Super VHS – 魚の恋

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Super VHS(スーパーブイエイチエス)が7インチシングル”魚の恋”を4/3にリリースします。
スーブイ久々のプロパーリリース、しかもヴァイナルは初じゃないかな?

こちら厳密にはメンバーが在籍するPoor Vacationのコンピに収録されていた楽曲の
シングルカットで、特定の界隈で既に確固たる地位を確立しつつある女性SSW、
Mei Eharaを全面的にフィーチャーしている変化球。そして
同じく彼女が全編ボーカルをとる初出の新曲”バックビート”がB面に据えられています。
なお”魚の恋”は、上のコンピに収録のものとは同テイクの
ミックス・マスタリング違いが収録されるとのこと。(アナログカットなので当然)

スーブイのマスターマインド、入岡くんの音楽を語る際に「バブルへの憧憬」は外せない。
バブル期のロマンス感というか、”花金”という男女の夜、高級車、”背広”でプレゼントから
ビーチサイドで”バカンス”…そういう世界の亡霊に取り憑かれてる。
で、そこから繋がる当時の”ニューミュージック系”を土台にしつつ、
ニューウェイブ・シンセ・ローファイディスコがクロスオーバーした楽曲というのが
基本系にあり、さらに間口の広い歌心から紡ぎ出されたメロディは
USインディ、アンダーグラウンドポップを通過してるっていう、相当マニアックな音像。

でも、すごく人懐っこいんですよ。彼の音楽は。

Ç86に収録の”Not Too Late“なんかは、当時の空気感も作用してか、
脱力系のUSインディポップを意識したようなチューニングで仕上げていましたが、
今回は日本語詞(バックボーンからして本人的には絶対そのほうが楽で、自分が出せるはず)
かつ、自らはマイクを取らないことで、逆に前述した彼のカルマが炸裂しており、
ミドルテンポのナイト・ニューウェイブに、少しドライな歌唱の組み合わせが
奇跡的なメロウネスを醸成。ホテル、夜の高速、都市のクールネス、ビター・スウィート…。
ある意味で彼がずっと抱えていた理想系の一つが結実したような楽曲になってます。

正直、和モノは守備範囲外で、そちら側観点からの詳しいアナリシスは出せないんですが、
譜割り感も含めた歌詞と世界観が、なんだか後期GREAT3っぽさも感じましたね。
ギターワークの雰囲気も含めると、相対性理論辺りができんのかなと思ってたことを、
もっと高次でスンナリやっちゃってるような感じとも言えます。

2/6現在のリリース情報公開時点ではまだ音源が公開されていませんが、
B面の”バックビート”も同じ次元で素晴らしく、こちらはデイム・ファンクもビックリの
ネオンサイン煌めくアーバン・似非ファンクといった趣。
こちらでは入岡くん本人のボーカルもコーラスで顔を出しており、これだけで楽曲に
(スーVの音楽における重要な要素)「少し頭のネジが外れた感」を大きく付与してます。
“魚の恋”の方でも少しは歌ったら良かったのにね、ツインで。

なお、ジャケットには彼が敬愛する、わたせせいぞう氏を起用。
組み合わせがあまりにもイメージ通り過ぎて、
このミラクルも、パッケージングの完璧さに拍車をかけてるんじゃないでしょうか。

前作のアルバムはSauna Coolからリリースしていましたが、
今回はHMV Record Shopからのリリースということです。
英国本家のHMVは丁度タイムリーに事実上経営破綻がニュースとなってますが、
日本でのHMVは屋号だけ残してローソンが事業継続しているに過ぎないんです。
でも、ヴァイナルリヴァイバルに乗じて5年くらい前から始めたHMV Record Shopが
割と好調みたいで、そこがレーベル業もちょっとやってる、ということなんですね。

こんな感じで、今回はSuper VHSが抱える邦楽側のフェチズムを高次に昇華した
“夜”の内容となってますが、前作アルバムのカラーからもわかる通り、本来は
陽気なビーチポップやダル・サマー・ボムっていう側面も持っているバンドですから
引き出しは当然これだけじゃない。

確か昨年のライブでクイーカを使った南国南米ごった煮ニューウェイブの新曲を演ってて、
それがメチャクチャ良かったんで、あの路線のアルバムを今後、期待したいところですね。
このバンドは、ライブがいいんですよ、皆さん!