Watashi ha Koko ni Iru – V.A.


私は此処にいる (Watashi ha Koko ni Iru) – V.A. (LP)

札幌のDJ・オーガナイザーのmostinによる初のコンピレーション作品。メインの活動はDJみたいだけどこれはミックステープではなくてあくまでもコンピです。アカウントのpopura 168が新しく始動した彼のレーベルなのか、はたまたユニット名なのかは不明。

えーと、まず特筆すべきはElen Never Sleepsの7年ぶりくらいの新曲が収録されてることですかね。しかも蔵出しじゃなくてこの企画のために書き下ろし・録り下ろしのまっさらな新曲です。ただ内容はやはり収録作品自体が全体的にエレクトロニック寄りの傾向になるであろう事を想定してか、普段よりもそっち方面に寄せたサウンドになっており、控えめな4つ打ちでWhite SurrenderTaquwami remixじゃない方)あたりを彷彿とするようなテイストに。とはいえ抑えられないバンド畑魂からか、終盤にシューゲイズパートに突入する部分でカラーを出してきてますかね。ちなみに結果的にここがこの作品全体を通してみても最もバンド風の音が鳴ってる瞬間になってます。

コンピはやはり基本はエレクトロニック(非ダンス)という範疇の中でシューゲイズやドリームポップ〜アンビエント〜シンセウェイヴなどの振り幅を見せ、その他、通奏低音としては宅録っぽさ、密室感、ソロアーティスト然とした雰囲気の強い内容で、個人的には厭世感や現実逃避を賛美するようなムードも感じます。タグ付けされてるほどエクスペリメンタルの色味は強くなく、ひと昔前だと『エレクトロニカ』と呼ばれていたようなトラックもちらほら。そういったレフトフィールドに限定した上ではオールドスクールなトラックの中に忍ぶ、ヴェイパーからハイパーも通過し切ったそこより先のポストインターネット感覚で逆に四畳半に回帰したような20年代最新型SSWの、ある種「現代のフォーク」とも言えるような脱構築歌モノがいいスパイスになって全体を引き締め、作品の独自性を決定づけてます。

このあたりは国内の地下サンクラSSWを誰より掘りまくってるモスティン氏だからこそできる編纂の落としドコロだなと感じられて流石というか、このコンピをちゃんと特別な価値のあるものにしてる重要なエッセンスで、常々言ってる、数多ある選択肢から今どきそれをあえて選ぶ意味、最低限の独自性の担保という何より大事なポイントをクリア。アルバムのクローザーには本人名義によるサウンドコラージュ小品も収録されてますが、これもなんかどこか寂しくていかにも彼らしいなと。(そんなに知らないですが)

尚、個々の楽曲のレビューに関しては今回は割愛させてもらいます、ごめん。

しかし、1年半以上前から準備されていた企画のようで、晴れてリリースできて良かったね。おめでとうございます。

ENSに関しては今回よりピコ太郎と同じシステムを採用させてもらうことにしました。一応辞めてはいないみたいで、1年になんとか1〜2曲程度は録音できているようですが自分のライブやるのは死んでも無理みたいな状況とのことです。単独のまとまった作品がまた出せるよう発破かけときますので。