GVVC Weekly – Week 172

Alabaster DePlume – “Don’t Forget You’re Precious”

ロンドンのサキソフォニスト、コンポーザーのアラバスター・デプルーム新作アルバムから
先行曲のビデオです。明確に今週リリースのベストソングで、すごく面白い音楽性なのにも
関わらず趣はポップというかね…スピリチュアル・ジャジー・多国籍フォークロアみたいな
サウンドに、歌は完全にスポークンワード。でもメッセージは明確だしキャッチー、そして
耳馴染みのいい柔らかくも明瞭なミックス。それでビデオは風刺コメディタッチという衝撃。


Magdalena Bay – Secrets (Your Fire) (Live Performance)

昨年リリースされたマグダレナ・ベイのデビューアルバムから、GVVC年間ベストソング
5位に選出された楽曲のスタジオライブ・パフォーマンス映像が公開されました。フル生の
演奏ではなく同期バリバリのスタイルですので、そこは個人的にはちょっと残念なんですが
音源より臨場感は当然あります。ただ、なまじ曲がいいからマンマのアレンジで中途半端に
再現するより、いっそアコースティックとか、フル生で再現できる削ぎ落とし版に編曲して
ライブやった方がいいと思うよ。正直これだとライブ観に行きたいとはあまり思わないです。


Cassandra Jenkins – It’s You (Animal Collective & Vashti Bunyan Cover)

Under the Radarマガジンの20周年カバー企画で、カサンドラ・ジェンキンスが選んだのは
ヴァシュティ・バニヤンがボーカルで全面参加しているアニコレのEPという謎作品の楽曲!
流麗なハープに置き換えているものの楽曲構造は割と原曲に忠実なアレンジ。とはいえ流石、
サイケ味をミラーコーティングして抑制し、ガラス管のような線の細いキメ細やかな音像で
完全に自分の音楽に昇華しています。このオリジナルもう15年以上も前とはびっくりだね。


kathryn joseph – what is keeping you alive makes me want to kill them for (Official video)

グラスゴーのSSW、キャスリン・ジョセフガ4月に控えるニューアルバムのオープニング曲。
もはや蔑称となったいわゆる『サッドガール・インディ』のそれとは全然違う、あくまでも
ウェットで感傷的なサッドコア路線の音像は、エレピに鉄琴がこだまするドラムレスの世界。
目新しさはないですが、歌い込みやテーマが重いところを音像で軽くしているのが良いなと。
しかし、これ1曲面に持ってくるってその後どういう展開なんでしょう。曲名も凄くいいね。


Bodysync – Body (feat. Tinashe)

昨年お披露目されていたライアン・ヘムスワースとジラフェッジによる新ユニットがついに
デビューアルバムをアナウンス、先行楽曲のボーカルにはあのティナーシェを起用してます。
それでやってるのがあの当時を思い起こすようなビートメイカー然とした音楽では全くなく、
モダナイズしたハウス系のトラックで結構クラシックな趣もありつつ彼ららしい音色を付与
という雰囲気は超有名曲ホイッスルソングのテーマをオマージュしたような昨年の楽曲でも
感じさせていた方向性ではありますが、今回はむしろDisclosure路線のダンスになってます。


Divorce – Services (Official Music Video)

ノッティンガムのフェス、Hockley Hustleによる地元バンドのコンピ参加曲をきっかけに
誕生したDo NothingとMegatrainのメンバーらによるディヴォースが単独で新曲リリース。
正式な1stシングルとしてビデオ公開されたこちらは、初期のセントヴィンセント的な少し
おどけたアートロックに微グランジ、エキセントリックと気怠さの同居した演技派の一曲。
当然かもしれませんが両者バンドのまさに中間と感じさせるようなサウンドなのが面白い。


Nia Archives – Luv Like (Official Video)

ニア・アーカイヴズの新作EPから先行曲のビデオです。ほとんどの楽曲がこの路線ですが、
今回はビートとベースがドラムンというよりジャングル止まりかつギターも入ってるという
GVVCフレンドリー仕様でこれくらいなら聴けるのでピックアップ。こういう音楽を組む時、
軽さと抜け感は絶対に残して欲しいよね、いくらドラムンのビートが流行ってるとはいえど。
ヴェイパー通過のハイパーポップ流れがもつ香ばしさが無いってのは絶対条件、そこに今回
オーセンティックな趣が非常にプラスでジャミラ・ウッズがそのままジャングル化したよう。


New German Cinema – I Become Heavy

Fear of Menのジェシカがソロプロジェクト、ニュー・ジャーマン・シネマをスタートして
デビュー楽曲を公開。フィアオブメンは解散など一切なく次作制作中とのことで、その中で
そちらで発散できないものを消化する場としてのこちら、コールドウェイヴ系のダーク路線
ポストパンクを甘めに調整したようなサウンドでリバーブ深すぎ。まあよくあるやつですな。
正直、作り込みもザ・サイドプロジェクトって感じだしお披露目って事でご祝儀掲載ですが
この人のボーカルは本当好きで、本体バンドの時と全く同じ調子で歌ってるのはいいですね。

今週のLP/EPフルリリース

Partner Look – By The Book (LP)

先行のM-2が良くて少し期待してた。メルボルンに住むパキスタン系ドイツ人姉妹と二人の
パートナーの男性で全4人組バンドっていう編成。M-1はそのままバンド名を冠した楽曲で
狙いを感じる。まぁDIYインディポップっていう範疇だとは思うが、単に無邪気で可愛らしい
類のそれではなく、アートポップ然とした作為的な尖りというかひねくれが強く感じられる。
ただそのアウトプットは強烈じゃなくて非常にマイルド、ひとつひとつの尺もコンパクトで
テンポ良く聴き進められるしアレンジもシンプルな骨組みがベース、楽器も基本の3点セット
オンリー、ほぼシンセもなし。歌はもちろん下手ウマ。イメージは知的で洗練されているが
おどけた雰囲気もあって、その辺は脱臼しすぎて最早弛緩したポストパンクと呼びたくなる、
ギタポで片付けられない深さ。思ってたのより更に良かったのでこれは中々にオススメです。


Joy Guidry – Radical Acceptance (LP)

これね、完全にキワモノではあるんだけどちょっとひっかかった。フリージャズぽさのある
スピリチュアル・エクスペリメンタルという感じで、アンビエントと言うには主張が強いね。
全然ジャズ出てこないドローントラックと、スポークンワードに、アフロ・ジャズパンク的
狂乱で構成させれていて、全編通して流れありきの作品って感じですね。音像が格好良くて
かなり意思を感じるし、ポストパンクかポストハードコアが変容したものと言えるでしょう。
曲名も凄くイイ。カバーアートもこれ合ってないとも言うけどなんかわかるような気もする。