、たまに名前を見てはチラ聴き。サイケってそこまで得意でないもんで、余程バランスとか出音が好みのモノでないとハマらないけど、今回はそれ。今までで一番良いね。
音楽性っていう部分でそれほど変化はないと思うけど、これまでは結構鋭く突き刺さるような、エグみのある派手なミックスの印象だったのが若干マイルドに、アンニュイな調整になっているようで、演奏の方も行くとこは行くけど落とすところは落とす非常にバランス良くアレンジされた聴き易い作品。そんでまたサイケ一辺倒ではなくプログレとガレージ、クラウトロックが少ずつ入ったヤツなもんでOSEESとかと近いような部分もあるけど、フランス語圏ってこともあり何処かフワっとした雰囲気を持ってるのがエッジ尖り過ぎずバランサーになってる。なんだかんだ結構歌うからなのかもしれない。
いやこれはね、派手さはないけどかなり名盤な気もしてて、どんどんハマってく不思議な魅力があるし繰り返し聴くに堪える深みがあります。1曲でどうのではなく、これぞアルバムとしての作品といった感じで実にオールドスクール。レコードで聴きたい。