GVVC Weekly – Week 184

Queen of Jeans – Hiding In Place (Official Music Video)

クイーン・オブ・ジーンズが6月にリリースする新作EPから、オープニングトラックを公開。
一昨年くらいのアルバムがかなり良くて確かここでLPレビューもしたと思う。その頃から
基本的には変わっていなくてシンプルなSSWバンド風インディのサウンドですが、オルタナ
って感じはなくもう少し柔らかい、空間と息遣いがすごく意識された非常に趣のある音像に
ギターも実にシンプルな音作りながら妙に説得力ある鳴りと一筋縄でいかない歌の節回し。
音楽性と、ボーカルが少しめんどくさ系なところもOldsoulにちょっと近くて、あそこから
emoを抜いてフォーク寄りにした感じかな。更に良くなってると思うし、これは期待です。


GHUM – Deceiver

ロンドンのガムが6月にリリースするデビューアルバムから二つ目の先行曲を公開しました。
かなり直球なダーク・コールド・ゴス・ポストパンクのサウンドで、ひねったところのない
潔い音楽性ですが標準規格よりも比較的元気が良く勢いがあり、最初普通に英語だったのが
途中で突然スペ語になるんでビビるよね。でも音が完全にUK勢のソレなんで紛い物感はなく
只々、謎に熱いラテン系の疾走コールドウェイヴパンクという意味不明な音楽になっていて
面白いんじゃないですか?これたぶん全部の曲スペ語も織り交ぜてやったほうがいいと思う。
マクサヴァースカンと並べて聴きたい感じで、ポストパンクの炎と氷が備わり最強に見える。


Aluna & Jayda G – Mine O’ Mine (Official Full Stream)

アルーナとジェイダ・Gが唐突にコラボシングルをリリース、先ずヴィジュアライザーです。
あまり深く考えないで作ったような勢いのあるボーカルハウスはいかにも突発コラボらしく、
それぞれがキャラクターの異なる良いボーカルをした二人のデュエットがかなり派手に響く。
メインストリーム版のマリアミネルヴァ&チェルシーみたいな感じで軽さもありつつ本気の
キックが頭空っぽで踊るのに最適な、チャラ箱にも映える程の華やかさでハジケております。
アルーナが4つ打ちで思っ切り歌ってるってのもあんま記憶になく、そういう意味でもイイ。


Under the Reefs Orchestra – Sakurajima

ブリュッセルのスリーピース、アンダー・ザ・リーフズ・オーケストラが新曲をビデオ公開。
ギター、ドラムにバリトンですらないバスサクソフォンという普段リードっぽいことしつつ
都合のいい時だけベースになるというかギターと役割をスワップさせながら進んでいくのが
面白いですね。実にシネマティックで煙たいポストパンク・ジャムみたいなアンサンブルで、
ドラムくんがバキバキにロックなためジャズっぽさはほぼない。ギターの奴が結構モダンな
エフェクトも多用する技巧派でアンビエント感をプラスしてるのが全体像にかなり効いてて、
バランスがすごくいいバンド。穏やかでないコラージュの映像も音のイメージに合ってます。

今週のLP/EPフルリリース

Erica Eso – 192 (LP)

もう一聴してブルックリン周辺のバンドだよねとわかる洗練されたアートロックサウンドで、
自分は好物だから良いがそういうスノッブさが無理な人には厳しそうな「全振り」っぷり。
そこそこ複雑な構成と現音な旋律も使っちゃいます、でもパート毎の印象はポップって奴で、
パンクや脱構築的な方面からのアヴァンとか、マスロックみたいなものではなくより知的な
アカデミックな趣が強い、でもロックのアンサンブルっていうところでDirty Projectors風。
Kalbellsのアンジェリカが主力で参加しており、ほとんど常にツインボーカル状態って事は
つまりアンバーのポジション。ごちゃごちゃはしてないし、味付けは割とアッサリめなので
軽やかで、重苦しくなってないのがイイね。一曲選ぶなら一番さわやかでライトなM-2かな。


Mall Girl – Superstar (LP)

ボーカルや表層の音色は清涼感のある北欧ギターポップ、インディロック的な音してるのに
楽曲はそこからオルタナすっ飛ばしてマスロック方面の印象が強いテクニカルなフレーズを
乱発しギターもドラムも手数が多いが、ボトムが常に軽めなんで全体像は基本的にエアリー。
楽器隊がどれ程ガツガツ刻んでようとボーカルは常に平熱でしれっとしてるのが面白くって、
アレンジの振り幅が広く、フォーク、エモ、オルタナ、プログレ系ポストコアまで入ってる
驚異のレンジ。ノスタルジックな趣はあるが明確にドリームやシューゲイズ方面には行かず
あまりキラキラさせない、下手に甘めな路線に持ってかない意図が見え素晴らしくクール。
でもやっぱ選ぶなら一番シンプルにメロディの際立つM-5が好きだなと思うし、ほんの少し
暴れたい衝動を抑えて、よりソングオリエンテッドに、テクニカル加減が洗練されてくると
もっともっと良くなるはずで、これ1枚目なんだから末恐ろしいね。地元のレーベルだけど
もうこの段階でステップアップしてもおかしくない出来。一曲がコンパクトなのもいいです。
ジャケットもこれね、投げやりな感じもするけど正直、内容に合ってる納得感あって不思議。


Melody’s Echo Chamber – Emotional Eternal (LP)

最初に出てきた時の印象としてマーゴ・ガーヤンが壮大なプログレ・ネオサイケ化したもの
っていうのがずっとそのまま変わらず、純粋にブラッシュアップされここまで来てしまった。
クオリティって意味ではほんと素晴らしいしスキがない、土台部分の演奏が完全無欠過ぎて
スペーシーまでいくスケールのでかさ、荘厳さを保つのに凄く寄与してる。それでも全体は
いい具合にヌケ感もあるのはボーカルがほぼウィスパーだからなのと、たまに顔を出すこの
シャンソンっぽいメロディがベストなバランスで配合され、アンニュイになってるからかな。
初期は初期でTame Impalaのケヴィン・パーカーが全面バックアップしてたしこの人の音楽
カンペキに演出され、他人の手も入った状態のモノしか世に出てないわけで、一度くらいは
完全に本人単独で全てやった作品を聴いてみたいんだよなあ。ちょっともう今回でこの路線
これ以上ないくらいのオデッセイが完成したと思うから、次思い切って変えてきて欲しいな。