マニトバ州ウィニペグ出身、現在はオーストラリアに移りメルボルンを拠点に活動するSSW、ローラ・ルーカスが単発のニューシングルをリリース。
多く語ることのある内容ではなく、いわゆるバンド編成のインディフォークを薄らドリーム漬けにしたといった塩梅のモノでありそれ以上でも以下でもないですが、単純になかなか良い曲なのと全てがバランスのとれた音作りで非常に心地よいサウンド。なんだかんだ入ってるシンセが効いてますし、ブレイクんとこの落とし具合が絶妙です。タイム感も含めるとなんかBeach House的であるとも言えますね。
弾き語りでやってもそんな変わらないような楽曲なのに、これ弾き語りでやられてたらたぶん刺さってない事を考えると、やっぱミックスも含めたアレンジというところがいかに肝要かと思うね。そんな複雑なことしてなかったとしても。山深いポツンと一軒家に移住してしまった誰かの帰りを待つ歌(?)です。
Preoccupations – Ill At Ease
再来週にリリースされるプリオキュペイションズの新作アルバムから、これで三つ目となる先行曲がビデオ公開。レーベルは今回からBorn Losersのようです。
今回、LPのトラック1から2、3と順番に先行公開していってまして、まあ恐らくリードはこれで最後かな。先んじて出てた2曲、特にオープニングトラックの方は悪い意味でかなり軽くなってて微妙でしたが、この楽曲はラビリンシーン・ポストロック(このバンド関連でしか見かけた事がない記述、いわゆるピッチフォーク用語です)の面目躍如で、まさに迷宮に深入りしていくような不安感、少しゾクゾクする違和感を徐々に昇華していく展開です。
ヴェトコンから改名してからは今まで正直メチャクチャ良いってわけでもないんですけど、やっぱりこの人らは違うなと感じさせる謎の風格、コクというか味わいがあって流石だなと感じる。兄弟の方と決別せずWomenずっとやってたらどんだけ凄いバンドになったんだろうと思うと勿体ないね。あっちはCindy Leeで大成功(商業的には知らん、界隈ウケ・名声っていう意味で)してること考えると正直こっちが負けてるのかもな。
今週のLP/EPフルリリース
Eliana Glass – E (LP)
これは素晴らしい。先行をいくつか聴いてはいたけど、ぜんぜん全貌を察知できてなかったな。
一見ちょっとジャジーなSSWモノかと思わせておいてこれは、その実もっとすごく深淵な音楽性。もちろんジャズが一番大きなエレメントであることには違いないのだが、オルタナティブ文脈に位置する要素が多分に含まれており、そんな黒くダークなイメージになるほどのものではないけど、ゴス・フォークみたいな装いの楽曲も多くて、あくまでも歌モノではあるのだけど全体的に程よくアブストラクト。
基本的にポップ範疇のメロディはなく非常にシックとも言える。タグで自称してる割にエレクトロニックの装飾はほぼ無いが、ごく僅かにアンビエント系の持続音とか入って来たりするのでその辺かな。その割にはやっぱ根幹がしっかりジャズなので、妙な厨二病感、雰囲気重視の浮つきや薄っぺらさが無く土台の説得力が高い。つまり抽象的には、完成度は高いけどコンサバでしょうもないやつと芸術点は高いがアマチュアでインディ過ぎるものとの良いトコ取りです。オススメ。
Cloth – Pink Silence (LP)
グラスゴーのデュオ、2ndアルバム。確か前作も先行曲だけ紹介したし、今回も先行曲をピックアップ済み。
先行M-2がちょっと新規軸だったので警戒したが、蓋を開けてみると大きな変化はなく順当進化。少しだけ楽曲のレンジが広がったかなという感じはしますが、インディロックというより広義ではオルタナティブに分類するのが正解か、そこにスロウコアとかポストロックが入ってくるようなタイプの音楽性で、2人編成の完全バンドサウンドというタイプなんで若干こじんまりしがちなところ、自覚があるのか結構バキバキに鳴らすミックスでドラムとか軽くうるさい(必ずしも悪い意味では無い)。
強烈な個性があるわけではないんだけど、要素がとっ散らからない少人数編成っぽさに、割と潔癖というかクリーンで整ったアレンジを好むのであろう仕上げ、とはいえクワイエットにはしてこない音作りなど、全体のバランスでみると意外と他にないようなサウンドなんですよね。ボーカルもちょっと仄暗い清涼感があって芸術点高く、実によろしい。これでもまだ全然、傑作アルバムっていうレベルには遠いんだけど、十分今後に期待が持てる内容ですんで、これからも要注目。
ストリングスでOwen Pallettが地味に参加。あとRock ActionからということでMogwaiのスチュワートも少し客演参加しているみたいです。デュオである事が特段、武器にはなってないから、メンバー増やしてもいい気がするんだけどどうだろうな。