GVVC Weekly – Week 228

Jessy Lanza – Don’t Leave Me Now

ジェシー・ランザが引き続きHyperdubから単発のニューシングルをリリース。L.A.に拠点を移して以降で制作された初のトラックだそうです。
この人お得意の空間を生かしたサウンドで独特の抜け感・洒脱さが演出され、かつ妙なフックがあり総体としてはキャッチーなフレージングが次々に飛び出す面白エレクトロニック・ダンスポップチューン。
贅肉を抜きまくったミュータント・ベース・R&Bなんだけどなぜか4つ打ちで高速ハウスの体裁。ここまでやっててちゃんと踊らすクラブミュージックとして成立させる、ある意味天才というかマジシャンですわ。


Andy Stack and Jay Hammond – Anxious In Love

ワイ・オークのアンディ・スタックが旧友との連名で6月にリリースするアルバムから最初の先行曲はオープニングトラック。
インプロ系の自然派アンビエント・ポストロックジャムのような音楽性で、フリーキーなドラムとアブストラクトなシークエンスがナチュラルと無機質の間で揺れるPele~COCOBラインのような質感になってます。
刻みはなく常にブレイクしているような状態ではあるのですが散漫すぎない絶妙なバランスで、なかなか爽やかですらあるインストBGMとしても成立しており、この手ではかなり聴き易い部類と言えるでしょう。他のトラックがどうなってるか早く聴いてみたいですね。


Greg Mendez – Maria

なんだかんだ10年以上のキャリアがあるフィラデルフィアのSSW、グレッグ・メンデスがここへ来てセルフタイトルでリリースする新作アルバムから二つ目の先行曲ビデオ。
いつもの作風よりややセンチメンタルでむき出しの無防備なニュアンス溢れる正味2分弱の楽曲は、 非常にエリオット・スミスやAlex G的なちょっと心配になる繊細な雰囲気のLofiオルタナ・インディフォークです。
終盤の”but then somebody said”からの展開が求心力あって素晴らしい。


Alex Lahey – They Wouldn’t Let Me In

メルボルンのSSW、アレックス・レイヒーが5月にリリースする新作アルバムから4つ目の先行トラックビデオです。
Dead Oceansは離脱してしまったようで、Liberation Recordsからの発表となっていますが音楽性的に変化はなく、ウィットに富んだ風刺的センスのあるオルタナ・インディロックを直線的に展開していくスタイル。
今回はストロークスと初期ブロックパーティが合体したような楽曲で、軽妙な雰囲気もありつつ、ズケズケした本人のパワフルさでドライヴしていくんですがなんかやっぱちょっと一癖あってこの人は面白いなと感じる。


Silver Moth – The Eternal

モグワイのスチュワートやエリザベス・エレクトラが参加する新コレクティヴ、シルヴァー・モスが4月にBella Unionからリリースするデビューアルバムより2つ目となる先行曲のビデオが公開。トラックだけで少し前に出てましたが映像がイメージ通りにマッチしてましたのでこのタイミングで掲載です。
ビッグなリバーブで非常にスケール感のある雄大なポストロックサウンドになってまして、これといって特別なギミックもシグネチャーもないのですが、完全クリーンでありながらドシンと重心の低い貫禄のある音像は、まるでエンジニアリングにデイヴ・フリッドマンがかんでいる諸作でみられるようなレンジと空間の広がりでどこまでもセレスチャル。

今週のLP/EPフルリリース

Steve Gunn & David Moore – Let the Moon Be a Planet (LP)

先行で出てたM-1が素晴らしすぎてものすごく期待していた、Steve GunnとBing & Ruthの連名という触れ込み通りのイイとこ取りサウンドが提示されてる理想的なコラボ作。
音楽性はいわゆるインプロっぽい成分のある生楽器オーガニックアンビエントの、土臭いやつじゃなくそこそこにウェットで整理された音像のクリアなポストロック風なものです。
ただそのサーフェスというか質感、エンジニアリングの妙なんだと思うけど異常に洗練されて粒立ちが美しく密度の濃い音像になってまして、あくまでもナチュラル志向のベクトルにおいてとんでもなくハイファイなんですよ。これがたぶんビング&ルースことデヴィッド・ムーアの技なのでしょうかね。
どちらのアーティストも単独でも個人的にはそこそこ好きですが、今回は組み合わさって全く新しいものを提示するとか長所を伸ばすとかでもなく、クセを中和し合ったような内容になってるのでこれが一番だと思います。


EDDIE CHACON – Sundown (LP)

引き続きJohn Carroll Kirbyがプロダクションですが明らかに前作よりさらに良いでしょうね。プロデュースされた感が薄れてよりナチュラルになったことで全ての長所が更に強化されてます。
基本ホワイトソウル、R&BというかAORっつうとこで絶妙にオッサン臭くなりそうなところのギリギリでモダンに、クラブサウンドっていうバイアスかけて入ってもまあまあ無理なく馴染むようなバランス感覚で仕立てられておりラグジュアリー・ラウンジのDJからハイソなインテリアショップのBGMでもいけるラインに。
本人のボーカルもなんだかんだ曖昧なニュアンスがあるのも偶然なのかプラスに作用して、オルタナ気質というかアンビエントだとかっていう感覚を前提に置いて作られてる音楽なのかどうか一聴して判断に迷うビミョ〜な塩梅。その分、どちらにも転がれる懐の広さがあります。こういうの出すスートンズ・スロウってやっぱ流石っすよ。オシャレになったマイケル・フランクス。重ね重ね、あくまでもギリギリではあります。