GVVC Weekly – Week 122

Xiu Xiu – A Bottle of Rum

シュシュが3月にリリースする新作アルバムは大量の豪華ゲストが参加しているようですが
最初の先行曲に選ばれたこちらはなんとGrouperのリズをフィーチャー。しかしながら、
この組み合わせは初ではなく15年くらい前のEPで一度連名作を出してます。とはいえ今回
かなり朗らかな、Xiu Xiuの中では滅多にないくらい明るく開放的なサウンドになっており
趣はその時と全然違いますね。正直Xiu Xiuの猥雑でエクスペリメンタル過ぎるSM趣味とか
あの辺は全く好みじゃないので、こういう路線が一番ジェイミーさんに求めているもので、
個人的には今回のアルバムはすごく楽しみ。シャロンヴァンエッテンにオーウェンパレット
さらにはツインシャドウ、チェルシーウルフにCircuit Des Yeux辺りまで参加してるみたい。


Esther Rose – How Many Times (Official Music Video)

ニューオーリンズのSSWエスター・ローズの新作アルバムから、タイトルトラックが公開。
少しだけカントリーも入ったオールディーズポップ・フォーク的な楽曲で凄い時代錯誤感。
かなりそういう要素が満載なのにそこまではイナタくないのがいいですよね、歌唱も割と
この路線の中では抑えが効いており、個人的にギリギリではありますが範疇に収まってる。
正直終盤の盛り上げとかはエンジェル・オルセンが歌っててもわからない感じというか、
彼女のオリジナルと思っちゃうような感じで、この手をこういう調整にすると似ちゃうよ。
ちな昨年歌手デビューしたユアン・マクレガーの次女もエスター・ローズっていうらしい。


Anna Fox Rochinski – Cherry (Official Music Video)

QUILTの紅一点アンナさんがソロデビューLPをDon Giovanniからリリース、そちらから
最初の先行曲がビデオで公開となりました。QUILTのlate 60sサイケの感覚からはかなり
離れたサウンド、ギターは相変わらずああ彼女ですねという感じですがこの音楽やるなら
どう考えてもドラムはバキバキに生の方が良くて、ちょっとなあという落とし所ではある。
でも中期ベック感とか中途半端に80sポップぽさもあり、要素としては中々面白いかなと。
まあ如何せんまだ確立されてないというかこの段階のもん出されてもな〜という状態です、
今後いい感じに仕上がっていくと良くなりそうなので注視ですね。早くフルバンド化して。


Sophia Kennedy – Cat On My Tongue

ドイツのSSWだけど名前がアメリカ系と思ったらボルチモア出身ソフィア・ケネディさん、
City Slangからリリースの2ndアルバムより先行曲を公開です。この人の折衷サウンドって
結構面白くて、トラックがまず軽くHip-Hop、というかコラージュ・サンプリングベースの
ループもので90’sフィーリングがあり、ビジュアルイメージはキッチュ系なんだけど声がね
結構シックな歌唱だったりして決してR&Bではない。んでかつ、どっかトチ狂ったような、
頭のネジ外れかかっとる人を食った感があってムズムズしてくる。この曲リリーアレンぽい。


Desire – Zeros

1stアルバムからもう12年目、細かい楽曲達のリリースはあるものの、なかなかまとまった
作品のアナウンスがないディザイア、昨年夏に”Escape”ってLPが出てるはずだったんだけど
IDIBのお家芸、出す出す詐欺により何時の間にか無かった事に。でも。新曲はしれっと出し
続けるところまでが様式美。もう誰も気にしてないというか、真に受けてないからあんまり
話半分で聞いてたほうがいい。しかし今回の楽曲、1stに入っててもおかしくないイメージ
通りのサウンドで、この10年で出したトラックの中でも一番良いかな。このスカスカ感と、
夜の静寂、妖しさにフィルム・ノワールとかすかなロマンティックが芸術点高いポップです。


Juliana Hatfield – Mouthful of Blood

ここ数年まるまるカバーアルバムを出したり、オリジナル新作も出したりと忙しくしている
ジュリアナ・ハットフィールドが5月にリリースするオリジナル新作LPからの先行トラック。
この人は本当に変わらないね。老練になっていくのもいいけど、25の時と50の時やってる
音楽ほとんど同じってまじで格好いいし、ある意味理想形だよ。この曲は特に軽い感じで、
へっぽこインディとも言えるようなサウンドはまさか50のおばさんがやってるとは思わん。
この手の女性ボーカルダブルはどうしても彼女の専売特許な気がする。酷えカバーアート笑


Fontaines D.C.: A Hero’s Death (Jimmy Fallon)

コロナ禍からこっち、スタジオライブがリモートになって結果的に面白ライブ映像が多出
しておりますが、また出ました。これはどういう事なんだ?どういう状況なんでしょうか?
こんな箱ありえんのか?無観客だからこそできるって事なんでしょうか。なんか格好いい。

今週のLP/EPフルリリース

Arlo Parks – Collapsed in Sunbeams (LP)

先行曲がちょいちょい良くて期待してた。予想よりも更に全体として完成度、クオリティが
高い。フルレングスはこれが1stだよね?なんか凄みすら感じるんだけどハタチ位でしょ…。
おまけにサウンドも非常に優等生的なやつで、意味不明な歪さとかもない。音楽性も本気の
ソウルよりめっちゃインディフレンドリーではあるけど目新しさはないスマートな合いの子
サウンド。だからまあ、つまらない音楽とも言えるし、何を求めてこのレコードを聴くのか
というところは結構なぞ。普通にいいし、流しとく分には問題ないけどね。つまりそれって
間口が広いわけでビッグにはなるかも。M-4とM-5がハイライト。音楽性にもう一癖欲しい。


Goat Girl – On All Fours (LP)

何ですかこれは…めちゃめちゃいいですね。なんかイメージと違ってて、前はもっと猥雑で
グシャっとした音像のサイケ・ガレージ風味が効いていた気がするのですが、今回は何だか
ウェット感強めで下手したらしっとり系の宅録インディポップみたいな風情というか、甘い。
しかし、ドリーム系な淡い生ぬるさではなく味がめちゃ濃い外国のお菓子みたいなクドさが
ある。そしてガツっと行く所は要所要所で完全にバンドのダイナミズムでして、気持ちいい。
ちょっとキッチュなマジカル電波感は明確に特徴であろうポイントで、そこは継続しており、
不思議な魅力のあるごった煮雑食サウンドになってて深みが増してますね。今がベストかな。


The Notwist – Vertigo Days (LP)

今ほどインターネットが世界の絶対的なルーラーではなかった時代から謎に日本でも認知度
高く、lali punaの存在がでかいと思うがmorr music一派の流れなんかもあり存在感あった
マーカスさん。このNotwistが本体バンドだと認識してますが、初期はハードコアパンク系
だったっていうのも有名な語り草で、音が結構変わってくのは知ってる。”Neon Golden”は
確実に金字塔で歴史的名盤と言ってもいい。んで、今の感じはというと全部の中間点に位置
しながら、少し散漫でややエクスペリメンタルな構成をとった内容でつまりあまり良くない。
間口が広すぎるのが悪く出てる感じで、専門のバンドまでやってた電子音響フリージャズは
当然ながらクラウトにシューゲイズまであるもんで、オマケに14曲は長いよね。M-4とかは
往年のポップさにまとまってていいし、点では沢山聴き所あるのですが。一時期やっていた
ボソボソ歌いが映えるアコースティック系メインの路線をまた聴かせて欲しい。しかし20年
どころか30年選手。フアナ・モリーナが客演してるのがなんか00年代前半感があっていい。