GVVC Weekly – Week 330

Diary – Stevie

ブルックリンのバンド、ダイアリーが昨年のEP以来となる単発のニューシングルをリリースしビデオ公開。
これは、絵に描いたような「当たり曲」で、間違いなくこのバンドでこれ以上の曲は今後出ないでしょうねという奇跡の一発です。サウンドは典型的な所謂ギターポップ・インディポップのラインでテクニカルに語る部分は多くないですが、日本でネオアコと言われている類のものよりは溌剌としていて、そんなtweeってわけでもないし、シューゲイズ成分もゼロというわけではない、5%くらい?は入ってるかなという良い意味での中庸。Wild Nothingの1stからドリームポップの成分を抜き切ったようなサウンドとも言えます。
なお以前の楽曲はもっとガツンとオルタナだったり90’sシューゲイズ風だったりと今回のような風情のトラックは全くなく、路線変更なのか変わり種の一発なのか不明ですがとにかくこの曲は素晴らしい、何回でも聴ける。年間ベストトラックス入選内定です。
ところでドラムの奴のスティックの握り方が絶望的にメチャクチャ頼りないんですけど、ギタポのドラムは基本ひどいってのが通説なので問題ナッシング。


The Beths – Metal

ニュージーランドのザ・ベスがANTI-に移籍し、挨拶代わりのニューシングルをビデオ公開。
もうちょっとオルタナ寄りだったり、リズムもドタバタしていたような印象があったのですが今回はクリーンにクリアに進化、歪み成分なしの清涼感あふれるギターポップに仕上がっています。
歌メロディの節回しには若干のエモ(ポップパンク寄りの)テイストが感じられ、いいスパイスになっておりシンプルながら全体的に編曲とミックスが秀逸でベストバランス。中でも特筆すべきはベースで、イントロから最後まで全編通してひたすらにナイスな演奏をしており全てのフレーズがクリティカルヒット。素晴らしいです。
アルバムのアナウンスはまだですが、クオリティ的には確実に次作LPに収録されるでしょう。


Sea Lemon – Give In

シアトルのシー・レモンがLuminelleから来月リリースするデビューアルバムより二つ目の先行曲をビデオ公開。昨年のシングルが漏れなく入ってますので、収録曲中の既発カウント的には四つ目となります。
今までEPをいくつか出しており、その頃から基本路線の大きな変化はないのですがいよいよ油が乗ってきたような印象で、クオリティがどんどんアップし、今回ついに過去最高打点が出ました。サウンド的には典型的なシューゲイズ・ドリームポップ系「独りバンド」スタイルの宅録路線で、そこんとこをちょっと豪華にいかにもオルタナのバンガートラック風に装飾した大味とも取れる編曲と元来の繊細さが上手いこと補い合ってか、安っぽくならないラインでミラクルにポップな響きになってます。Soccer Mommyをより空間系漬けにしたような仕上がり。
テクニカルでは正直特に面白みのない音楽性ではありますしボーカルにも強い個性はないので、もうバランスとクオリティで勝負するしかないんですが、うまい落としドコロに仕上げたなと。とはいえ他の楽曲も基本的にやってることは同じで、このトラックが特にハマっている感じですね。

今週のLP/EPフルリリース

Model/Actriz – Pirouette (LP)

先行曲が良かったから期待していたが、想定よりもさらに上を行く内容でした。
まず路線として音は大きくは変わってないし、依然として攻撃的なインダストリアル・ポストパンクの波は押し寄せるものの全体的により間口を広げた雰囲気で、幾分マイルドに。ギスギス度は減少しボーカルもキャッチーに、明確なメロディを歌う曲面が増えポップですらある。
前も書いたかもしれないけど、息遣いも全て拾うような近すぎる位置で鳴るボーカルトラックとエキセントリック入った歌唱スタイルからXiu Xiuみたいな瞬間もあるし、下手したらレディヘみたいな部分もあったりで、ノイジーと言えるのはM-9くらいなのでこれはもはやノイズのタグは似つかわしくないかな。とはいえ前作から継続で完全にシグネチャーとなっているベコベコ刻むベースのミニマルなループは健在で、漠然とこのバンドの軸となってる音像を期待してても耳にスムーズに入ってくる程度の変化ではある。
ともかく、元々のエレメントをしっかり残し印象が変わらない範囲で、これ以上ないってくらいに聴き易くしてるっていうような内容。どこまで純粋にクリエイティヴィティに忠実に進化した結果なのかは分からない(マーケ的な理由かもしれない)けれど、いずれにしてもこの調整力は凄いです。
ただ、今回の仕上がりは良いんだけど、ちょっとサービス精神が過ぎるような気もするし次どうなるのか若干の心配はある。もう少しだけ突き離してもいいと思うけどね。


Shearling – Motherfucker, I am Both: “Amen” and “Hallelujah”… (LP)

これは…LP枠でいいのか、1曲で1時間越えという荒技スタイルでのリリース。これで音源では初お披露目となる作品ですが、なかなか良かったのに突如アッサリ解散したSprainの主要メンバーで新たに結成された事実上の後続バンドです。
バンドが別物なのである程度違うのは当たり前ですがスプレインの延長線上としては自然に受け入れられるサウンドで、よりカオスにエクスペリメンタルになってるきらいはありますが許容範囲の散らかり具合。ただ前はポストロックでも通せそうな部分あったけど、ちょっともうポストハードコア、アヴァンロックって感じになっちゃってるかな。カッコいい瞬間もポツポツあるけど、ボーカルが独唱する局面は多すぎて少しダルいからやめて欲しい。ブレイクもそもそも多い。まだあまり推敲されてないのは明白で、見切り発車感は満載とはいえまあこの瞬間聴かせてくれるのも面白いっちゃ面白いし今回はOK。別格な感じの雰囲気は間違いなくあるので、音楽性が完成したらまた聴いてみたいな。
でもさ、普通にキリのいい場面たくさんあるし、これ1トラックにまとめる必要性なかったやろ。聴きたいところピンポイントでキューできないし、結果的に繰り返し聴いてもらいにくくなるはずでマイナスしかないと思うけど、そんなの関係ねぇ!っていうパンクスタイルなのか。クソ長いタイトルは内容に合ってますし、カバーアートも非常によろしい。