GVVC Weekly – Week 197


Doll Spirit Vessel – What Stays (Official Music Video)

フィラデルフィアのドール・スピリット・ヴェッセルが来月リリースするデビュー作LPより
三つ目の先行曲としてタイトルトラックをビデオで公開。ここまでのリードシングルは全て
トップで紹介してきてますが、本当に素晴らしいバンドで今年新たに知った中では一番です。
何度も書いてるけど独特のタイム感とストップ&ゴーの抑揚、常に漠とした雰囲気があって
諦念の先にある穏やかさみたいな部分まで到達した、寒々しくないオルタナティヴの中には
豊かな音像のスロウコアというか、淡い自然光の広がる音像がどこまでも美しく詩的なの。

Das Beat – Intensity

ベルリンに移住したBlue HawaiiのAgorと、現地の女優兼シンガーが結成したダス・ビートが
Arbutusからニューシングルをリリース。最近のブルー・ハワイでやっている本気ハウスから
サウンドの艶と鋭さはそのまま持ってきて、ダークニューウェイヴが少し入ったディスコ風の
インディダンスという音楽性は、偶然にも10年ちょい前あったCaptured Tracks等全盛期と
一部でムードを共有しつつ、IDIB周辺の美意識とアービュタスのカラー融合した面白い音楽。
さらっと作りました感のある楽曲が上手く勢いを持って響いてるナイト・ミュージックです。

U.S. Girls – So Typically Now (Official Video)

U.S.ガールズが前作アルバム以来となるプロパーの新曲を単発シングルとしてリリースです。
これ面白くて、まさに前作で大幅進化したフルバンド展開のインディ・ブルース・ブラコン
中南米ソウル路線が、かなり前からの宅録サウンドと融合した結果エレクトロディスコ風の
ハウスナンバーになってしまうという、前と今の折衷ポイントが偶然に特異点だった感じに。
おそらくアルバムからの先行などではないはずですがこれはこれで良くて楽曲の強度も高く、
セルフディレクションの映像もアイロニーとシニカルとファニーのバランスが上手くマッチ。

Living Hour – Miss Miss Miss (Official Music Video)

リヴィング・アワーのニューアルバムから、これで三つ目となる先行曲がビデオで公開です。
レイドバックした淡くソフトなリゾート・ドリーム宅録ポップみたいな雰囲気のトラックは
お馬さんが3D空間を上昇していく映像がカワイイですが、例えばずっと同じ地元で育って、
大人デビューしてもそこに住み続けるということは…毎日同じストリートをあらゆる状況と
ライフステージにおいて通過し眺め続ける訳で…メンバーが地元にあるパロミノ・クラブの
馬のネオンサインをそのように自分の秘密のシンボルとして愛着を持っていたことについて
この楽曲でモチーフにしているらしい。LPはJay Somとの共同プロデュースになってますね。

Big Joanie – In My Arms (Official Music Video)

ビッグ・ジョーニーが11月にリリースする新作アルバムから、2つ目の先行シングルを公開。
細かい節回しやドラムの鳴りには多少の尖りを感じるものの、この曲に関して言えば其れ程
ポストパンク的な面影がなく、純ギターポップやインディロックの軽めで爽やかなサウンド。
敢えてブラック・フェミニスト・シスター・パンクを自称までしている彼女らに、こういう
抑圧やレジストを孕まない純ホワイトミュージックをやられると逆に何か凄みがあってね、
アフリカ系と中米系ルーツのメンバー「のみ」で構成されてソウルやヒップホップ・R&B等
一切感じさせないこういったバンド(一人居るとかじゃダメ)もっともっと増えて欲しいな。

今週のLP/EPフルリリース

Chat Pile – God’s Country (LP)

散々話題になってて、鳴り物入りのフルレングスデュー。先行ちらっと聴いてましたがコレ、
通しだとますます凄みが伝わってきて思った以上にやられた。おそらくいろんな媒体で年末
ベストアルバムにランクインしまくるはず、それが間違いないレベルの紛れもない名盤です。
まずフォントで警戒するけどデスメタルの要素って正直かなり薄く、ポストハードコア範疇。
ドゥームっていう程重くないというか…いや相対的な話ですが、ちゃんと軽やかさがあって
もっとSwans的なものとSlint的なものと初期ドンキャバレロ混ぜて、Shinerみたいな部分も
追加した感じかな。オルタナとポストハードコア両翼のヘヴィロック、メタルコアというか
そこに更にこう喋りポストパンク、デス声になったOughtみたいな要素が入って間口が広い。
ここまでは前のダブルEPの頃と同じだが、今作ではよりキャッチーに進化していて歌モノと
呼べてしまうような楽曲の纏まり方が、下手したらSUB POPから出てても受け入れられる。


Florist – s/t (LP)

戻ってきたバンド編成のフローリスト、セルフタイトルの入魂作というので先行曲も事前に
紹介していたが、フルでもレビューします。基本的にフレーズや演奏、テクスチャーや歌詞
そういうディテールに耳を尖らせて神経質にリスニングするような代物ではないのよこれは。
ただゆったりと日常の空間を流れる淡く優しい平熱の音楽だけど、それが一応はポップスの
歌モノの姿で、オーガニックなバンド編成で奏でられてるのがとんどもなく特異だし尊い事。
休日の部屋や庭、いつもの帰り道なんかにたゆたうこれ以上ない奥ゆかしくて繊細なBGM、
エミリーの人柄がそのまま具現化したような奇跡の質感はこれぞ真のアンビエントフォーク。
絶対に真似できないし、そもそもこんなものが存在してる、一部では確かに評価されてると、
その事実がこの世も捨てたもんじゃないと思える一因になり得るくらい性善説のオーラです。