GVVC Weekly – Week 208

Der Assistent – Das Objekt (Official Video)

ベルリンのデア・アシステントが今年3つ目となる単発シングルをリリース。
正式アナウンスはありませんが来年に予定されている1stフルアルバムからの実質的な先行トラックのようです。
ちょっとラウンジ入ったソフトエレクトロニック・インディ・レゲエ・ダブという感じの音楽で、ソウル調の甘さもある中にジャーマン要素というかこの硬さ、パルスのスクエア感が絶妙なアクセントで良い。
ボーカルやシーケンスのメロディも鬱陶しくない程度にポップさは残す絶妙なさじ加減で、幅広いBGMに対応する洗練されたハイブリッド音楽。
味気ないバンド名、味気ない曲名、ひたすら車のハードウェアが映し出されていく謎ビデオもやけにマッチするかなり不思議なムードだね。


SALES – July

セイルズが半年ぶりとなるプロパー新曲を公開、今回も単発のシングルです。
たまたまかもしれませんが普段よりは密室感のない比較的開けた音像で、このくらいの空気感であればいろんな音楽と並べてかかっても違和感がなさそうで、使える現場が増えるかな。
依然として強烈にベッドルームポップを印象付ける音楽で、それ以外の何物でもないけどこのちょっと寂しげなセンチメンタリズムが純度100パーセントのクラリティで美しい。
しかし、もう何年もやってるってのに音楽性が全っ然進化しねーな、良くも悪くも。


Rozi Plain – Prove Your Good (Official Audio)

This Is the Kitにも参加するロジ・プレインが来年1月にリリースする新作アルバムから二つ目の先行曲です。
基本的に静かでエアリーな空気感の中にクリーンオクターバーのかかったパーカッシヴなシーケンスが入ったり、コンテンポラリーな音像で清涼感のあるコーラスワークと、Flock of Dimesあたりに近いような路線の楽曲。
現代美術とか建築、インテリア的な方面にスルっと入っていける洗練された控えめなポップスという風情かな。


Metronomy & Katy J Pearson – Love Factory (Official Music Video)

メトロノミーが今年リリースした最新作アルバムのデラックス版に追加収録されるトラックとして、LPからもビデオカットされていた楽曲のケイティ・ジェイ・ピアソンによるリワークヴァージョンを公開。
こちらカバーというわけではなくケイティをメインボーカルに据えてた上でアレンジを変更したという風体になってまして、デュエットのドリームポップみたいな仕上がりに。
そもそも中々良い曲なのと、長いディケイのリヴァーブと深いディレイでトロトロの音像がなんだか本来のメトロノミーのイメージになくて面白いです。

今週のLP/EPフルリリース

Lucrecia Dalt – ¡Ay! (LP)

いや最初の先行トラック出た時点でこの大胆な新機軸はすげーなと、ここでも紹介してきたけど全編聴いてこりゃもう間違いなく最高傑作でしょう。
ダーク寄りエレクトロニック、エクスペリメンタルのサウンドアート極めてる人がラテンアメリカを本気で再解釈した有機的な新世界は、元来の硬質な雰囲気と艶がしっかり残ったままの異様なラウンジポップで局所的にはエキゾ〜モンドまで突っ込む突然変異。
いわゆる安直に南米音楽の要素やリズム取り入れましたみたいなアブストラクト系のテクノとかベッドルームものとは根本的に別物で、探求の深さが違うし、本人の出自にちゃんとルーツがあるから何より自然なんだよ。
歌もいままでで一番多いし、これだけやっておきながらとっつき易さも過去一兼ね備えてる。シグネチャーの一つであった不穏なムードに少し柔和な緩みも同居して全部の要素がしっくり結実してます。
こんなの他にできるヤツがいない、文句なしの大傑作。


A.O. Gerber – Meet Me at the Gloaming (LP)

いくつか出てた先行の印象がちょっと微妙で、掲載すらしていなかったし内心どうしたのかなと心配していたが全編聴いて少し安心した、そんなには変わって無いね。
一応歌モノの体面をしていながら、シーケンスの重ね方や音色に妙なアンビエント感があり、かつ僅かに室内楽っぽさのあるアレンジでちょっとドレッシーな装いなのが面白くて、その点を評価しているので個人的には変に芯のあるオルタナポップを作ろうとかしない方がいいと思う。もっと自然に自然に。
まだ、ここより更に曖昧でいいと思うが、今回のMVの方向性(ダサい)見る限りある程度ブレイクしないといけないプレッシャーとかあるんだろうなと想像つくし好き勝手やるわけにもいかんのだろうか。マデリン・ケニーの共同プロデュース体制も変わってないのに何がいけないんだろうな…前作はほんと好きで今だに度々聴いてます。決してより良くはなってないから、いつかあれ以上を期待したい。


Skullcrusher – Quiet the Room (LP)

一時かなり推してた手前、一応載せとこうか。相当気合いの入ったPRで鳴り物入りのデビューから満を辞しての1stフルアルバムなんですが、ちょっとコメントに困る内容で…いやもちろんそう悪くはない。全然いいんだけど、本当に置きに行った雰囲気というかあまり発展してないのと単純に曲が良くない。
いわゆるアンビエントフォークをサッドガールインディ路線の半メジャーの方々の音楽と併置できるようなさじ加減に調整した、いかにも製品っぽい仕上がりなのが萎えるのかな。
この構成なら基軸になるスタンドアウト楽曲が欲しいし、インタールードも込みとはいえ14トラックもある意味がないよね。
曲が弱いアンビエントの歌モノを整えすぎると当然こうなるだろうという印象。曲数減らして音やアレンジをもっとラフにするだけで幾分マシになるはず。辛気臭さと瑞々しさが同居してて神秘性があるってとこは素晴らしいんだから、そこをスポイルせずに仕上げて欲しいがSCレベルの商業度と両立は難しいのかも。
Storm in Summer聴いて勝手に期待しすぎてたのかもしれないが、折角ならあれを収録してもよかったし、アンビエントというか幽玄さを削ってもっと陽の方向に拡張したバージョンを見せて欲しかったなと。ルックスや雰囲気含めた本人のスペックが規格外なので、1枚でも名盤出せばずっと残るのが約束されてるのは武器だし、まあまだ次がある。もっと小さいとこからリリース希望。