GVVC Weekly – Week 174

Tomberlin – happy accident [Official Music Video]

トムバーリンがデビュー作以来のLPとなる2ndアルバムをアナウンスし、先行曲を公開です。
前作でジュディー・シル的な修道院フォークというか世俗から離れた清らかなイノセンスが
特徴だったのですが、ある程度そこを保ったまま一気に現実味を帯びオルタナフォーク化。
なんと、キャス・マコームズが客演ギターで参加しており、いぶし銀サイケ・オルカン味を
プラス。楽曲も内側に熱い歌唱、曖昧に甘く、明らかに恋愛についてである詩のテーマなど、
パッと聴いたサウンド表層のインパクトは少し中庸になった気もしますが、深みがあります。
この曲に関してはシンプルになったインディゴ・デ・ソウザのよう。先月のシングルも収録。


Dehd – Bad Love (Official Video)

デッドがFat Possumに移籍しての3rdアルバムをアナウンス、最初の先行曲を公開しました。
ビデオの毛色はそれほど変わっていないようですが、音の方はいくぶん小綺麗になっており、
ジャンクでウィードな煙たい幕が取り払われていて、元々持っていたキャッチーな部分だけ
増し増しで抽出したような楽曲になってます。ジザメリ・フェイクから始まって初期の頃の
The Drums的なDIY疾走ユース・インディポップを生演奏バンドで再現したような雰囲気に。
これは明確にステップアップを目指した動きと受け取りますが、悪くない。本気を感じたね。


Deanna Petcoff – Devastatingly Mediocre (Official Video)

ディアナ・ペトコフがロイヤル・マウンテンから4月にリリースするデビューLPより先行曲。
このカナダ名門の印象でいくとalvvaysですが、そのへんからもっと直球なAlex Lahey等の
オルタナ・パワーポップで元気にキャッチーなサウンドとの中間地点という感じで、かなり
アンセミックで爽快感のあるビッグ・メロディで歌われるコーラスの歌詞の内容はというと、
友人が付き合ってる「絶望的に平凡」(曲タイトル)な恋人への文句みたいなものだったり。


Young Prisms – Self Love (Official Lyric Video)

来月リリースのヤング・プリズムズ復帰作アルバムから、これで3つ目となる先行曲が公開。
元々の良さは基本的に備わったまま、サウンドがマイルドに丸くなってこれまでになく柔和。
どこまでも甘いメロディにシューゲイズ・ウォール・オブ・サウンドと重層的なコーラスが
この曲に至っては60’sガールズポップのオルタナ仕上げと言っても過言ではない煌めきです。
尖りという意味では物足りなさもありますが、変に媚びた感じはなく凛としてるのは流石。

今週のLP/EPフルリリース

Eric Chenaux – Say Laura (LP)

歌モノで6曲入り、それも最後はリプリーズなのでEPと思いきやこれは構成や尺を考えると
完璧にLPです。基本、刻みがないため、安易にアンビエントフォークに分類しそうになるが
アンビエントというにはリズム組みが複雑(ドラムは入っていないが…)なので横に平たい
感じがなく、純BGMとして機能するには引っかかるので適さないし、フォークというには
コードやメロディにテンション増し増しでややアーバンなのでジャズバラッド寄りか…でも
プログレっぽさもあるし、インプロのパートもあるしで、何より変な音がいっぱい入ってる。
全体的な質感は非常にモダン。主役は明らかにギター。余りにも独特すぎるスタイルの音楽。
散漫な部分はなく完成されてるし、確かな強度のポストロック弾き語りエクスペリメンタル。


Bats – Blue Cabinet (LP)

いい意味であどけなくて可愛らしい雰囲気があり、ハートウォーミングで美しいメロディが
オルタナカントリーSSWバンドのスタイルで表現されてるんだけど、作られた感じがなくて
実にDIYインディ然としており良いです。それと、この手の中でも特にカントリーの影響が
サウンドに強く出てる割には、節回しが瑞々しくて耳馴染みが良いため非常に聴きやすい。
本人作のアートワークもね、ふざけたようでいて切ないようにも見えるのがマッチしてます。
等身大で嘘のない音楽だね。名前が流石に素っ気なさすぎるから普通に本名でいいと思う。


Blanche Blanche Blanche – Fiscal, Remote, Distilled (LP)

既発曲のスタジオライブ盤みたいで、ドラムもほぼ全部に入って凄くダイナミックというか、
ちゃんとしたバンドの音で演奏されてるからいつもの狂ったラウンジみたいに聴こえない。
音源でずっと漂ってたアングラっぽさ、キワモノ感が薄れ、間違いなく今までで一番いいよ。
まあ、前の方が好みだって人もいるだろうとは思うけど、出だしの頃とかのひねくれっぷり
考えると、ライブとはいえこここまで開放的なサウンドでリリースするって感慨深くない?
もはやローファイじゃない、プログレフュージョン・アートロック・インディポップ大傑作。
ちなみにリリースデイト3月になってるけど、全然ちゃんとした情報が見つけられなくって、
youtubeの方にはこないだの日曜に一気にフルでオフィシャル上がってたので掲載しました。
カセットしか出なさそうな感じだけど、もったいないから絶対ヴァイナルも作って欲しいな。


Pan American – The Patience Fader (LP)

この人はずっとKrankyからアルバム出してる印象で、もう20年以上はやっているはずだし
シカゴってこともあり、アブストラクトなポストロックの文脈で語られたり、実際そういう
音楽な時期もキャリアの中ではあった気がするんだけど今回は特に好みのサウンドだった。
とても優しい音で、程よく自然主義な丸く柔らかいスウェルが流麗なギターアンビエントは
決してドローンではなく、ごくごく僅かなロマンやセンチメンタルも見え隠れして彩り豊か。
一聴しただけでもう格が違うのがわかる。スロウなロードムーヴィーみたいで、素晴らしい。

アンビエントに属する音楽ってのも毎週毎週かなりのリリースがあるし、歌がないどころか
楽曲ですらないというか、それが目的みたいな部分もある訳で、だから環境音楽なんだけど
それだと本当に差がつきにくくなるから、そいつである意味と必然性を見出すのが相対的に
難しい部分がある。結局はただひたすら音色の説得力だとか出音のブレなさっていう部分、
あと構成が独りよがりでないかどうか、垂れ流しではなくある程度練られたモノであるのが
これ見よがしにではなく、あくまで自然と感じられるという事がポイントかなと思ってる。