GVVC Weekly – Week 260

Worthitpurchase – Big Canada

L.A.のワースイットパーチェスが昨年8月にリリースしたアルバム以来となる単発のニューシングルをビデオ公開。
ローファイhip-hop的なビートにベッドルームポップの親密な吐息と甘いメロディのまどろみが美しいナンバーで、粗さと繊細さが同居した淡々と続く音像がジワジワ効いてくるスルメトラック。要素という意味では前作から特段の路線変更ではないですが、やや解像度がアップしはっきりとした指向性を感じるものになりました。
今アブストラクトの加減がちょうどよく、表面の質感やメロディ、アレンジ等、何かが少しでも違ってくると即崩壊するバランスで成立してる良さだと思うので維持が難しい感じしますが、次回作フルレングスに期待ですね。


Lotti Eno + Lol Hammond & Chris Coco – One Sun

ブライアン・イーノの弟、ロジャー・イーノの娘であるロッティ・イーノをボーカルに、ロル・ハモンドとクリス・ココの連名コラボ楽曲がリリース。
チルアウトのビッグネームにアンビエント血統の組み合わせということでこういうもの以外にはなりようがないのかもしれないですが、開放的で散漫と広がっていくナチュラルなアンビエントの美しい音像で、どうしてもイ、イビザ…と言いたくなる雰囲気。
ギターのサウンドが嘘くさいというか、決してアンビエントフォークでは一切なく、どこまでもニューエイジ的響きにしかならないのがルーツの業というか、明確に別物の線引きがされていて面白い。意識的にそうしようとしてしてるわけじゃないでしょうけどもね。


Wishy – Too True

元HoopsのKevin KrauterがPush Popというソロプロジェクトで活動していたNina Pitchkitesと新しく始めたバンド、ウィッシーは来月WinspearからデビューEPを予定していますが、これが二つ目の先行曲となります。
楽曲によりメインボーカルを変えてくるスタイルで、今回はケヴィンの担当。シューゲイズの要素が強めのインディ・オルタナロックっていう雰囲気で、そこそこローファイな音像にダウナーまでいかずともどこか気怠げなスタイルは最初の曲より今回の方が良いですね。
フープスの時も感じてた、ちょっとミッドがキツいブライトなサウンドがいかにもああこの人だなあと思います。


Chastity Belt – Hollow

チャスティティ・ベルトが引き続きスーサイド・スクイーズから来年3月にリリースする新作アルバムをアナウンスし最初の先行曲をビデオ公開。
LPでもオープニングナンバーに配置されたこの楽曲は近年の路線をそのまま拡張したような順当進化的なサウンドになってまして、オルタナや若干のポストパンク風味は消え去り、完全に丸くなりましたね。しかしこの、どんどん深みを増すジュリア・シャピロのボーカルと10年選手のバンドアンサンブルが織り成す説得力が実に素晴らしい滋味深いトラック。
相当にシンプルな作りで、単調な曲をほぼ何のギミックもなくただただバンド演奏してるだけではあるんですが完全に成立させてます。BGMにもなりロードムービー的な雰囲気もありで、そこはかとなくアメリカを感じさせる趣です。


Mannequin Pussy – Sometimes

マネキン・プッシーが来年3月リリースの新作アルバムよりこれで三つ目の先行曲をビデオ公開。
グランジのヘヴィな重さがますます薄れて随分とライトな質感に、もはやシューゲイズと呼んでも差し支えないレベルのさじ加減にまで落ち着きました。
しかし、ボーカルの圧と存在感は相変わらずで、ドラムもファストに骨太なニュアンスは残しつつ、ギターの重さだけが明確に減量されたような塩梅で、ある意味コテコテであった全体のサウンドがこれでかなり小慣れてきたとも言えるかなと。パンチとトレードオフではあるのですが、これはこれで聴き易いですね。

今週のLP/EPフルリリース

André 3000 – New Blue Sun (LP)

予告はされていたものの、まさかの全編オーガニック系アンビエントアルバム。ラップどころかちゃんとしたビートもナシです。(軸にはなってないパーカッション程度のみ)
これメインはフルート…?なんか微妙に和楽器っぽい響きのあるフルート的な何かで、不思議な和洋折衷感を醸し出す「自然の神秘」路線アトモスフェリック・ワールド。
ニューエイジのテイストもあり、カルロス・ニーニョ周辺の発展系っぽいなと思ったらそのものズバリ本人も参加してます。まあ逆方向での客演もやってたからね。
しかしこれ本業というかずっとこの手のモノをやってる人たちのお株を奪うような大傑作で、突然やってきて初参加で優勝しちゃった門外漢みたいな格好になっており凄いというか何というか、流石としか言いようがない。狙ったような感じ、作為的な感じも一切なく、実にナチュラルで偶発的な空気感があって素晴らしいんです。これぞ雑念のない創作というか、芸術表現なんでしょう。そこそこ残る名盤扱いになると思いますよ。ヴァイナル欲しいです。