GVVC Weekly – Week 326

Rachel Bobbitt – Furthest Limb

トロントのSSW、レイチェル・ボビットは2023のEP以降、単発シングルのリリースを続けていますが今回もまだアルバムのアナウンスなどはないまま新曲がビデオ公開。しかし今回Chris Coadyでレコーディングしているようで、当然かもしれませんが実地において実質的にプロデュース的な動きもしているようです。
前作EP(Jorge Elbrechtプロデュース&ミックス)は確か紹介してないけど個人的に聴いていたし、Alvvaysのカバーなんかはここで掲載したはず。カバー含む最近の楽曲ではアンビエントフォークとかドリームフォーク路線で行っててそれもまあ良かったんだけど、今回は一気に音像がグレードアップしたSSWバンド系の芯のあるサウンドで、インディロックの美味しいトコ取りした雰囲気のリッチな質感に。
方向性ブレる前のMolly Burchとかに近い感じというか、本人の歌唱自体に強烈なシグネチャーはないのである意味こういうプロダクションが効果的です。クオリティを考えてもほぼ確実に何かしらの作品にメインとして収録されるでしょうね。


Wavves – Goner

ウェイヴズが6月リリースの新作アルバムをアナウンスし、そちらからblink-182のトラヴィス・バーカーによるプロデュースでニューシングルをビデオ公開。でもリリースはまた自主のGhost Rampから。
これは手を叩くレベルで納得の組み合わせです。正直、最初のローファイでブログ文化全盛期にバズってた時以降では一番良い出来でしょう。つまりここ15年でのベストということです。元来の持ち味でごくわずかにだけ入ったオルタナロックのテイストとすこぶるキャッチーなメロディが見事にポップパンクに昇華され最適化された完璧な仕上がり。ちょっとガサツなところも魅力だったのでそこに関してはスポイルされてる感は否めませんが、本人らだけでは絶対にこうはならないという装いなのでそれを見せてくれただけでも乙かなと。
そういえば、その15年前頃に一度だけあった単独来日公演も行ったなぁと思い出す。渋谷のクアトロだったかな?その時の時点で1st、2ndの聴きたい曲(全然メインの曲)やってなくて何だよと思った記憶が。しかも、客が大人しいことに対してMCでイヤミ言ってたわ。まあ本人そういう感じのキャラだから全然いいんだけども。


Jenny Hval – The artist is absent (89 second rewrite)

約1ヶ月後に引き続き4ADからリリースされるジェニー・ヴァルの新作アルバムよりこれで二つ目となる先行曲がビデオ公開。なおこちらは尺が倍のエクステンデッドバージョンで、実際に収録されるのは1分半にも満たない尻切れトンボミックスになってます。なんで?
内容の方ですがフワフワした空間系処理過剰な上モノ(主にボーカル)は平常運行なものの、土台のトラックが少し重めのダークなインディダンス的サウンドになっていて、スローダウンした人力の00年代後期ニューレイヴ(死語)バンドみたいなニュアンスがありますね。
この人、何やっても音作り含めたボーカルそのものがシグネチャーになってるんで聴いてスグおっJenny Hvalってなるし、芸風もブレすぎず擦りすぎず程よく振り幅あるんで強いよなー。

今週のLP/EPフルリリース


Σtella – Adagio (LP)

間違いなく過去最高傑作。アルバム一枚通して全編良いのは初めてじゃないかな。前作には個人的に印象に残って一生聴き続けるであろう名曲が収録されてたが、LPとしてはそこそこ止まりだったことを考えると、今回のこれで晴れて一流アーティストの仲間入りだね。
まず、先行トラックのM-1が明らかに素晴らしくて出た時も紹介したけど、その時想定した以上に全体的にブラジル〜ラテンの要素に傾倒した内容でカバーアートワークと内容が非常に合致してる。解禁したとはいえ歌唱もギリシャ語ばかりではではなく普通に半々以上では英語。
しかし、ギリシャ人がこういうフェイクラテンアメリカのフォークポップ、しかもなんだかんだモダンとオールドスクールが同居した音楽性で、なんかもうオリエンタリズムとかいう表現で片付けられない相当未知なるサウンド。もはや意味不明という言葉が口を衝いて出るレベル。これがホントのオブスキュアってやつかな。まあ今までもそういう感じはあったけど、今回特に作りとかミックスまわりが過去イチ洗練されてるから自然とスンナリ入ってくるしオシャレBGM適性もついに獲得して全方位型として完成したステラ。控えめながら地味にメロディも美しいし、サクッと終わる尺感も大正解。これは名盤です、オメデトウと言いたい。