GVVC Weekly – Week 278

Camera Obscura – Liberty Print

カメラ・オブスキュラが来月リリースする11年ぶりの新作アルバムから新たな先行曲が公開。Official Audioとなってますが一応本人らのフッテージ映像がそこそこの尺でのランダム切り貼り?とにかく純粋なループではない編集になっていて、印象としては限りなくビデオに近い感じです。
しかし、一つ前のトラックも確か紹介したと思うけど、この人らは本当このジャンルにおいて規格外の名手なんだとわかるね。日本でいう純粋なネオアコ・ギターポップに分類されるものは現役でこれ以上の平均打点出せるバンド存在しないでしょ。まずもう、本当に楽曲が強い。メロディ、歌唱、演奏どこにも気を衒った部分はないが手堅すぎるクオリティの安定感。
もうベテランレベルの年齢層だけど、若い頃だとむしろ老けて感じがちのサウンドというか正直オッサン愛好家達に支えられたジャンルだと思うので、実年齢が中年になったら逆にそこがさほどディスアドバンテージにならないというオモシロ現象起こるね。いや~、これはそのクラスタでなくとも聴けるよ。流石としか言いようがない。


Vitesse X – Realize

ブルックリンのヴィテッセ・エックスが単発のニューシングルをビデオで公開。
こちら今回はJorge Elbrechtがミックス担当のようでなるほどそんな感じの質感になっており、こういうの触らせたら彼ほんと上手いですね。楽曲の方は普段よりも一層、シューゲイズ・ドリーム寄りのインディというか、エレクトロニック成分は控えめでシンプルに仕上がっておりひらすら清涼感を振りまくサウンド。この人は変に凝らずこういうのでいいんだよって思ってしまう出来です。
ちょっと前に出してたピンバックのカバーも組み合わせの妙でなかなか面白かったですし、いわゆるエレクトロニック・ポップだとか少しだけハイパー以降の香りもする中でなぜ彼女は個人的に受け入れられるのかというとやはりギターがかなり入っている音楽だからでしょうね。結局そこは大きいのよ。


Patrick Shiroishi – The Light is Not Afraid

L.A.の日系人アーティスト、パトリック・シロイシがSUB POPから1,000枚限定の7インチをリリース。A面はEmma Ruth Rundleをボーカルというか語りに起用したビートレスのトラックなのですが、B面のこちらの方にビデオが出てます。
結構なキャリアがある彼、たまに日本語で歌ったりもしてますが、今回の楽曲も冒頭に日本語のボーカルが入っており、ほとんど細かい構成は決まっていないようなポストロック・ジャムが6分間展開されます。一発録りのダイナミックな演奏で非常に生々しくスケールの大きいサウンドはどこか欲を捨てたような、達観したような包容力のある雰囲気でとてもリアリティがあり魅力的。
映像の方は本人が血縁者(たぶん)達とともに全米日系人博物館を訪問する内容。ロン毛なのがパトリック・シロイシさんです。

今週のLP/EPフルリリース

Naked Brunch – Plague Dance (LP)

もう3年くらいはやっているみたいだけど完全ノーマークの伏兵。まずバンド名だけど、エドツワキがやっていたブランド(10年以上前になくなった)と字面があまりに似過ぎてて空目します。Rが入ってるだけだし。
それはいいとして、フルレングスとしてはこれがデビューアルバムということで音楽性も固まってきた頃なのか基本チェンバーポップ系インディにちょっとだけスロウコアとジャズの雰囲気が入ってる感じのやつ。なんだか暗めだし、ああなるほどロンドンか…これがUSだとこうはならんだろなという部分があるがそのダークさが今作ではまぁ良い方に作用してる。この場合バイオリンじゃなくてヴィオラとチェロなのがいいんだろな。曲名も人間の屑(いわゆる定番のメタファーではなく、物理的に字義通りの方で)だとか辛気臭いと思ったら最後の最後で次の駅は火星です!とか言い出すからよくわからない。
別に全編においてメロディやアレンジが暗黒な訳ではないし、朗らかなフォークロックみたいな趣も部分的にはある。ボーカルが若干外し系の男女ツインなのに弦楽隊は端正な響きで、ポエトリーリーディングまで入ってきたりと結構ミスマッチの妙だったり色々と忙しいが纏まりはあり、全体的なサウンドの強度は確か。今後も面白く進化しそうですが、絶対に面倒臭い人たちでしょうから深入りしたくないタイプ。褒めてます。


English Teacher – This Could Be Texas (LP)

前からある曲のセルフカバーと言うか、ものの1〜2年でのリヴィジョンなんだから再録バージョンの方が適切か…なM-2がかなりスーパー楽曲でデビューアルバムはどんなんなるやろと少し期待していたUKのハイプ系(この時点でかなりマイナスなバイアスがかかるのは仕方なし)バンド。
例の曲を超えるトラックはないが結論から言うとそんな悪くはない。でもまず13曲も要らないし、この手の悪い癖というか微妙な曲入れるくらいやったらいっそ省けと。でも作ってる側からするともう完パケ音源出来てしまってる分に関してはLP二枚組にならんレベルで曲増やそうがそんなコスト変わらんし、入れちゃおうってなるのはまあわかるけどね。
サウンドの方はまあ昨今のポストパンクブームとBC,NRブレイク以降の雰囲気を存分に盛り込みつつ、もうちょっとオーセンティックなUKロックに間口を広くしたタイプの音楽性。あまりオリジナリティはなく、UKの若い子達がここ10年前後のUKのバンドを専ら参考にしてやってるバンドって感じです。おっと思う瞬間もあるにはあるが、さすがにもう少し絞った方が良いというか曲数多いのもあるけど、全体的にちょっと散漫な仕上がりなので今後はある程度フォーカスしてって欲しいかな。
シンガーが見た目とかの雰囲気込みで中々の逸材だと思うし、個人的にはスローめ、メロウめの楽曲の方が際立つ感じがします。なんと言ってもやっぱM-2と、先行切ってた時も紹介したクローザーM-13がスタンドアウト。

M-2

M-13


Still House Plants – if I don’t make it, I love u (LP)

これね、まず悪いこと言わないから今すぐ気の合うベースを見つけてきてなんとか加入してもらえよ、サポートでもいいから。この音楽性でベースが入ってない事のメリットがマジで何ひとつ無い、損しかしてないし絶対に要るだろ。
いや、これが完全にインストだとか歌の比重もっと限りなく少ないんだっていうのならわかる。確かに楽器隊の演奏は実にマスロック系ジャジー・ポストロックのテイストで、この手のインストものだとギターとドラムのデュオっていう編成は実に多い。でもさ、あんたらめちゃくちゃ歌うやん。それも若干ソウル系入ってるガチめのシンガーときたもんで、重く太めのボーカルが上で躍ってるのにギターの奴もジャズっぽいフレーズ弾いてる時ですら音作りに関しては尖りまくったポストパンクサウンド(Gang of Four路線)で低音薄めの時が多いと、足場がスカスカになる要素てんこ盛りで聴いてて不安。いやいや、そこがアヴァンなんです!と言われたらもう何も申し上げることはございませんが…。
まじでベースのトラックをミュートしたままバウンスしてしまったとしか思えない音場。だって楽曲もアンサンブルも普通に良いしギター君の人力グリッチ的なテクニカルプレイ(何かグラニュラー系のディレイ使ってると思われ)も見どころいっぱいで、勿体ないんですよね。今この録音この音源にただ全編ベースを後付けで加えるだけでもそのまま成立しそう。とりあえず聴いてみてくれよ、本当に。