GVVC Weekly – Week 160

TOPS – Waiting

トップスが7月の楽曲に引き続き単発でのシングルをリリースです。今回はかなり初期の頃の
フィーリングを感じるイナタいアーバンソウル・インディAORで、歌唱もここんとこ最近の
垢抜けた感じではなく吐息がハァ…というムーディな路線とスティーリーダンみたいな音像。
何度か言ってるけど個人的には大ブレイク後よりも最初が断然好きなので、このテイストで
今の実力でのアルバムレングスを聴かせて欲しいところです。自主リリース継続するのかな?


Hippo Campus – Boys (Official Video)

ヒッポ・キャンパスがニューアルバムをアナウンスし、そちらから最初の先行曲を公開です。
絶妙なメインストリーム崩れバンド風のしょうもなさとインディの本当にギリギリを攻める
ある意味聴いててハラハラする着地点でこのバンドは面白いんですが、今回もまさにそんな
彼ららしい楽曲でまぁ一応インディロックと表現するのが一番正しいんでしょう。でも妙に
軽薄だし、キラキラしてるし、深い音楽性は何も無い。だけどフレージングや質感がとても
キャッチーで、フックがあるというか愛嬌あるんですよね。シルバーサンピックアップスが
過度にポップになったとか、色気を出したスノウ・パトロールとかそういう感じの音像です。


Animal Collective – Prester John (Official Video)

アニコレが来年の新作アルバムをアナウンスし最初の先行曲です。プロパー新作フルは中々
久し振りなんじゃないかな?結構落ち着いた牧歌サイケポップ楽曲になっていて、個人的に
全盛期の音楽性よりこういう感じの方が好きだけどね。年齢的な所もあるのか躁病っぽさが
無くなって落ち着いて聴ける音像だけど、彼ら特有の重層的な男声コーラス、そして祝祭感
っていう最大のシグネチャーは残っているし随所の音色とかレイヤリングはやっぱり流石に
貫禄があって、大御所然としている。パンダベアの髪がさ…最初どれかわからなかったよね。


Beirut – Fisher Island Sound (OFFICIAL AUDIO)

ベイルートがキャリア・スパニングの未発表曲、B面曲、EP楽曲なで構成される2枚組編集
LPをアナウンス、先行トラックをリリースです。作り込みの部分で流石に近年プロパー作の
リード曲というクオリティにはないけど、所謂アウトテイク集と言われる物の水準より全然
良いというか、彼に求めるワールドごった煮インディ・フォークロックは完全に鳴ってるね。


Olivia Rodrigo – traitor (Official Video)
いやこれさー。ギターが無くなって全体の抑揚が大仰になったジュリアン・ベイカーだよね。

この辺とか…

今週のLP/EPフルリリース

Grouper – Shade (LP)

先行曲聴いて全編アコギメインのアンビエントフォーク(アンビエント控えめ)期待したが
そんなことはなかった。ただ最近ピアノに浮気したりしていたのがギターを完全にメインと
しっかり据えての本家本元グルーパーサウンド、寂寞の美と静止したようなタイム感の中で
マテリアルワールドの俗世から隔絶された幽玄音像は唯一無二、真のメディテーション音楽。
多分、本人の浮世離れ具合が異次元の領域でサウンドをいくらマネしたところでこの深みは
絶対に出せないんだろうね。最近の少し整理されたサッドコア風の歌モノ路線から、もっと
アブストラクトなドローン系まで彼女の取ってきたスタイル見本市で初心者も割と飽きない。
M-1は幾ら何でもちょっとファズが飽和し過ぎて拷問レベル、曲終わりノイズだけになると
その瞬間コンプレッションから解放され最後の2、3秒が最も耳に心地いいという面白楽曲。


Hand Habits – Fun House (LP)

実力もハイプも同業者からの支持も十分で脂がのりきった最高のタイミングでのリリースと、
先行曲群もまずまず素晴らしく期待してたが予想のさらに上を行くクオリティ。凄すぎるわ。
最初の先行M-2がやや浮いてるものの全体的には奇を衒わないオルカン・インディフォーク
範疇のサウンドだけどとにかくこの自信と強度に満ちたソングライティング、割と軽やかな
語り口なのにライトウェイトなまま力強く響いてくる歌唱と地に足のついたアレンジはもう
単純に上質という他ない。ただこのパフューム・ジーニアスの客演とも対等に渡り合える程
カリスマ過ぎるが故の少し突き放したような、遠くへ行ってしまいそうな雰囲気があったが
SASAMIのプロデュースが作用してなのか、そこがうまく中和されて間口が広がった印象で
エッジとジェントルとウォームが同居したような、いいとこ取りの音楽に。一つも駄曲無し。


SLOW CRUSH – Hush (LP)

何か凄く思ったのは、こういうメタル好きです!っていう人達だけどまあ一応オルタナとか
シューゲイズ範疇の音楽でやってて、ドゥーム感もあって…っていうバンド欧米、特にEU圏
そこそこ居るけど、その中でもゴスっ気が強くないとか下手したら全然ないとかまで普通に
有り得るのが良いなというかある種の文化的な羨ましさを感じる。表層ダークとか耽美系の
イメージでサウンドにメタル方面のニュアンス孕むロックサウンドってなるとさ、日本だと
どうしてもどこかビジュアル系臭くなっちゃう部分があるから、この人達みたいなの聴くと
いやそう、こういうの欲しいよなぁってなるわけです。こないだコンヴァージとチェルシー
ウルフのコラボお披露目でも思ったけど、結局メタルの大枠の中で更にブラメタにドゥーム、
ストーナーとかがポストコア、ポストロックとクロスオーバしてそこに差がないというかね、
全部保ったままシューゲイズとオルタナまで渡って来れるってのがでかいんだろうなと思う。
メンバーのナリを見ててもこの辺で明確な区別が無いんだよ。でも、日本ってシューゲイズ
とかに行く層とメタルに行く層、更にポストハードコアの層って全部完全に分かれてるよな?
と、話が最初から脱線してますが、まあどういう音楽なのかは分かったでしょ?少し大味な
ところもあるけど、音色にナカナカ色気があって重さの丁度いいメタルシューゲイズですよ。


Ross From Friends – Tread (LP)

やっぱこの人は好き。厳密には門外漢なのでそれほど深いアナリシスはできないんだけど、
音が鋭過ぎなくてマキシマイズ疲れしない甘いサウンドしてるし、レコードみたいな質感で
とても印象がいい。本当に巷に溢れる広域の隅まで持ち上げたハイファイ・エレクトリック
ダンスサウンドには辟易してるし、レフトフィールド系までもそういう感じだからもう勘弁。
そんな中こういうのは本当光って見えるんです。結構オーセンティックなアレンジも多いし、
別にディープとかってわけじゃなくベタなフィルターのドバァっていうサービス展開とかも
あったりするんですが、いい意味でしょぼくてインディ・フレンドリーなんす。歌もそんな
基本入ってないけど、まるで歌メロが聴こえて来るかのようなメロウネスも持っててそれが
またソウル系とかじゃ無いの…これぞインディ・エレクトロニック。ジャケットも非常に◎。


Circuit des Yeux – -io (LP)

いやーこれは今までで一番いいでしょ。前作もかなり完成されていたが次のフェーズへ突入。
SSWのプライヴェート感溢れるゴス神秘性のゴリ押しだった芸術点にバンド演奏の開放感
アップで一気に音楽的な広がりが出てます。でもこの強烈過ぎるボーカルは相変わらずな為
楽曲によっては異物感が物凄い事になってまして、ちょっとキワモノの域に突入しちゃって
ますね。ただし、曲のベースがめちゃ良いから、どれだけハメ外しても踏みとどまっておる。
まあそれでも正直何回かは吹き出しましたけどね。これが来ると分かってても、身構えても
尚、圧倒されてしまう格別のインテンシティを持った超スーパーSSW作品。初めて聴いたら
そりゃビビるよ。普通に怖いし。エキセントリックな孤高のシネマティック・アートロック。