GVVC Weekly – Week 235

ANOHNI and the Johnsons – It Must Change

アノーニことアントニー・ハガティの7年ぶりオリジナル新作フルレングスでは久々にアンド・ザ・ジョンソンズ編成が復活し、最初の先行曲としてアルバムオープナーのビデオが公開されました。
これを待ってたの!変なエレクトロニックのトラックじゃなくてオーガニック生演奏のオケで歌うAntonyがずっと聴きたかったのです。
とはいえ以前のこの体制での傑作アルバムと比べるとサウンド的には相当異なっており、だいぶソウルに寄ってまして、この世のものとは思えないような特異な孤高の雰囲気は無くなっています。この曲だけではまだ何とも言えない部分もあるので、全容が公開されていくのが楽しみですね。


Maple Glider – Don’t Kiss Me

メルボルンのSSW、メイプル・グライダーから、まだ新作アルバムのアナウンスなどはありませんが、これで今年二つ目となる単発シングルが到着。
今回はちょっといつもより感情的に力の入った泣きのオルタナエモ・スロウバーナーといった雰囲気になってましてちょっとメンドクサイ風情ですが、繰り返される「時々、自分の身体が自分のものじゃないみたい」というメッセージとともにやけに求心力のある歌唱がフック強し。
映像の方は殺人ドールマスターと化した本人が人形の相棒と共にむちゃくちゃしてますね。コメントによるとレーザービームはVFXではなく全てホンモノだそうです。んなわけねえだろ!



Daniel Rossen & Christopher Bear – Why Are You Going To New York / Across The Ocean Past Lives

グリズリー・ベアの2/4が、A24新作のサントラをアナウンスし、先行シングルとして収録曲を二つ同時公開しています。
内容の方は大満足な自分の求めるGrizzly Bearのインスト版って感じでして、直近のダニエル・ロッセンのソロでもドラムはかなりクリス・ベアが叩いていたので、ほとんどその延長で聴けるようなサウンド。エレガントだけど華美じゃなく、滋味深くて思索的なアレンジに、Why Are You Going To New Yorkの方では ほとんど手グセだと思われるあのジャランという独特なコードの白玉ユニゾンストロークも多用されてます。
横に幅を持たせる雰囲気づくりの上手いドラミングもあって、これはもうOSTの枠を超えたナチュラルアンビエント・ポストロックの好盤になってそうですね。


KNOWER – The Abyss

ジェネヴィエーヴ・アルタディとルイス・コールによるノウアーの7年ぶり新作アルバムから二つ目の先行曲がスタジオセッション(風の)ビデオで公開。
来日公演したこともある彼ら、相変わらずの変則ジャズ・ファンクで今回は相当ファストな焦燥感のある演奏ですが、とんでもなくタイトな音作りでデッドもデッド、ボーカル以外はほぼ残響がないようなナマのサウンドです。
やはりマブダチなだけあって、かなりサンダーキャットを感じさせるアレンジだったり(この音で5弦だしね…)異常にバカテクなインストの中でGenevieve Artadiのゆるめの歌唱だけがインディ指数的な部分でバランスを取っている安心ポイントとして機能。格好いいけど、一回でいいというか、ずっと聴いてたら疲れるかもな。


vaarwell – DLAM

ポルトガル、リスボンのヴァーヴェルが単発のニューシングルをビデオで公開。かなり初期に取り上げた記憶があり、その時はトリオだったのが何年か前からデュオに変わってます。
もう少なくとも7、8年やってるはずだが、まとまった作品をほとんど出さない印象で、10曲とかあるようなフルアルバムは1枚くらいしかないんじゃないかな。
音楽性は初期のインディポップからアーバンなナイトミュージックに変わっていて、近年はNFTにも力入れてるみたいだしスタンダードから考えると独自路線に進んでいますが、今回の楽曲は久しぶりにちょっと良いかなと。
ヒプノティックなオルタナR&Bが、一時のウィッチハウスブーム以降に多かったダークで重めなダウンテンポにムーディな女性ボーカルというある種のスタイルを彷彿とさせ、それをよりスムーズに、悪くない意味でコンサバに仕上げていてバランス良好です。やり過ぎてないのがポイント。

今週のLP/EPフルリリース

Horse Jumper of Love – Heartbreak Rules (LP)

本当に素晴らしいソングライター、ボーカルだなあと。今回はドラムは基本ちゃんと入ってるし完全に弾き語りスタイルってわけではないですがラフなアコースティック寄りでロウな質感の、より親密な雰囲気で楽曲に焦点が当てられたコレクション。
それもそのはず、直近のオルジナル新作フルレングスを出してから一年経ってないのですが、こちらボーカルと長年のエンジニアほぼ2人だけでしっぽり制作された新曲8つに、昨年作から特に良い曲2つのアンプラグド版、そしてスマパンのカバーで構成された、変わり種のアルバムということみたいです。
元来の3ピースバンドでの演奏も普通に素晴らしいので常にこのスタイルありきになったら微妙だけど、ストップギャップのリリースとしてはこういうの挟むがベストだし、本当はただのボツ曲寄せ集めでしかないのに、よく「アルバムのセッションで選外になった曲たちだけど、これら一連で別の世界観を持ってることに気づいたんだ」とかいう大嘘のコメントをエクスキューズとしてリリースされるアウトテイク集EPとかあるけど、ああいうのは格好悪いからね…レーベルが出したがるんだろうけどさ。