GVVC Weekly – Week 132

Andy Stott – ‘Hard To Tell’

アンディ・ストットの久々となる新作フルレングス2LPから、これで2つ目の先行曲ビデオ。
今回も引き続きボーカルトラックで、近年作の流れからするとかなり路線を変えてきたなと
思うんですけど、個人的に大歓迎。メンバーじゃないけどもボーカルはいつも同じ人に頼む
ってイメージがブレなくてすごくいいなと感じる。もうスローコアとも言えるような異様な
音世界になってるけど、ドラム周りの鳴りとかが有機的な歪感のある太さをしていて明確に
彼だなっていうシグネチャーになってますね。ほんと芸術点高く、これくらいなら臆面なく
アーティストって自称していいよね。これクリック・ミニマルやグライムガチ勢は嫌じゃあ
ないのかな?ダイナミクスが完全にロックなんでLowの楽曲のリミックスみたいな趣ですね。

Phantom Handshakes – Skin (Official Video)

Z Tapesがリリースするファントム・ハンドシェイクスの新作アルバムからお次の先行曲が
ビデオで登場。このサウンドなので当然ですがセルフレコーディング・セルフミックスです。
あの頃のローファイ・チルウェイヴサウンドをほとんどそのまんまやっているとも言えるが
バレアリックかプレ・ヴェイパーウェイヴっていう要素・ニュアンスがあったオリジナルの
それらよりもっとストレートに宅録インディポップに最適化されたような風情になってます。
ある意味毒にも薬にもならなくなったとも考えられるんですが、インディポップやネオアコ
ってそういうものですからね。そのチルウェイヴ音響版てのが型としてスタンダート化した
と思うとなんかいいなと。全然大した音楽じゃないけど、どこかちょっと愛らしい雰囲気で
終盤の慎ましい盛り上げもグッドです。この構成で4分あったらキレるが3分未満なのでOK。

Remember Sports – Out Loud (Official Audio)

リメンバー・スポーツが再来週リリースする新作アルバムより新たな先行曲を公開しました。
スポーツがつくバンドがなんかここんとこ多くて、UKのアレが全っ然好きじゃないもんで、
この人達も混同しそうになるんだけど、こっちのバンドはもともと好きなんだったわ。確か
はじめはただのSPORTSだった気がするんだが改名したよね。少しだけエモなパンクって
一時流行って(今も?)その流れの、今多いガチのエモバンド風情ベースじゃなくショボい
方面担当みたいな感じだったが、今回の楽曲はしっとりめ6分半、変な話シェリル・クロウ
みたいにすら感じるようなエレアコジャカジャカの微センチメンタルなUS・SSWポップで
オーセンティックな風情だしボーカルが結構めんどくさ系の歌唱だから、上手くハマってる。
しかし、昔はバンドでSportsって言ったらSportsguitarか伊藤さんのSportsだったのにな。

AUDREY NUNA – Space (Official Video)

韓国系USラッパー、R&Bシンガーのオードリー・ヌナが今年初となる新曲をリリースです。
今回はラップが完全封印、そしてトラックもかつてないほどダウンテンポになっていまして
まあだからこそウチで紹介しているんですけど、この路線が好物なので。確かに、元々から
少しスペースを大きくとったサウンドの印象はあったけど、ROCネイションとか88Rising
界隈の音でしかないって感じだし、今回も基本的にそこから外れたかというとそうじゃない。
でもこれは東アジア特有のちょっと鬱陶しくて湿った感傷的なムードを上手く昇華していて
すごく聴きやすいアブストラクトなオルタナR&Bバラッド。もっと曖昧でもいいんだけど。

DARKSIDE – The Limit

あのニコラス・ジャーとデイヴ・ハリントンによるユニット、ダークサイドが新作アルバム
リリースを発表し先行曲を公開です。昨年末に公開していた楽曲も収録されるので、これが
結果的に二つ目になります。一回きりのプロジェクトっぽさがあったけど、久々にプロパー
新作とのことで成る程また良いのね。エレクトロニクス多用したインプロバンドって感じの
トラックで、前作よりも身体的なサウンドに聴こえる。基本全てジャムって発展させていく
音楽でしかないのは間違いないんだけど、音のクオリティが高すぎて佇まいに貫禄あるの。
軸しっかりビート保ちつつ細かい表層のテクスチャーが霧散したアブストラクト感を付与し
全体像を上手く馴染ませてる。終盤パートはトライバルを全抜きしたGANG GANG DANCE
みたいな事になってまして、電化フリージャズ具合もほんの触り程度の軽めでちょうどいい。

Japanese Breakfast – Posing In Bondage (Official Video)

ジャパニーズ・ブレックファストが6月にリリースする新作アルバムより2つ目の先行曲です。
リバーブ増し増しでスケールの大きいシンセウェーブ・インディロックバラッドを展開してて
成る程そう来たかというサウンド。今までの感じと立ち位置の変遷込みでこの打ち出し方は
メディア受け必至でしょうね。前の曲も加味してLPは絶対各所で年間ベスト入りするハズ。
個人的には何度も言ってるけど最初の路線をそのままブラッシュアップしたのが希望だった
わけなんで、正直そんなに好きでは無いし何ならLittle Big Leagueの感じまたやってくれ位。
後ね、ビデオ狙い過ぎなんだよ。普通にシンプルな映像美のものだったらもっと評価した。

Doja Cat – Kiss Me More (Official Video) ft. SZA

ドジャ・キャットのシザをフィーチャーした新曲です。年に数回のメインストリームポップ
ラジオヒット枠としての紹介。貫禄のキャッチーぶりで凄いね。音もメチャクチャイいいし、
もうここまでされるとあっぱれすぎて手放しで楽しめます。今までで一番純粋にスウィート
なんじゃない?SZA参加が大きいのかな、いつもこんな感じなら本当最高に好みなんだけど
急にサグいトラックあったりするからLPは通して聴いてられない。あとビデオは途中で急に
映像の展開に合わせたSEカットインすんのやめて欲しいんだよな。元々はリッピングの対策
として導入され始めたモノだったと思うんだけど、いつの間にか様式として定着してて嫌だ。

日本のリリース

Barbican Estate – The Innocent One [Official Video]

バービカン・エステイトが昨年末に発表していた三部作シングル・シリーズ、最後の一曲に
新しくミュージクビデオが公開となりました。逆回転から始まるアシッドフォーク・サイケ
チューンがゆるやかに進む微オルタナ・メディテーショントラック。アーシーなのがいいね。
日本で正直ここまでやれるインテリアートロック・サイケで完全バンドサウンドって本当に
貴重だと思うし凄いよ。今の時点でも方向性は結構完成されてるからひたすら洗練させてく
だけでもオッケー。ラナデルレイのカバーやる感じとかも見せ方としていいスパイスだから
ダークウェイヴだとかポストパンクみたいな路線とは色々な意味で距離を取り続けて欲しい。
でもライブやるとして、自然と横に並べてブックできるようなバンドが他に全然居ないから
難しい所あると思うけどね。映像は若干タルコフスキー的な感じもする本人達出演フィルム。

今週のLP/EPフルリリース

SPIRIT OF THE BEEHIVE – ENTERTAINMENT, DEATH (LP)

このバンドほんと凄いな。前から好きだったし先行曲も紹介したし前作も年間ベストにまで
入れたけどさ、それ踏まえた上でもまだナメてたなと感じる。おみそれしました文句なし。
オルタナ・コラージュロックと言ったらいいのか、Blanche Blanche Blancheみたいなのが
ソニックユースと合体しましたみたいな音楽。エクスペリメンタルまでは行かないにしろ十分
狂っておりますが、ずっとエキセントリックなわけではなくすごく甘くまどろむ瞬間がある。
おまけにノスタルジックもあるしサイケデリックもあるよね。でもこの翳りはUSオルタナ、
間違いなく。前は曲毎に分散してた特色が1曲の中に纏められるようになった感じで、これで
完成したと思う。これ以上いじりようがない完璧なバランスで貫禄の仕上がり、オススメ。


Skullcrusher – Storm In Summer (EP)

うん、去年のEPよりも明らかにいい。とりまこの方向性で行って、1st後はもっとバンド化
するコースが安定じゃないのかな。ちょっとガチのヒッピーというかコミューンの人っぽさ
あるから、モダンに洗練されていく方向性があるのかわからないけど、SCの思惑にもよる。
ルックスがかなり目立つからそこ込みでエンジェル・オルセン級になり得るポテンシャルは
高いだろうし、実際最初のEPより今回の方がサウンドは明瞭に、より陽を感じるイメージに
なってるし、ボーカルがちと弱いのはダブルで力技の解決を図ってるとこ見ると、線の細さ
活かしてドリームフォークとかアンビエント方面ではなく売れに行ってるんだろうし、将来
もっと垢抜けて2,3枚目のフルレングスではごった煮ポップになってる悪夢も有り得るから
色気出すのは程々のとこにして欲しいが、半メジャーみたいなもんだし本人に裁量権は無い。