GVVC Weekly – Week 328

Glasshouse Red Spider Mite – Everyone Loves You

UKはブライトンのニューカマー、グラスハウス・レッド・スパイダー・マイトが来月リリース予定のデビューEPより先行曲をビデオ公開。
昨年に2曲だけ単発のリリースをしていますが(どちらも今回のEPには未収録)まとまった作品はコレが初めてのようで、オープニングトラックに配置されたこちらは約7分のスロウコア風なトラック。基本的にはサッド・オルタナフォークでRed House Paintersにレディヘのアコースティック系の曲をミックスしたところに後半バーストするタイプのシューゲイズ要素がプラスされたような感じかな。(この曲ではやってないけど)
ボーカルの奴の雰囲気と楽曲のそれっぽさが別格で、映像込みでおよそ今のバンドとは思えない、何も知らずに観たらlate90’sかearly00’sの短命バンドの再発かと思うレベル。ともかく、明らかに風格があるのでこの曲がマグレではなく、やる気があるなら今後たぶん伸びますよ。大注目。


Greet Death – Country Girl

ミシガン州フリントの5ピース、グリート・デスが6月末にDeathwish Incよりリリースする新作アルバムをアナウンスし最初の先行曲をビデオ公開。
簡単にいうとそう珍しくはないオルタナシューゲイズ系のサウンドで、音響深めのスケール感が大きく歌はそこそこしっかり聴かせてくるタイプ。なんですが無味乾燥ではなくちょっと特色ありで、特に歌唱周りに若干オルタナカントリーの雰囲気が入ってるのと(Helio Sequenceの2ndに少し似てます)映像の内容を度外視しても少しゴス、UKニューウェイヴ系のダークネスを孕んだサウンドなんですがこれが過度ではなくフレーバー程度でカテゴライズのタグ付けをされるほどの分量ではないホント絶妙な塩梅。
この辺が決定的にシグネチャーとして成立していて、レッドオーシャンの中でも敢えてこの人たちを選ぶ理由になり得ます。印象に対してレーベルもなんか納得感あるところだし、ちょっと全容が聴いてみたくなる良いリードトラックですね。


Pain Magazine – Violent God

フランスのハードコアバンド、Birds In Rowに同じくフランスのエレクトロニックパンクのデュオMaelstrom & Louisahhhが合体した新ユニット、ペイン・マガジンがデビューシングルを公開。
ちょっとインダストリアルな、でもゴスは入ってないポストハードコア・トリップホップというようなイメージで、半エレクトロニックくらいの匙加減が絶妙なトラックに、これまた刺々しさが程よいヤサグレ歌唱が滑稽にならないレベルでクールに収まった一発は楽曲タイトル程にはバイオレントな感じはしないかと。
これは両者の元々の要素をそのまま引き継ぎ、混ぜたらこうなりそうという期待されたイメージそのままに、それぞれの音楽よりマイルドに聴き易く理想的にチューンナップされた素晴らしい内容で、単発の連名作でなくわざわざ新バンド結成してるのも頷ける出来映えです。


Loaded Honey – Don’t Speak

Jungleのカレントメンバー二人による男女デュオ新プロジュエクト、ローデッド・ハニーがデビューアルバムからの先行曲をビデオ公開。
正直ふつうにバンドの延長線上にある音楽だと思うし、コアメンバー二人なのでスピンオフ名義にする必要性が果たしてあるのかという感じもしますが、仕上がり的には近年の本体より良く、この楽曲に関してはThe Avalachesの1stを思わせるサンプリングを主体としたインディソウル・ダンストラックで非常にキャッチーな仕上がり。
まあ、きらめくオリジナリティがあるわけではなく実に二番煎じ的ではありますが、皆がもっと聴きたそうなニーズをうまく突いたラインだと思うし、ほどほどにユルくて肩肘張らない心地よさがあります。なんちゅうか、Since I left youプラスI Saw the lightです。

今週のLP/EPフルリリース

Beirut – A Study of Losses (LP)

サーカスのために制作された作品(依頼ありき)ってことなので、ニューアルバムだけど厳密なプロパーのフルレングス作ではないという認識。とはいえ題材との噛み合わせがいいのか、結果的にこの人のそもそもの特色が純粋に強化されるような格好になっていて、ある意味でオリジナルアルバムよりオリジナルらしいと言っても過言ではない。
なんかちょっと無国籍な印象の弦とかパーカッションとかが色々鳴っててキャラバン感あるけど、ぜんぜん暑苦しくなくてどこか可愛さもあるという、これぞベイルート。きっと公演のBGMに使われるという事なのであろうからか、普段より少しボーカルの比重が少ないし、ストリングスは逆に多めでリズム隊を抜いたチェンバーポップ的な局面もあり、やや長尺ながらゆったり聴けるのが実に素晴らしい。
大手に移籍するとダメになるミュージャンが多い中、4ADに行って以降もいつも良くてほぼ駄作を出してる印象がない最良優等生だけど、今回はより自然体というか、クリエイティビティのところで変に考え過ぎずに作ったであろうことが伝わってくるリラックスした内容で、矛盾してるようだがオトナな児童音楽みたいな風情がある。この、そこはかとなく楽しい雰囲気を出せるのってこれ凄い才能というか、彼のパーソナリティに興味出てくるよね。純粋に「感じが良い」んですよ。これアナログで欲しいな。