GVVC Weekly – Week 189

Florist – “Sci-fi Silence” (Official Music Video)

フローリストの新作アルバムから、これで三つ目となる先行シングルが凝ったビデオで公開。
標準がゆるく淡く穏やかすぎるもんで、今回これで一番よそ行きというかラジオ向け楽曲と
思われ、たとえサイファイがテーマでも変わらず、瑞々しくたおやかなエミリー・サウンド。
彼女らにしては比較的太めのボトムとビート感にシンセのレイヤーも普段よりきらびやかで
ポップスとしての芯も感じさせるサービス増量名刺代わりの一発です。ただ、これでもまだ
人によってはフックがなさすぎて聴けないと感じるかもね。よくこの音楽性で勝負してるな
とは思うが、ナチュラル過ぎて受け入れられる。映像の方はバンド名や音と乖離し過ぎてて
イメージが混乱しますが、トールド・スラントのキャラクターがめちゃ自然にハマってるね。


Bibi Club – La nuit (Official Video)

モントリオールのビビ・クラブが8月にリリースするデビューアルバムから、2つ目の先行曲。
3年程前から活動しているようでノーマークでした、地元の名門Secret Cityからデビューで
今年一気に知名度を上げてるようです。なるほど路線としてはNotwistやLali Punaあたりの
上品なドリーム・エレクトロニック・ポップ、しかしコンテンポラリーにはなり過ぎず程々に
チャラさというか気軽さを保ったバランス感覚が秀逸。4つ打ちやシンセの加減、質感などは
Memory Tapesやフラ語とアンニュイさいうとこでMUNYAあたりも彷彿とさせる。イイね。


Beth Orton – Weather Alive (Official Music Video)

ベス・オートンが6年ぶりとなるプロパー新作フルアルバムをアナウンスし、オープナー曲を
ビデオ公開。今回はパルチザンからのリリースとなるようで、音楽性は一気に大幅進化です。
全然今までのイメージない、雄大ながらも淡い膜を張ったようなアンビエント・フォークで
7分と長尺ながらノスタルジアというよりはコンテンポラリーな表情が強い展開とレイヤー、
アタックのないサウンドが重層的に配置された幽玄オルタナの非常に深みのある世界観だね。


Young Guv – “Cry 2 Sleep” (Official Audio)

月末にリリースとなるヤング・ガヴの今年2枚目な新作アルバムから、新たな先行曲が公開。
チャカポコビートの宅録DIYポップにビーチボーイズが入ったブリージンな初夏向け楽曲で、
最近のサウンドは金太郎飴状態だったのでここらで少しこういうのが入ってくると良いです。
非常に軽く、サラっ聴き流せてそこはかとなくオシャレ感もありクドすぎずいやらしくない
駅ビル商業施設の中で比較的高感度(路地裏の個人店と比べるとたかがしれてる)の店とか
カフェでBGMとして最高に機能するのが目に浮かぶ音楽で、なんつうか使いでがあります。

今週のLP/EPフルリリース

Natalie Evans – Movements (LP)

先行M-3の紹介時も確か書いたけど音像を少しウェット寄りに深くしたのが相当効いてる。
表層のイメージは可愛い感じのお店でもかけれるような甘いドリームSSWみたいな趣の中に
ほんの触り程度だけネオクラシカルのピリっとしたムードをプラスしつつ、いわゆるシティ、
インディソウル系入ったようなM-10みたいなのも同居してるバランスが素晴らしいと思うし
うまいこと市場のニーズにも応えられるような音楽になっているよね。肝心のハープの比重が
正直期待よりもかなり低くて、もうちょいフィーチャーしても良いんじゃと思うけどその分
よりコンパクトに機能してるのかも。語り口はグレゴリー&ザ・ホークとかも想起する感じ。
しかしちょっとアレンジがコンサバで、芸術点が低いのが明確に弱点…色気がないというか
悪い意味で小綺麗に仕上がってるからもう少し外しを入れるか外部のプロデュースにしたり、
ベースとしての素材はかなりイイ線いってると思うから、いろいろと試してみて欲しいかな。


iamamiwhoami – Be Here Soon (LP)

先行のM-1が過去と比べ良くなり過ぎてて期待のハードルが上がりまくっていたせいもあり、
そこまでじゃなかったけどホントよくこの路線に舵切ったなと。まあ時間経ってるから多分
年齢というかライフステージ的なものの影響とかもあるのだろうけど、エレクトロニックの
度合いって部分もだし、ちょいエキセントリックな側面や露悪的に感じていた箇所が中和。
幽玄でシャーマニックな趣は強過ぎずフレイバー程度だし、ちょっと上品な風情すら出てて
北欧のシネマティックなアートポップとして文句ない理想形です。節回しとかメロディとか
どちらかというとクドい筈なんですが声のせいか不思議とクサみがなくナチュラルに美しい。