GVVC Weekly – Week 70

White Reaper – Might Be Right (Jimmy Kimmel)

ホワイト・リーパーがジミー・キメルに出演し、今年リリースした新作アルバムから
リードトラックを披露です。この曲、持ち前の野郎ガレージ感が程々に丸くなってて
より幅広くアプローチ出来そうないい路線だなと思ってましたが、音源よりさらに
磨きがかかってます。明らかにライブが強いバンドでしょうし、演ってるとどんどん
進化しますよね。なんというか、ストリート系で溌溂としたパワー・ポップなんですが
性急さが抑えられててパンクキッズが大人になったような、ちょっと懐の広さを感じる
テイストなんですよね。ボーカルのお兄さん相変わらずムショ上がり風で怖いですし
ヤンチャさは残ってるのですが、ギターソロもギリギリのところで気持ちいいです。


Huevos II – My Time Is Gone

西マサチューセッツのウェヴォス2が来年リリースするデビューEPからの先行曲です。
陽の光と緑を強く感じる、オーセンティックな90’sのUSインディロックという感じで、
ブリットポップやオージーバンドの雰囲気もあり、ヒッピー、ソフトサイケ、片田舎と
そのどれもに振れ過ぎない、いい意味で中庸な塩梅。本当に何の変哲もない佇まいで、
でも不思議と繰り返し聴きたくなる何かがある。もの凄く検索しにくいバンド名だね。


Sophie Jamieson – Wine

ソフィー・ジェイミーソンの新曲が公開されました。
実にシンプルな作りで、バッキングとも言えないレベルの簡っ単なコード感と
軽いビートだけのトラックに、ちょっと抑うつ的な独白っていう感じの歌唱でして、
ある女性の、日々の生活とその感情の錆がそのまま音楽になったようなリアルさ。
本人曰く、「誰かに求められたい、愛されたいがあまりに本当の自分を隠して
他人に求められるがままの役割を演じるのって、往々にしていい結果を生まない」と。


Baker Grace – Like You

ニュージャージーのティーン、ベイカー・グレイスが新曲を公開しました。
この甘くて舌ったらずなボーカルはグレゴリー・アンド・ザ・ホークを彷彿とさせ、
ハンドメイド感あふれる宅録トラックは暖かく、精神的に脆そうな、でも何か
向こう見ずな好奇心みたいなものも感じさせる楽曲です。如何にも10代のDIY作品
って感じで、真心を感じますね。今回は可愛い目のインディポップに仕上がったけど
一つ前に出してた曲はR&Bっぽい曲調で、全然違うの。定まってない感じもいい。


James Blake: I’ll Come Too (Jimmy Fallon)

ジェイムズ・ブレイクがジミー・ファロンに出演し、弦楽隊を率いて
直近作からの楽曲をライブ。シンセもピアノも弾かず、珍しくスタンディング歌唱で
オケも、最低限のミニマルなビート以外は全てストリングスで構成されています。
すごい良くないですか?好みの問題ですけど、個人的にはこの人にはこういった路線を
求めているんです。Feistやジョニ・ミッチェルのカヴァーとかの感じが一番輝いて
見えたし、なんかもっと室内楽系でもいいから、エレクトロニクスはニュアンスだけに
とどめて、音楽性はオーガニックに進んで欲しい。ピアノも上手いし声もいいんだしさ。


・2月にノックスヴィルの店舗でミニライブが開催された時も話題になりましたが、
今度は17歳のプロモーターがサンタアナのWendy’sでメタルコアのライブを企画し、
敢行したらしく大盛り上がり。で、店内のイスやテーブルなんかに与えた損害賠償で
1,000ドル店に請求されたのを、クラウドファンディングでお釣りが出る程集めて対処。
巨大資本、エスタブリッシュメント、チェーン店に支配された街への抵抗として
これは本当に面白いと試みというか、真にインディ・パンクな出来事として賞賛すべき。
ただ日本で普通にファミレスを会場としてのバンドライブのブッキングなぞ、そもそも
できるわけがなく、向こうでも難しいはずだが、許可したウェンディーズ側の責任者が
はじめから確信犯のレジスタンスなのか、ガバガバすぎて適当にOK出した事故なのか、
実現に至る背景が気になるところだね。しかし、これ観ると実効支配こそが最重要で
真に価値があるという事を思い知らされるよ。満額弁償してるわけだし何も問題ない。

・Yeasayerが解散を発表しました。かなり息が長かったですし、15年くらいですか?
ブルックリン系のバンド、って言ってそのハシリというか、アニコレ、ダープロっていう
ラインと同期ですよね。決して大ブレイクはしませんでしたけど、堅実に活動を続けてて、
オリジナルメンバー欠けてないのもすごいというか、クリエイティヴィティが誰か一人に
集中していたわけではなく、本当の意味での”バンド”ってことです。
Ambling Alpが一番のヒットソングだとは思いますが、その後はあまり色気を出し過ぎず
音楽性がチャラくなる事もなく、でもプロとして継続できるようなバランスに苦心しつつ
自分らのスタイルを探求してた感じで、とにかく印象がいい。

Yeasayer- Sunrise(最初期)

最初期はトライバルな雰囲気が強く、ポップなGANG GANG DANCEみたいでしたが
2ndからは基本サイケデリックで、どこかミュータント感のあるサウンド装飾と、
キャッチーな歌メロは少しR&B・モータウン・80’sポップスがかっているといった
光学迷彩民族音楽ポストストレンジポップみたいなイメージでしたね。

Yeasayer – Ambling Alp(代表曲:2nd時)

ライブを一度観たことがあって、以前もどこかで書いた気がするけど
所謂アートロック系の、少しスノビズムのある、雑多な音楽性でやや難解なアレンジなのに
歌のメロディはポップス準拠で、エレクトロニクスをフレーヴァー程度に使用っていう
ブルックリンインディのあの様式をどこまでもプロフェッショナルに表現した演奏で
感銘を受けたというか、”NY都市部USインディ仕事人”だった。真の意味でね。
楽器の演奏力もだけど、サンプラーやパッド含む編成の扱い、テクニカルな立ち回りが
本当に上手かったんです。これはBraidsのライブ観た時とも結構近いような感想でして、
ローファイとか、ガレージに立脚した、手作りでガタガタの身近なインディじゃなくて、
プロのロックバンドという佇まいでありつつ、決してメインストリームのロックには
収斂していかない凛としたアート性があった。つまりインディというよりオルタナティブ。

Yeasayer – Full Performance (Live on KEXP:2016)

ちょっと最初が基本のイメージよりもかなり爽やか目に振った楽曲から始まるけど、
このKEXPのスタジオライブすごくいいですよ。Sunriseも演ってる。

Yeasayer – Erotic Reruns(LP:今年リリースの最新アルバム)

代表曲の一節を訳して締めます。

“若者よ 確かに俺は完璧な人間ではなかったし 出来ると分かっていた事もしなかった
だが 腕にタトゥーを掘るか 指に焼印を入れるほどの何かを
一つ学んだとしたら こういう事だろう
息子よ 自分を貫き通しなさい 他人のした事は気にするな - Ambling Alp”

Yeasayer、お疲れ様でした。

・年末進行に入りますので来週から2週はWeeklyの更新は無しにするかもしれません。
その場合でも、コラム系など何かしらの記事は出す予定ではいます。
週中に出ましたこちらの三者鼎談もまだの方は是非、補足記事と併せてお読みください!