GVVC Weekly – Week 229

Beach Fossils – Dare Me

ビーチ・フォッシルズの新作アルバムから二つ目の先行曲がビデオ公開です。
今回も当初のブレイク後、雨後の筍のように模倣バンドが続出したシグネチャーのツインギターサウンドが全面に押し出されたインディロック。表面的には簡単に真似できるし日本にもいっぱいいるけど、なかなかこの深みは出せない。
特に前回のトラックも含め今作はウェット目な雰囲気で押してきているようで、これだけしっとりセンチメンタルに振ってもなぜか少しも軽薄じゃない、なぜここまで品格を保てる?オリジネイターの凄みだよね。本人がちゃんとかっこいいってのも重要なポイントですが。
全然良くなかった時が一切無いし、存在としてのクラス感、ブランドを毀損しないというのがどれ程重要か改めて感じるね。


7ebra – Done With the Day

スウェーデン、マルメのゼブラが5月にリリースするデビューアルバムからの先行曲は半分程度が公開された形でこれで五つ目です。
淡々としたダウナーでダルな宅録のオルタナ楽曲になってますが、角の取れたやや丸いサウンドはどこかソフトでスウェディッシュを感じさせる雰囲気も同居したアンニュイさがあります。
I’m done with the day, I think I’m OK with the things that have happened.


The Saxophones – The Mist

6月にリリースされるザ・サキソフォンズの新作アルバムからオープニングトラックが先行公開。
Nixonの頃のラムチョップをショボくしたような音像で、ラウンジ感と微かにエキゾチックなニュアンスのあるオルタナ・フォークの楽曲はアンビエント・サイケとリゾートが同居したスロウ・ジャムです。
穏やかにも不穏にも響く、リラックスできるのかできないのか分からない、ある種異様な雰囲気が漂ってて面白い。


Margaritas Podridas – Filosa

メキシコの4ピースバンド、マルガリータス・ポドリダスがSUB POPから突如リリースした両A面シングル。
これはスゴイ、大物のスケール感と貫禄のあるオルタナガレージ・パンクロックで強烈に90’sフィールが迸るエネルギッシュなトラックになってまして、シングルズ・クラブでとはいえサブポップがピックアップするのも頷ける逸材です。
コートニー・ラヴも真っ青なシンガーの入り込みっぷりで、Holeの曲にこんなのあったような…VioletにちょっとBreedが混ざった位のバランスで、ここまでモロなのにあくまで歌詞はスペ語なのもいいのかな。


Joey Nebulous – Break / Jennifer Aniston

シカゴのジョーイ・ネビュラスがリリースしたニューシングルです。
ソロユニットですがレコーディングでもサポート参加でバンド編成を取っているスタイルのようで、楽曲がちょっとFrankie Cosmosっぽいなと思ったらBreakの方にはなんと本人がボーカル提供してるというサプライズ。
気の抜けた洒脱なインディポップを基本としていますが裏声(ミックス?)ベースなこともあってか、ちょっとナチュラルにネジが抜けて狂ってるニュアンスを醸しており、ピンク大好き夢カワ系のゲイカルチャー全面に打ち出すイメージなどもあって一筋縄でいかない存在感を発揮しているね。

今週のLP/EPフルリリース

Wednesday – Rat Saw God (LP)

前回のアルバムも相当良かったし当時もレビューした記憶があるが、順当にステップアップし今回からDead Oceansってことで最初に先行で切ってた超尺のM-2も異様に気合いの入った仕上がりと、ここでキャリアハイになる雰囲気がプンプンしてたがコレは掛け値なしに大傑作。アルバム単位で現状では今年イチです。
バイポーラー的に抑圧が内に外に暴発するインテンシティと緊張感の高い純然たるオルタナティブロックのフォーマットはギター2本ベースドラムの基本編成、雰囲気程度のシンセも入れないストイックぶりだけど、アンサンブルの息があまりにもピッタリ過ぎて生き物みたいなサウンドしてるからギミックが無かろうが淡々としてようが問題なく、ボーカリストがかなり表情豊か(めんどくさ系ではあるが)かつ詩人なんで全然苦なくして作品通しで聴けるんですよね。
前はもう少しギスギスしたムードが支配的だったように思うが精神状態の向上か、歪み気味のワクサハッチー位なオルカン然とした楽曲も増えてきて、全体の構成も流れの中で抜き差しが上手くまとめられてる。
LPのリリースと同時にビデオが公開されたM-7なんかは不穏なところが一切ない暖かいムードで、バンドの絆が強そうな所も含めてオルタナ寄りになったBig Thiefみたいにも聴こえるし、タグで自称してるcountry-gazeってのもまあ納得かな。
過ごしてきた環境(場所)や背景とかが近い人だったらより強烈に刺さるんだろうなという感じがするね。いま最もライブ観たいバンドです。

収録曲ビデオ