GVVC Weekly – Week 251

Vanishing Twin – Lazy Garden

ロンドンのヴァニシング・ツインが来月にFIREからリリースする新作アルバムよりこれで三つ目となる先行曲を公開。
2021年のアルバムも中々良かったのですが、ますます洗練されてきましたね。先に出てたトラックと比べても今回この曲は特に凄くて、ポストロック入ったラウンジー・ドリームサイケ・アートポップと言えるような極上の仕上がり。ビートがフリーぎみでアブストラクトな展開かつ、かなり複雑にレイヤリングされているのにも関わらず、完成度の高さからか軽くキャッチーにすら聞こえます。終盤のブレイク展開とそこからの戻りがあまりにも鮮やかであっぱれ。
しかし、元バンドから考えると進化し過ぎてもはやFanfarloの人だったって事を忘れそうになるね。これで曲単体では年末リスト入り内定、LP全編も非常に期待!


Mia June – Melbourne

オーストラリア、パースのSSW、ミア・ジューンがFather/Daughterから単発のニューシングルをリリースしビデオ公開。
まだギリギリ10代みたいで、楽曲を公開しはじめたのも昨年からのようですがここで一気に完成度上げてきました。早くも良いレーベルに拾われている関係もあるのかもれませんがこれまでのリリースよりもプロダクションの強度、解像度が明確にアップしていて、オルタナの翳りを感じさせるエモーティヴなSSWインディロックになってます。
個性は弱いというか全然足りないですし、まとまったアルバムはまだまだ出なさそうですが、この年でこれなら有望株ですね。


SOCIAL CATERPILLAR – Smells Like Middle-Aged Apathy

ミルウォーキーのバンド、ソーシャル・キャタピラーが10月にリリースする新作アルバムより最初の先行曲をライブフッテージ風のビデオで公開。
4分半もある陰鬱かつヘヴィなサイケ弾き語り前振りからエモ系マスロック・ポストハードコアの香りがするパートへなだれ込むも、そこからは更に発展せず寸止めで終わります。
今までの作品でもすごく面白い音楽性で、ダークでサイケなフォークロックにドゥーム片足突っ込んだ重めのオルタナからフガジ路線、更にはアンビエント系の生音インストまでそれぞれ同じくらいの比重で繰り出す規格外サウンドはカテゴライズ不可能。ボーカルがかなり雰囲気あって素晴らしい。これはいいバンド教えて貰いましたわ。


Ryan Downey – Big Zero

メルボルンのSSW、ライアン・ダウニーが11月にリリースする新作EPから二つ目の先行曲をビデオ公開。
いわゆるソロアーティストのオルタナ・フォークロックSSWといった音楽性でしたが今回は大々的にストリングス隊などを従え、よりロマンティックでシネマティックなアコースティック・チェンバーポップのサウンドに。
ナショナルを彷彿とする深すぎずほど良いバリトンボイスで、ちょっと大味というか細かいディテールのところでインディのマナーに沿ってるかはギリギリ怪しい線ではありますが、結構こざっぱり仕上げているところでアリになってると感じます。


Kate Bollinger – You At Home

ケイト・ボリンジャーがDirty Projectorsのデイヴ・ロングストレスとの共作となる単発のニューシングルをリリース。
この組み合わせ、並びを見た時にもうそれだけで合点が行くほど納得のペアリングで、内容の方も名義人の十八番スタイルをベースにダープロのアコースティック曲でのテイストがかすかに顕現して見事に融和したちょっとサイケでちょっとボッサな60’s風のオブスキュア・フォーク小品になってます。当時のオリジナル音源のリマスターと言われても疑わないそれっぽさ。

今週のLP/EPフルリリース

Automat – Heat (LP)

ベルリンのバンドの5th、レーベルはあのCOMPOSTってことでIRMAモノとかと並んで一時期その辺にハマりジャザノヴァとかギリギリでなんとかリアルタイムの人間からするとクラブジャズなのかな?と安易に思っちゃうんですが、中々どうして面白い折衷音楽ぶり。
基本はジャジーなダブ・トリップホップの要素が強く、ボーカルは客演ありきなのでちょっとジャムバンドっぽさもある。これだけなら特筆するほどのものではないが、何ていうかもっと軟派で文化系のカラーも自然と取り入れており、8ビート仕様にも完全対応したレフトフィールドポップとかオルタナポップの範疇と言えるレベルのサウンドも織り交ぜてくる感じが秀逸でかつ仕上げが常に美しい。M-6、M-8なんかはドリームポップとも言い張れそうな絶妙な塩梅。このバランスならパーマネントのボーカリスト居てもいいと思うけどね。
しかしこれがコンポストから出てるってなんか時代を感じるし感慨深さすらあります。でも、なんとなくあの時代のいわゆるジャジー・ラテン・ダウンテンポ・ビーツみたいなものと並べて流しても違和感なさそうなところが流石で、レーベルのカラーってそういうものだなと。あまりにも今の潮流、流行から外れてるというか、良い意味でメインストリームからもサブストリームからも隔絶された世界で鳴らされているので心が浄化されますわ。