GVVC Weekly – Week 134

Hannah Jadagu – Sundown [OFFICIAL VIDEO]

SUB POPからの超新星ハンナ・ジャダグ、デビューEPの全編リリースとほとんど同時に
とても素敵な収録曲ビデオも登場しましたので、EP自体のレビューと併せてトップ紹介。
今、これを拾って出すサブポップが本当に流石すぎて、絶対にマーケ的な所でのチョイス
ではないとわかるし(今これがウケるわけない)そういうところでレーベルの株が上がる。
サウンドは奇天烈さをゼロにした初期DOMをかわいくしてWild Nothingの1stと混ぜた、
みたいな感じかな。このM-2と、デビュー曲のM-3が特にいい。最大の聴きどころはM-3
ハイハットのディレイです。将来的にはArlo Parksみたいな方向性に行きそうな雰囲気ね。
この映像も見てくださいよ?出てくる大学の友達もみんなとてつもなくイイ顔してるよね。
全てにおいて好印象しかないし、アメリカの最良の部分がもう花開いてるというか、輝く。
チルウェイヴとブロゴスフィア全盛期、自分はチルウェイヴが好きだったわけではなくて、
曖昧な音像とドリーミーなウワモノという部分においてそこにシンクロした淡いバンド系
手作り宅録サウンドのポップが好きだったわけで、いやこれが当時自分が一番好きだった
ものと全く同じものを今こんな若い子がやってる感動。いやそりゃ、30になってもこれを
そのまんまやってるわけないし、この子もどんどんブラッシュアップされていくだろうが、
あれを通ってない世代の出発地点がこれってのが本当に最高だし、少し溜飲が下がる思い
…文字通り俺はこのビデオをを見て涙したし、そこに自分も一緒に居たいと強く思ったね。

Hannah Jadagu – What Is Going On? (EP)

ellis – hospital (official visualizer)

昨年Fat PossumよりデビューアルバムをリリースしたカナダのSSW、エリスが6月に新作の
EPをリリース、そちらから最初の先行トラックです。路線の変更や新規フレーヴァーはなく
完全に前作の流れを踏襲したサウンドになっていて、得意の甘くとろける純ドリームポップ
楽曲ですね。精神的な脆さを感じさせるボーカルと妙な密室感・箱庭感がある音像が特徴で、
淡い日の光が差し込むカーテンが揺れるようなライト・シューゲイズを展開していてグッド。

Wyldest – Hollow (Official Video)

ロンドンの一人バンド、ワイルデストがHand In Hiveから来月リリース予定の新作アルバム
『マンスリー・フレンド』より最初の先行曲を公開。同レーベルが昨年にリリースしていた
A.O. Gerberなどにも通じる、ドリームポップ系を好んでいると思われる雰囲気を纏いつつ
アウトプットはあくまでもSSWバンド、バンドサウンドのインディフォークなフォーマット
という最近よく見かけるタイプの音楽ではありますが、内省的な歌唱と儚げな雰囲気がある
とても聴き易くシンプルに仕上がったトラックで、今後に期待が持てます。もう一癖欲しい。
A.O. Gerberはホント昨年のベストトラック選出でギリギリ悩んだ挙句曲を選べずに選外と
してましたが、実際スゴク良い。近い路線でこれも出して来たこのレーベルは中々注目です。

SCALPING – MONOLITHIUM (Official Video)

ブリストルのエレクトロニック・ノイズロックバンド、スキャルピングが6月にリリースする
新作EPより先行トラックを公開です。GVVCに載せるような音楽の中では最も異色だと思う
けど、昨年末に出していたシングルDEADLOCKも当時紹介はしなかったものの実は密かに
気に入っていた。デジロックって言ったらいいのか、a place to bury strangersみたいな
ライン、もしくはDFA1979とかをAsian Dub Foundation化した風のエレクトロ・パンク
って感じ。インストのね。なんか、その手の割にはミニマルっていうかスカしてて、絶妙な
クールネスを保っているんです。キワモノであることには変わりないんだけど、間口が広め
かつコンパクトに纏まっていて聴き易い。イントロのギターが微シューゲイズでいいですね。
ターミネーターみたいなビデオいらないし、こういう音楽でも草むらでピクニックみたいな
映像だったりしたら面白いと思うんだけどそういうのって何でないのかな?逆はあるよね。

The Night Café – Think It Over

リヴァプールのバンド、ザ・ナイト・カフェが2019年のデビューアルバム以来のリリース、
新作のEPフル公開と同時に収録曲のビデオも出ました。リアルエステイト路線の瑞々しい
しっとりインディロックになってまして、少し前に同じUKにChildhoodてバンドいたけど
その系統かな。あとFanzineってバンドも確かこんな感じだったよね。やっぱ発音だとか
歌い方がどうしてもUS勢と違うんだけど、甘めのソフトサイケをフレーバーにしつつも
ちょっとだけ洒落たコード感を忍ばせてくる外面の良さと、バンドアンサンブルが意外に
というか割と強靭でダイナミック。正直、ややチャラさを感じるし軽薄なとこもあるけど、
その辺は一般のお店BGMとして機能するかという部分と紙一重だからね。いい商品です。

Voronoi – ‘Darker The Night’

シドニーのインストバンド、ヴォロノイが5月にリリースするアルバムから4つ目の先行曲は
スポーツジムでセッションする映像のミュージックビデオで公開です。これ面白いのがね、
ジャズバンドが少しもフュージョンっぽくならず純プログレ的にポストロックへ近接してる
っての珍しい。なんか、少し違うけども日本のMouse on the Keysを思い出しましたよね。
ちなみにこの曲が一番ジャズっぽくて、他はもっとプログレ・ポストHCって感じの音してて
意外と荒いしブラックメタルっぽい瞬間もあったりする。ジャジーなSleeping Peopleかな。

Jordana – Push Me Away (feat. Magdalena Bay) (Official Video)

ジョルダナさんの新曲は、なんとマグダレナ・ベイをフィーチャー。トラックから映像から、
マグダレナ・ベイ味が強すぎて、どちらかっていうとJordanaの方が客演してるカンジです。
いや、この組み合わせはなんかイイね。決して真面目に聴くような音楽じゃないんだけども
賑やかしっていうか面白いことやるヤツ枠みたいなマスコット的扱いで行くのも乙なのかも。
楽曲はアバズレ感のあるチープなオルタナ・エレクトロポップで普段の装いとちょっと違う
にしても妙にハマっています。ここにMiss Worldとかも絡めてどんどん頭悪そうな雰囲気に
なっていくのも見てみたいような気もするんですが、本人的に目指しているところが謎です。

今週のLP/EPフルリリース

Remember Sports – Like a Stone (LP)

ボーカルの子がすごくめんどくさい歌い方なんだけどそれが最大の特徴で、妙~な粘り気と
気怠さを醸し出している。改名前ほど謎の勢いはなくなってるんだけど、音楽性的にはもう
完全に今の方が聴ける代物。ガレージ感がだいぶ減退したのがホントいい方向に作用してて、
前述のめんどくさ歌唱がしっかり堪能できます。言葉がすごく飛び込んで来るし、詩人だね。
あとは、余計なことしない8ビートマシンのドラマーが意外と効いてる。インスタント食品
っぽさというか、軽いのもイイところでM-2の50秒インタールード曲なんかも輝いてるけど
少しだけパンキッシュな歌物インディっていう単純すぎるフォーマットにも関わらず歌以外
ウワモノにマジで華が無いからLP全体としては流石に少し冗長なのは否めない。だからM-6
とかM-11とかの方向性を強化するといいんじゃないかと思うけど、ちゃんとその二つ先行
切ってるから本人らも分かってる感じだよね。あとは高速な楽曲の随所でシューゲイズとか
重いグランジっぽいギターだとかを仕込んで、も少し賑やかにしてくれるとより嬉しいかな。