モントリオールのランド・オブ・トークが引き続きSaddle Creekからとなる新作アルバムをアナウンスし最初の先行曲をビデオ公開です。
すでに15年前後のキャリアがある彼女、近年はそこそこ頻繁に作品を発表している印象で直近のEPではややアブストラクトになっていた印象でしたが、今回の楽曲もピアノで作曲したらしいやや新境地のサウンドでLPではイントロに続き2曲目に配置という実質的なオープニングトラック扱い。
まず最初のひと回しだけは何故かオクターブ下で歌うという謎のボーカル・アレンジになってまして、地を這うようなベースラインが淡々とリードする静謐な雰囲気のアブストラクト・インディロックはフラジャイルかつどこか殺伐としたサッド・コア的な表情も見せる深い音像でいまいち焦点が定まらないまま散漫に終わっていく様もなかなかクール。
ちなみにフルバンドっぽい名前ですがエリザベス・パウエルによる所謂ソロバンドで、これもリズム隊以外は全て本人による自作自演です。
Maple Glider – You’re Gonna Be A Daddy
メルボルンのメイプル・グライダーが10月にリリースする新作アルバムから新たな先行曲ビデオを公開。
歌詞の通りですが父親になるのは本人の配偶者などではなく、親友の犬にとっての私みたいな感じで最高の「おばさん」になりたいな~という、生まれてくる甥っ子(姪っ子)への感情を制作トリガーとした美しいオルタナフォーク・バラッドになってまして、歌い出しが非常に求心力あります。
曲自体におもしろ要素は全く無いのですが、おふざけ路線で赤ちゃんをあやす方向性のビデオがうまいこと抜けをプラスして曲のコンパニオンとして絶妙に良い塩梅に仕上がっていますね。
Cherry Glazerr – Ready For You
チェリー・グレイザーが9月にリリースする新作アルバムから二つ目となる先行曲をビデオで公開。
一つ前の楽曲も紹介して、今までで一番良いねとレビューしましたがもうこれで間違いなさそうです。やはり前回も言及した通りでプロデュースが圧倒的に効いていると思われ、グラマラスロック的な雰囲気が多分に入ったグランジ・90’sオルタナサウンドで、ボーカルのキャラクターの存在感が最重要ってとこも込みである意味モダンにすっきりしたHole。
映像はまあこれも90’sっぽいといえばまぁそうなんでしょうが、なんかめっちゃダサい。
Sun June – Get Enough
サン・ジューンが引き続きRun For Coverから10月にリリースする新作アルバムをアナウンスし最初の先行曲をビデオ公開。
良すぎて拡張版までリリースされた2021年の前作LPが本当に素晴らしく、当GVVCの年末リストでも上位に選出しました。久々のプロパー新曲となる今回も基本的にそこから大きくは変わっていないようですが、瑞々しさとゆったりとしたナチュラル・ダブのような淡さが若干減退し少し締まったサウンドに。後半バンドのアンサンブルが熱を帯び、なだれ込むようにブレイクしてそのまま終了するタイプのアレンジで仕上げられています。
以前から割と徐々に上げていく演奏スタイルではあるのですが今回ちょっと焦燥感を感じるようなテイストが付加されていて、これだけではまだなんともな部分はありますが、自然で朗らかなのんびり感が重要なポイントだった気がするので個人的には少し残念ですかね。
DJ Shadow – Ozone Scraper
10月にリリースされるDJシャドウの新作スタジオアルバムから最初の先行曲はLPでのオープニングトラック。プロパーのフルレングスとしてはこれが8枚目みたいですが、面白いことになってますね。
情報なしで一聴したらまずDJ SHADOWだとは思わない明確にバンド寄りのサウンドで、コズミックな90’s風のシンセにリードされるクラウトロックとフュージョンがいなたくチープにミックスされたようなトラック。歌抜きのLower Densだとか、Jaga Jazzistが一時期こんなのもやる音楽性だった時あったような。
そもそもこの人はいつもそんなところあるけど、限りなくダサいに片足突っ込んだギリギリのダサかっこいい路線ですが中盤の展開などはやはり流石と思わせる巧のレイヤリングありで「格」を感じます。作品全体ではどうなってるんでしょうね、全部バンド系のベクトルならかなり楽しみですが。
今週のLP/EPフルリリース
Margaret Glaspy – Echo The Diamond (LP)
1stは良い曲があってそこそこ聴いてたんだけど、個人的に2ndがとんでもなく微妙で興味すら失ってた。そしてこの3rd、開けてみたらどうした、明らかに今までで一番の出来じゃないの。
M-1,M-2とかの求心力というかいわゆるロック・カタルシスのパワーは貫禄があってホンモノだし、単純に爽快感あり。リズムや楽曲構成はそこそこ王道にベタなスタイルばかりが基本だが、その上でこのめんどくさい歌唱と絶妙にひねくれた節回しが作家性を成立させてるね。
あまりインディどうのってタイプの人ではなく、メインストリームはぐれ者って感じでガレージ・グランジ・パンクも一通り聴きましたのでってな位のところで偶然こういうアウトプットなんだと思うしある意味間口が広いサウンド。
全体的にいなたい雰囲気もかなり持ってるが、やはりそこはブルックリン・ニューヨークなのか洒脱かつケレン味も同居していて派手なモノクロ写真と言ったらいいか、ブロードウェイ・オルタナSSW作品になってます。