GVVC Weekly – Week 230

Luka Kuplowsky – The Spirits Are Busy

トロントのSSW、ルカ・カプロウスキーによる単発のニューシングルが公開。
近年作では瞑想的なアンビエント寄りに傾倒していましたが、ここへ来てそれより以前の作品との中間のような絶妙な塩梅のサウンドを提示してきました。
ラウンジー・クラブジャズと化したプリファブ・スプラウトのようなダブ・ポップのトラックで非常に洗練された面白い音像になってます。
いやらしさがなくインプロ的な雰囲気を加えながらも強烈にオシャレBGMとして機能させる全方位ハイソ音楽。


Water From Your Eyes – True Life

ウォーター・フロム・ユア・アイズが来月リリース予定のMatador移籍後としては初となる新作フルアルバムから二つ目の先行曲。
鋭いエクスペリメンタル・アートパンクの尖りを芸術性の純度はそのままに極力角をとってマイルドに研いだサウンドはある種レディオ・フレンドリーな3分半ポップス・オルタナロックにすら聴こえるというマジックが発現してる。
ブレイクパートで一瞬だけ不協和音を和らげ甘さすら見せる余裕、ちょっと本当に格好良くて、前作から一気にここまで間口広く開花するとは驚きの進化だね。


Bonny Doon – Let There Be Music

昨年ANTI-との契約を発表していたボニー・ドゥーン、サンフランシスコへ拠点を移してからは初となる新作アルバムから新たな先行曲としてタイトル・トラックが出ました。
ワクサハッチーのケイティ・クラッチフィールドがバッキングのゲストボーカルで参加したShe & Himもビックリなピアノとオルガン主役のオーセンティックなポップソングになってまして、LPにはWoodsのJarvis TaveniereとCRYSTAL STILTSのKyle Forester全面参加してるみたいです。


Decisive Pink – Ode To Boy

昨年末に初お披露目となっていたエンジェル・デラドゥーリアンとケイト・NVによる新ユニット、ディサイシヴ・ピンクのデビューアルバムから三つ目の収録曲がビデオ公開です。
前回までのトラックは見事にこの二人の間の子って感じでしたが、今回はほとんどKate NVそのままじゃねーかってサウンドと節回しので、コンテンポラリーな香りのするモダンとレトロが同居したシンセティックなニューウェイヴ・テクノポップ楽曲。映像ではエンジェルがセント・ヴィンセント化してます。

今週のLP/EPフルリリース

Kid Charleroi – s/t (LP)

基本的に中心人物、ボーカルの女性のソロというかいわゆるSSWバンドのような体裁で、70’sポップ・ソフトロックみたいな雰囲気をレトロ趣味のフィルターではなくもっとナチュラルに今風なサウンディングで再現、昇華したような絶妙に面白い音楽性。
楽曲的にはTennisとTOPSの中間で、Steely Danみたいな雰囲気もあるが、鳴りがこうもっと洗練されてて何かしらのリバイバルって印象を受けないんですよね。ちょっと落ち着いててあまり若者が喜びそうな感じはしないですがその辺逆にシティポップ文脈に変に巻き取られないからむしろ好都合かもしれない。オトナな音楽を年寄り臭くも青臭くもなく、実にニュートラルに小綺麗にセンスよくやってる感じです。


Fenne Lily – Big Picture (LP)

前作は本当によく聴いたし、今回も大絶賛させていただいた最初の先行M-3から俄然期待値マックスでしたが予想を裏切らず素晴らしい傑作アルバム。単体でそれを超える楽曲は無いものの全体の強度としては前作より高いと思います。
明確な違いとしては、ゲスト参加ミュージシャンが増えた事も直接的に影響しているのでしょうがプライヴェートで静謐なムードが薄れ、音像がより開けて外の空気を強く感じる部分は大きい。それが良さをスポイルする結果には一切なってなくて、ただただ彩度や力強さをプラスし、十分インディロックとも言えるダイナミックな仕上がりに。でも必殺の美しい歌声はほぼ常にウィスパーなんで、その辺のバランスがシグネチャーになってますね。
表面的なサウンド・アレンジとしては特別な所は全くなく、SSWと表現するしかないシンプルな音楽ではあるのですがどこまでも上品で真摯なピュアネスに満ちていて、ローラ・マーリングとかがもうちょっと俗世に降りてきてるようなポジション。
1曲をミックスしてるJay Som、1曲を共同プロデュースしてるChristian Lee Hutsonや音楽性がやや被ってるKaty Kirbyなど関わってる仲間たちの顔ぶれもナイスです。ただ、一つだけケチ付けるとしたらジャケットが微妙かな。
オープニングトラックは「日本地図」ありがとうございます。ぜひ来日も!