GVVC Weekly – Week 215

mui zyu – Rotten Bun (Official Visualizer)

ダーマ・スカウトのメンバーによるモイ・ジューが来年2月にリリースするソロデビューLPから二つ目の先行シングルを公開。
アルバムではオープニングトラックに配置されたこちら、ぶっ壊れそうな美しさのメランコリック退廃ドリームポップになってます。
本体バンドのそのまま新曲と言われても基本的には違和感ない雰囲気で、シグネチャーの一つでもあるちょっとだけ禍々しいムードを湛えたダウンテンポ・アートポップがブレイク入れつつ螺旋状にじわじわ盛り上がってバーストしていく芸術点の高い仕上がり。
毒々しい色の大きな花がコマ送りで開いていく映像のような音楽。


Eaves Wilder – Morning Rain (Official Lyric Video)

Secretly Canadianと契約したロンドンの19歳、イーヴズ・ワイルダーの単発ニューシングが公開。
前回の楽曲よりもメランコリックなサウンドで、今回に関しては純粋にダウナー系ドリームポップのような風情になってます。
昨年から出てきた印象だけど、基本は割とこういう音像が深すぎない空間系ポップに、曲によりガレージロックやオルタナが軽く入ってきた上で全体を薄めた感じの音楽性。
あまりアクが強くないとことがいいんでしょうか?年齢考えると確かに完成はされてますが、プロダクション的には宅録ではなく、ギターボーカル以外は助っ人だらけです。


King Tuff – Portrait Of God (Official Video)

キング・タフが引き続きSUB POPより来年1月にリリースする新作アルバムから二つ目の先行曲をビデオ公開。なんだかんだ10年サブポップ選手やってますね。
この人も初期の頃よりだいぶ落ち着いてきて、ファジーなコーラスポップにしつつ、ちょっとやっぱガレージ上がりのロックンロールやヤンチャな感じがそこはかとなく滲み出てるので個人的にその辺あまり得意ではないのですが、今回は特に聴ける。
これ、ボーカルをダブルで乗せるのどうなんだろうな、シングルのほうがスッキリしてメロディ際立つ感じもするんだけど。パワーポップ感出したいなら仕方ないのか。


MYNK – Boundaries (Official Video)

ロンドンの3ピースバンド、ミンクがデビューシングルとなるプロジェクトお披露目トラックをリリース。
ホラーズのファリスらがレコーディングに関わっているようで、成る程見事にUKのダークウェイヴ系ドンズバなサウンドですが、色付けをやり過ぎておらずコンパクトに仕上がっており非常にキャッチー。
アトモスフェリックなパートと刻み込むポストパンク系のパートを明確なメリハリつけて転換繰り返す構成もなかなか中毒性があって良いです。
ミニマリスト・ポップ・ノワールを標榜しているみたいで、まあそんな感じかな?単なるダーク・ポストパンクって勢力とこっからどう差別化していくか見ものです。

今週のLP/EPフルリリース

Tiny Vipers – American Prayer (EP)

EPとはいえまさかの突然新作。この10年でいくつか謎のシンセ・インスト作が出てたけど、それらは内容的にほぼノーカン。
グルーパーとのスーパーユニット、ミラーリングのLPなどはあったものの、本来の音楽性でのちゃんとした単独オリジナルパッケージ新作はあのLife on Earth以来(2009年)です。
Grouperとはまた少し違う、剥き出しの生々しさがある幽玄フォークという矛盾したスタイルで完全にハシリの存在。崇高な雰囲気があり、よりジョニミやジュディ・シル系譜のSSWに近いような存在だが、すごくナチュラルにアンビエント感覚があって音像が深い。
基本的にただの弾き語りなんだけどね、とんでもない説得力と美しさ。もっと活動して欲しいが、このレアキャラ感もブランディングに一役買ってるんでしょうか。


Work Wife – Quitting Season EP

フォーマットとしてはいわゆるアウトプットがバンド編成のSSWソロユニットで、街の子っぽく整った感じのインディ・オルタナフォーク・ロック。いかにもウチが扱いそうなやつです。
以前はローファイポップの感覚も結構強かったみたいだけど、今回のEPからより方向性が明確になりややオトナなサウンドにブラッシュアップ。
派手さはないですが、メロディが滋味深くてなんか残るし、ほんの少しだけJordana的というか今回でいうとM-3みたいなトラックも混ぜてくるところがモダンポイント。
纏まった作品としては初めてのEP、正直5曲全部ふつうに良くて、意外と細かいところのフレージングもきめ細やかで気が利いており今後に期待できます。
ブルックリンの人にしちゃフィリー系の雰囲気あるなと思ったらなるほどフィラデルフィアのレーベル(Born Losers Records)からのリリース。
音楽性や歌詞との組み合わせでアーティスト名もナイスだし、カバーアートも素敵だね。
本人は一応ツイッターあるのにEPリリースを直近で全然宣伝してないのもやる気がなくて○。