GVVC Weekly – Week 212

Huntly – It’s You I’m Here For (Official Music Video)

メルボルンのハントリーが来年2月にリリースする新作アルバムから二つ目となる先行トラックをビデオ公開。
2019年のデビューアルバムは当GVVCでもその年の年間ベストトラック1位を含む2曲も選出という厚遇で迎えた本当に良い作品でした。
これでも最近のウチで扱う物の中ではエレクトロニックの度数が高めな方の音楽にはなるが、過度にソリッドなものではなくウォームなタッチが強いし、夜ではなくあくまでも昼のイメージのナチュラルな音楽なんです。
繊細で奥行きのある深いボーカルとシルキーなインストの質感で、全体が光のヴェールで包まれているような雰囲気が本当に素晴らしい独特の音像は相変わらず、そこに昨今のブームもあってUKガラージュ風のフィーリングが前作よりも増えてる気配がありますが、元々少し持ってた要素でもあり導入の仕方が上品。
前作であったちょっと微妙なカバーアートという問題も今回は解消され、ここにもっと大人しめの美しい楽曲も盛り込んでくると思われるので、非常に期待できます。


Fever Ray – ‘Carbon Dioxide’ (Official Visualiser)

The Knifeのカリンによるフィーヴァー・レイが正式に来年3月リリースのニューアルバムをアナウンスし先行曲をビジュアライザー公開です。
当GVVCでも紹介した、先月に出ていたシングルもオープニングトラックとして収録の模様。
あまりにも相変わらず過ぎるカバーアートです。
さて内容の方は唯一無二のボーカルスタイルが大暴れする4つ打ちのシンセ・アートポップになってまして、前回よりもアップテンポに攻めるザ・リードシングル。
妙なブレイクや煙に巻く展開などもなく、ザ・ナイフの楽曲も含めて過去一番キャッチーな装いではないでしょうか?
それにしてもこの存在感本当に格好いいです。これだけやってエキセントリックやキワモノにならない、完全に芸術作品。バックボーンが違うんだろね。


Gena Rose Bruce feat. Bill Callahan – Deep Is The Way (Official Video)

メルボルンのSSW、ジーナ・ローズ・ブルースが来年1月にリリースする新作アルバムよりリードトラックのビデオを公開。
9月に出ていた別の収録曲でも共作にクレジットされていたましたが、今回は共作かつ客演にもビル・キャラハンを迎えたデュエット・ソングです。
抑えの効いたオルタナフォーク・ピアノバラッドの上でFaye Websterのようなかすれ気味の甘いボーカルにBill Callahanの深いイケシブボイスが混ざるオトナな音像ですが、絶妙に煙たくオッサン臭くならないラインにモダナイズされており秀逸なバランス。
ナタリー・プラスの1stに入ってそうな雰囲気の調整となっています。


Fetch Tiger – Sunroom

ロンドンで結成され、現在片割れはブルックリン拠点という遠隔デュオ、フェチ・タイガーがボルドーのNice Guysから単発のデジタルシングルをリリース。
このレーベルらしくインスタントにわかりやすい方向性で軽薄になりそうなギリギリのところで踏みとどまる、Rolling Blackouts Coastal Feverが宅録ドリームポップ化したような塩梅のサウンド。
ちょっとゴチャゴチャ展開させすぎな気もしますが、この手の割になんか元気がいいのとナイーヴすぎない逞しいセンチメンタリズムみたいなのを感じてピックアップ。


Sorry Girls – Breathe

モントリオールの・ソーリー・ガールズが2019年のデビューアルバム以来にリリースするプロパー新曲のシングルをビデオ公開。
引き続きArbutusからで、ソフィスティケイトされたバンドサウンドのインディフォークですがシンセがなくソウルやシティポップの要素も入っていないぶんシンプルで流麗なサウンド。
小慣れたメロディと小気味良さでWeather Stationからアクを薄めたようなイメージになり、毒にも薬にもならないと万能にハイセンスとの狭間で揺れる上品な仕上がりでBGM適性が非常に高いです。

今週のLP/EPフルリリース

smut – How the Light Felt (LP)

2年前のEPで出てきたような印象だったが、なんだかんだ結成からで行くと9年くらいやってるみたい。
音楽はもちろんのことカバーアートからアー写に到るまでどこまでも90’sインディ趣味を徹底したブランディング。
サウンドのそれっぽさが無難にクオリティ高いのもだが、一番武器になってるのはボーカルが結構振り幅を広く出せるタイプで、いかにもネオアコなあどけなさのある雰囲気と、コクトーツインズ路線のどちらにも行ける点。
90’sっといってもグランジはほとんど入ってなくて、ギターポップとかシューゲイズの比重が大きいタイプは近似値としてはAlvvaysか。なぜかLong Beardも想起。
楽曲も粒ぞろいで、頭抜けて目立つ1曲があるわけでもなく全体的な調和が取れており想定していたよりもオトナな仕上がりなのもグッドです。
ギリギリで可愛らしい局面もあるんだけど匂わせ程度でやりすぎない、ちゃんと聴くとそこまで若くない事に納得が行く相応の成熟度でした。良盤!