GVVC Weekly – Week 268

pencil – The Window

ロンドンのニューカマー、ペンシルがデビュー2曲目となる単発の新作シングルを「もしもし」からリリースしビデオ公開。
昨年のデビューシングルはかなりエクスペリメンタルというか、コンテンポラリーなバイオリンが乱舞する激尖りサウンドだったのですが、今回は一気に聴きやすいフォークロック風の楽曲で攻めてきました。
フックの強い構成ではなくゆらゆらと流れ進んでいくアブストラクト感がアコースティック寄りになっている時のレディヘをいっそうアーシーしにしたような雰囲気で、チェンバーミュージック的な風情の中にどこか凛としたスロウコア〜ポストロック風の趣が入っていて面白い。
現状で既にとんでもなく良いとかではないのですが、ちょっと妙な貫禄があって出音と質感に大物の雰囲気があるのでかなり気になるバンドです。この音楽性ならこんな身も蓋もない検索殺しのバンド名じゃないほうがいいと思うけどな。


The Bygones – Glad

ブルックリンの男女デュオ、ザ・バイゴーンズが4月にリリースするデビューアルバムより先行シングルをビデオ公開。
本メンバーは二人でも今回の編成的にはバンドスタイルのようで、12弦ギターのきらめくソニック・フラワー・グルーヴ型のネオアコサウンドをフルートにクラリネットで賑やかにしつつフォーク感もよりを強めたような、光り輝くインディポップソング。モッコモコの洗練されてないミックスもむしろいい味出してます。
しかし、こういった路線の楽曲はこれが初のようで、以前はもっといかにもデュオらしいジャジーな弾き語りやカバーソングなどもたくさん公開しており、はっきり言ってまるでインディ云々の文脈にはないアレな雰囲気が満載で、そこから一体何があって今回のコレなのかいささか訝しむレベルなのですが、とりまこの曲は間違いなく良いです。アルバムは未知数でちょっと怖さ半分。


Night Tapes – loner

ロンドンのナイト・テープスが単発のニューシングルをリリース。
シューゲイズ、ドリーム路線の3ピースバンドですがフル生演奏系の作りではなく基本的にビートはエレクトロニック寄りのもので、チルウェイヴやCaptured Tracks全盛期によくいた類のサウンドを踏襲しているタイプ。
今回の楽曲はリヴァーブとディレイ重ねがけのウェット深すぎるボーカルで突っ走るレイトナイト・ポップで、全体的にライトウェイトかつ軽薄な印象がいかにもUKストリートのうたかたな雰囲気が出ており、ある意味で素晴らしい。酒とタバコ、クラブの香りがするユースフル・ミュージックがあまりにもバンド名とマッチし過ぎており、グゥの音も出ません。若いね!


Frail Body – Refrain

イリノイ州ロックフォードのフレイル・ボディがDeathwishから3月にリリースする新作アルバムより最初の先行曲をビデオ公開。
3分の中でブラスト多めのスクリーモから若干メタルシューゲイズ的なパートに展開するポストハードコアですが、3ピースなのもあってこの音楽性では制約が多いぶんもはや潔く、これぞバンドの醍醐味と言えるようないい意味で遊びのないアンサンブル。タイトっていうのとは趣が違うんだけどメンバー各々の突っ込んだ前のめりなインテンシティが渾然一体に音の塊となったサウンドで、作曲やメロディうんぬんとうようりバンド活動そのものという表現をしている感じです。
音源でこれ多少ギター重ねてるとは思うけど、最小限というかほんと余計な色気だしてなくていいんだよね。

今週のLP/EPフルリリース

Ariel Kalma, Jeremiah Chiu & Marta Sofia Honer – The Closest Thing to Silence (LP)

こりゃすごい。元々はBBC Radio3の企画モノで、即席のコラボユニットで楽曲制作をするって話で当初20分の尺ノルマが、アウトプットの結果出来が良過ぎてなし崩し本コラボというか本人らが「いっそアルバム一枚作るまでやってみっべ」となっていった成り行きの結末。
アリエル・カルマをInternational Anthem系のミュージシャンとセッションさせるっていうセッティングからしてまず実に「分かってる」差配なので、ある意味当然っちゃ当然だが見事にスピリチュアルジャズとニューエイジが程よくミックスされたエレクトロニックとオーガニックの中間地点に位置する動的アンビエント・コラージュが開花してます。
その仕様上やっぱ多少まとまりがないのは仕方ないところですが宇宙的すぎず瞑想的過ぎず、ほどほどにボトムの重さもあったりと実に音像のバランスが良くて聴きやすい。基本は両陣営から生まれたトラックをそれぞれ肉付けしては返しのファイル交換くりかえして作っていってるっぽく、渋谷某duoよろしくホントのミュージック・エクスチェンジが行われており、これはジャミロクワイもびっくりでしょう。