GVVC Weekly – Week 234

Nico Georis – Flight

カリフォルニアのニコ・ジオリスが来月にLeaving Recordsからリリースする新作アルバムより二つ目の先行トラックがビデオ公開。
リストの門下生に師事していたという背景から、ちゃんとしたクラシック・ピアニストの素養がありながらもローファイに傾倒してインディ感覚のあるモコモコした淡いアンビエントを作っちゃったら絶妙に唯一無二な愛嬌あるサウンドが開花。
モヤのかかった煌めきと浮遊感のある優しくてウォームかつノスタルジックなピアノ・シンセアンビエントのアンサンブルが、アルバカーキの気球フェスティバルをスーパー8mmフィルムで撮影した映像と非常にマッチしています。先月出ていた方の楽曲も良い感じ。


The Drums – Plastic Envelope

ジョナサン君一人になってもなんだかんだコンスタントにリリースを続けているザ・ドラムスから新しいシングル曲が到着。
ここへ来て原点回帰というか、かなり最初期を思い出すようなシンプルおセンチ疾走ローファイ宅録ポップになってまして、ちょっと懐かしい。なんだかんだ他メンバーのコントリビュートも効いていたのか、やはりどこかソロっぽさが出てしまっているのは悩ましいところですが、このフックと求心力は彼にしか出せない特色があるし、The Drumsより前に彼がやっていたElklandだってまだ忘れていないからね。

このロボットダンスというか、のけぞり競歩ムーヴほんと独特だしこの人以外見たことない。
最後の方踊りすぎて息切れしてるから。


Cults – Gilded Lily

カルツの6年前にリリースされた3rdアルバムからの楽曲が時空を超えてのビデオカット化です。なんでかTikTokでプチバズってるようで、そのパターン最近よく聞きますよね。
正直そのアルバムは全然ちゃんと聴いてないし、なんならデビューアルバム前、フォレスト・ファミリーからの7インチがピークだったというあの時代というか瞬間を象徴するグループではあるのですが、一番有名なあの曲や1stの何曲かはやっぱ良いと思うし、キラリ光る部分は色褪せてないかな。
映像の方はマデリンが完全に大女優ぶりを発揮しているなんかいいビデオで、投身自殺した人はみな空気人間になって大気圏まで浮上していくみたいです。最後の方の手かざしカットだけいらねえ気がする。
しかしさ、改めてGorilla vs Bearって普通にすげえよな。Luminelle ニアリーイコール Forest Familyなわけで、それほどテイスト変わらず当時から今も現役って他にもう残ってないだろ。それほどテイスト変わらずってトコロがポイント。

今週のLP/EPフルリリース

Daisies – Great Big Open Sky (LP)

かなり面白いアウトプット。コレと主軸に据えられる際立った音楽性を選べないから説明が難しいが、無理やり表現するなら一応はピュリティ・リングとかあと4ADにいるような少しオルタナR&B入ったアートポップアクトみたいなのを半分アコースティック化したというのが近いのかな。でも4人組バンドだし、もっとオーガニックな響きがあるんです。
いい意味で中途半端にエレクトロニックな骨組みに、トリップホップ、ラウンジーな雰囲気も持ってて、線は細いけどクセ強めのコケティッシュ系ボーカルが華を添える。それらを敢えてキレイに整理せずある程度散漫さを保ったままラフに仕上げていて、そこそこローファイ。この散らかり具合、でも全てに嘘はないから一応筋は通って聴こえるごった煮音楽、これぞインディでしょ。
ジャケもイカれてるし随所に狂気を感じるんだけど、エクスペリメンタルな印象はなく常に歌物であることは意識してるんだなと伝わってくる。この音像なんか中毒性あるから、大化けする可能性あると思うよ。


L CON – The Isolator (LP)

非常にヨイです。謹製アンビエントフォーク・altポップに対しオーケストラルな要素がスムーズに導入されてるのが面白ポイントで、ボーカルの質も高くコンテンポラリーな趣もあるもんで、作りを簡単にしたJulia Holterとかが表現としては近いかな。M-3の入りとかまさにジュリア・ホルターのこれを思い出しましたよ。
ツンと端正なサウンドだけど、ジャズまで入ってきたり、割と大味にドラマティックに進んだりもするんで、置いてけぼりな部分もなく常にサービス精神旺盛。ただ、もう一癖欲しいかなっていう部分はあります。雰囲気としてはGhostly Kissesあたりと並べて聴きたいですね。


Oval – Romantiq (LP)

元祖グリッチ、IDMエレクトロニカ巨匠は復活以降この10年強でそこそこコンスタントにリリースしてますが、相変わらずオーヴァルでしかねーサウンド。でも今回は特に聴き易いし、ノイズもほとんど入らない流麗な仕上がりで今までで一番好き。
ドラム的なパートは存在しないんだけど、メインで鳴るプリペアドピアノ、鉄琴木琴にスティールパンが渾然一体となった音はいつもパーカッシヴで曖昧なピッチなんでリズムの乱打みたいなニュアンスがあり、そこをフワフワしたレイヤーで装飾しまとめ上げるという、ちゃんとしたお菓子とかフランス料理みたいな構造だよね。
まごうかたなき電脳音楽でありながら何といっても最近多い躁病的な、狂ったような雰囲気が一切無いから正当な音楽として違和感ないのも良き。品性を保って音楽しましょう。保守とかじゃない。全裸で街歩いたら捕まるよね。それと同じような話。でもネット上でなら全裸にだってなれる!いや、そらそうなんだけどさ…。
アタックがパチパチ鳴るハイ落ちしてない感じは個人的に好きじゃないんだが、この程度のマイルドさならまあ許せるかな。今回もThrill Jockeyから。