メルボルン発、現在はロンドン拠点なのか二拠点なのか、まぁそんな感じのDJ・トラックメイカーであるプリティ・ガールの単発ニューシングルがビデオ公開。
コンサバ度ギリギリのラインではありますが、一時のKOMPAKT周辺、Gui BorattoやThe Fieldあたりのちょっとだけミニマルなハウスにサンプリング~エディット系ではない本人による綺麗なボーカルが入ったスタイルで、清涼感と硬質なスタイリッシュさが同居した非常にソリッドな仕上がり。
こういうサウンドは男のボーカルが基本ハマらないので、プロデューサー本人が自らがっつり歌うパターンって女性作家でしか基本無く、ある種の特権であり音楽性も込みでの同スタイルとしてはKelly Lee Owensあたりに近いけど、こちらの方がいわゆるクラブ・バンガー寄りのラインで過去作には下手したらEDM疑惑かかってくるさじ加減のものも散見されますが、今回くらいの調整はベスト。
そういや、初期のLaurel Haloも歌ってたからそのままやってればこの路線をもっと知的にした系統に近かった可能性があって、個人的にはそれを期待してたんだけどパタリと歌わなくなっちゃったね。
Westside Cowboy – I’ve Never Met Anyone I Thought I Could Really Love
マンチェスターのニューバンド、ウェストサイド・カウボーイがデビューシングルをリリース。
いきなしEnglish Teacherのギタリストがプロデュースということでメディア露出も多く、かなりハイプ的な登場ではありますが音楽性は割とシンプルな部類で、エモのフィーリングが入った男女ツインボーカルのインディロック。
グシャグシャにとっ散らかしながらぶっきらぼうな愛を歌う、どちらかというとUSに多くありがちなスタイルながら、ストレートな楽曲タイトルのメインフレーズが胸を打つ、勢いの良さと整理されたような印象が同居したトラックでなかなかに訴求力あります。今後の楽曲にも期待。
Uncle Quentin – MISSING
オーストラリアはメルボルンのアーティスト、アンクル・クエンティンが12月にリリースする新作アルバム(ミックステープ扱い)から二つ目となる先行曲をビデオ公開。
ちょっとサンプリング系のトラックに歌心タップリのキャッチーな歌唱が乗っかってるタイプで、この曲に関してはTV Girlとかの路線に近いかな。過去作はもっとスカムなhip-hop/beats系統のサウンドだったりと、こんなにキャッチーなのは初めてなのかもしれないけど、とにかくすごくイイ歌だね。プロジェクト自体がクィアのテーマに結構振り切ってる感じで少し気になるけど、あまりこねくり回さずシンプルにもっと歌モノを開拓していって欲しいな。Melted Ice Creamもホント素敵なレーベルですね。
今週のLP/EPフルリリース
Former Champ – Vol. 2 (EP)
先行曲のM-1を聴くまでは完全にノーマークでした、スコットランド/アイルランド混合バンド。今年2枚目のEP、年に2枚EP出すならフルアルバム1枚にしろよと思うけど、中々そう上手くいかないもんなのかもね。
これ、本人らはタグでパワーポップを自称してるけどそこには正直半分も納得できない、なんというかギターポップ化した女性ボーカルの初期The Strokesみたいな音楽になってます。悪くない意味で中途半端にロックなんだど全体的に軽い、アレンジがひたすら軽いというよりかは音作り・ミックスが妙にエアリーでおしゃれにまとめてある、全然ガツンと来ないサウンド。これは意図してなのか…?5人も居るバンドでこのサウンドかい!というのがなんだか面白くて、ギターの2人それぞれに特色が薄く片方のやつはテキトーに刻んでばっかりいるし、3ピースでも不思議じゃない音圧。
でも、一番の特徴はやはりこのボーカルかな。ヘタウマ系の上に楽器を一切触らないピンボーカル。でも確かに何か魅力的な声で、クールとコケティッシュどちらにも行ける若干ウィスパーぎみの低音女声がトラックの雰囲気と非常にマッチし、決してダウナーではないんだけどイイ感じの翳りがプラスされ芸術点アップ。もっと長尺で聴いてみたいです、LPぜひ。
Speakers Corner Quartet – Mr Loverman (Original Score)
シーズン1が終わったばかりの小説が原作の連ドラOST…って映画じゃなくてTVドラマの場合もオリジナル・サウンド・トラックって言うのだろうか厳密な定義は不明ながら、ともかくプロパーのスタジオ作にはカウントされないものでしょう。
とはいえ侮るなかれこの内容、先行で出ていたTirzahフィーチャーの楽曲も素晴らしかったですが全体的にもかなり聴きどころ豊富でアフロ成分とジャズ成分が微かに配合されたインストヒップホップからモダンなシンセアンビエント、ゲストボーカル入りの楽曲も装飾過多にならず流麗な仕上がりで要所を押さえるスパイスに。それでいていい具合に気が抜けていて作り込まれていないので緊張感もほどほどに、土台BGMなんだから当たり前ですが店舗BGM適正などの高いナイスミュージック。
オリジナル前作は全曲にゲストボーカル有りのガッツリ楽曲集だったので少しお腹いっぱい感がありましたが、そこが事故的に解消されており、サントラという性質上、カラーは統一させながらも楽曲のバリーエンション豊かにどんどんページを進行させていくという構成がバンドの元々の雑多なサウンド指向性と劇的にマッチし、逆に作品のインテンシィティを高めるいち要因になってるという稀有なパターンの作品です。