Teen Runnings – Hot Air


Teen Runnings待望のニューアルバム、”Hot Air“が本日7/24にリリースとなりました!
レーベルは当然、自身によるSauna Coolからで、今回はCD・サブスクでのリリース。
カナダでの経験も還元された5年ぶりの新作フルレングスということで、レビューします。

作者本人が「変なアルバム」と公言して憚らない今作は、全体的に90’s感の強い仕上がり。
一般的な意味でのねじれポップというのとは違う、一筋縄ではいかないチグハグさの中に
燦めく甘~いコーラスが大量に詰め込まれた異形のアイスクリームみたいなアルバムです。

何ってまず、楽曲の構成は一切ねじれてない。随所に小技はきいてるにしろね、基本的には
ストレートなポップスの体を成してるし、最大の特徴であるエヴァー・グリーンな歌メロは
相変わらず目の覚めるような即効性を持ってて、悉くクリアに突き抜けています。でも…、

確かに強く夏を感じさせるビーチポップ、サマー・アンセム然としたメロディなんだけども、
以前「PCの前に座った脳内の夏」と表現したように、どこか空虚で、さみしさも湛えてる。
楽しくてカワイイお歌なんですけど明確に「翳り」があって、それが全体のトーンをかなり
決定付けてます。それでも、歌われている内容は色々と抱えながも未来志向で前向きなもの。

『きみは新しい感覚を得て、ちょっと前より一皮むけた。Why not?』 - Hair Wax 95

この曲のデモが2017年の春に公開された時、誰もがこのバンドの新章を感じた事でしょう。
直線的な8ビートによる疾走感を捨て、裏拍強化のチャカポコ16ビートによる夏のタコ踊り!
そんな衝撃的オープニングトラックに引っ張られ、次々とレゲエ風やグランド・ビートなど
リズムコンシャスな3分間ダンスポップがおもちゃ箱のように飛び出す、歯切れの良い展開。

ギターバンド編成でなくなったことにより、宅録ベッドルーム作品といった趣が強いですが
それでも、ギターとベースのリードにより紡ぎ出されるバンド音楽であるのには変わりない。
アルバム全体を通し、相当練り上げられていると思われるベースのフレージングが光ります。

リズムトラックは特に、元来チープなビート・音源を使い、後のエンジニアリングによって
それを限界までリッチな鳴りに仕上げた…というようなサウンドで、ちょっと他にない質感。
一聴すると安っぽいと形容されがちな音色が多く鳴っているようで、その実むしろ煌びやか。

Andy Pantsによるカバーアートやミュージシャン本人の制作よるミュージックビデオなど、
神戸で展開する実店舗、サウナクール・ミニとも共通するブレないヴィジュアルイメージは
ヴェイパー・ウェイヴ的な世界観の影響というのが切り離せない所ではありますが、昨今の
ハイパー化した極彩色サイバートロピカルなソレほど鋭利でなく、マイルドなチューニング。
つまりここにいるピンクのイルカは、ショッキングピンクではなくパステルピンクなのです。

楽曲単位での個人的なイチオシをひとつ挙げるとするならば、ビデオも公開されたこちら。

Teen Runnings – Baby G (Official Video)

M-9の”Baby G”は、エモコアのバンドが変わり種でリリースしたインチキ似非レゲエ楽曲を
ペイヴメントやヴァンパイア・ウィークエンド的な洒脱感でナードに宅録カバーしたような、
フェイクにフェイクで回答する癇癪持ちトロピカルの雰囲気がものすごくポップで文化的で、
世界広しといえどここにしか存在しない、完全にオリジナルなカウンター・カルチャーです。
特にコーラスの部分における言葉数の多い字余り的な高速フロウに合わせ、『スネアが倍』
になるギミックの加速感が本当に気持ち良くて、ありふれた手法ではありますがハマってる。


Teen Runnings – My Car (Demo) ※これは今作アルバムの音源ではありません

一方デモ段階から公開されていたM-8 “My Car”は完全にTeenage Fanclubが憑依していて、
今までのティーン・ランニングズのイメージに対して最も近いサウンドを保持していますが
それでも、直線的なメロディックパンク感は無いので、あくまでもパワーポップ止まりです。
完全なギターバンドのエレメントのみで構成されているため、制作時期の違いも感じますね。
暖かい風が吹く緑の溢れる屋外で、皆で横揺れして聴きたい出色のグッドメロディ。愛です。

Teen Runnings – New Power (Official Audio)

ライブで聴いたら一発で覚えた必殺の”オエオエオー”が空高く舞い上がるM-2 “New Power”
も間違いなくハイライトのひとつでしょう。どこかで聞いたようなイントロのベースも乙で、
夏日の下の聴衆の手にはサイリウムではなく、スイカバーないしガリガリ君なのであります。

以上、
Teen Runningsの過去作と、Sauna Coolの諸作、そしてサウナクール・ミニ…その全てが
マスターマインド・金子くんにより再還元され、完全なピースとして結実したこの新作LP
“Hot Air”。
隅々に至るまでトータルイメージに完璧なコントロールが施された、『謹製』という言葉が
似つかわしい、これこそがアルバムを作るという事なのだと思わせられる傑作タイトルです。

AVYSS magazineでロングインタビューも公開されていますので、併せてどうぞ。

さて最後に、リリース記念のパーティも例によって企画されておりますよ!以下詳細。


『TEEN RUNNINGS “HOT AIR” RELEASE PARTY』
2019年9月15日(日) 18:00〜
東京・幡ヶ谷Forestlimit
ADV. ¥2,300 / DOOR ¥2,800 (各1D代込み)
出演:
Teen Runnings
Super VHS
pool$ide

専用の予約フォームも用意がありますので、そちらから予約の上、全員集合でお願いします。
先着80名で締め切りとのことですので、お早めに!