GVVC Weekly – Week 243

MJ Lenderman – Rudolph

ウェンズデイのギタリスト、MJレンダーマンがソロ名義にてANTI-との契約をアナウンスし挨拶がわりの単発ニューシングルをリリース。
当GVVCでも常連の本体バンドの躍進も素晴らしいですが、さすがそのギターサウンドの核といったところでなんとも艶とコシのあるクランチ、前作アルバムよりもさらに磨きがかかったコンプ感の強いリッチな音像のオルタナSSW楽曲になってます。
ぶっちぎりで存在感のあるシンガーが居るバンドの他メンバーはからきし歌えないってパターンが界隈あるあるですが、なんだかんだこのボーカルも置きに行った滋味深路線ではなくどっちかというと軽めかつ若干フリーキーなヘロヘロ系でナイス歌唱、普通にメインの人と言われても通せる味がありますね。


Big Thief – Vampire Empire

ビッグ・シーフの既にライブなどで定番化している楽曲が7インチシングルのA面としてリリースされます。来日公演でもやってましたね。
ただ単にバンド編成で曲を合わせてるというか、ホントなんてことないアレンジなんだけど純粋に演奏が生き物のような一体感だし、ボーカルは相変わらずの凄みでまだまだ左前にならず、最盛期を保ってるモンスターバンド。規格外の馬力だけで異常な打点を出してるような特殊な音楽なのでコメントすることがあまりないです…。


WILD BLACK – Stay Dreamin

エチオピア系カナダ人シンガーのエルサ・ゲブレマイケルによるワイルド・ブラックのニューシングルがビデオ公開。
これは何ていうか音楽性的には限りなくコンサバ寄りで、チルウェイヴ以降にメジャーにも定着したある意味インディの皮を被ったメインストリーム予備軍と言えるような立ち位置なんですが、全体的なバランスが非常に良い。
ボーカルもソツなく、アクの強くないさっぱり系で軽めのハウスとかインディダンスに向いた歌唱。そしてコレが入ってなかったらギリ紹介してないってレベルで気持ちよくなだれ込むこれまた紋切り型のサックスプレイと、一つ一つの要素、フレーズはことごとく中庸なのに全体の組み合わせの妙で何故か聴けるという不思議枠。極め付けはアーティスト名までなんとなくインディ系でAIにつけさせたみたいなソレっぽさだけの無味乾燥ネーム。わざとやってんのかもしれない。MUNA × SMALL BALCKみたいなサウンド。


Just Friends – Better 2 Be Around

カリフォルニアのジャスト・フレンズが9月にリリースする新作アルバムから二つ目となる先行曲をビデオビデオ公開。
オルタナ・ポップパンク流れの90’sメインストリーム・パーティロックみたいな一つ前のシングルも紹介しましたが、今回はもっと遥かにインディポップ然とした楽曲。とはいえ、いわゆるギターポップ青春路線な淡い男女ツインボーカルではなく、もっと元気にストリートで、まさにバンド名通り友達とワイワイやっている雰囲気が充満した素晴らしく魅力的なムードのトラックです。
ボーカル二人のキャラクター立ち具合もよく、ちょうど半々くらいの男女ツイン分配なのが相当に効いていて、その点プラス何処かやはりエモ・パンク感と90年代のニュアンスを孕むサウンドの肌触りでちょっと珍し目のオリジナリティが成立してるし、アルバム全編にも俄然期待が高まります。


MESS – In The City

メキシコのメスがリリースした12インチシングルからB面曲の方をピックアップ。いやこれはすごい。なんて本気にソレっぽいんだ。メキシコっすよ?
本人ら的には勿論A面が主なんでしょうけど、いわゆるストリートパンクってとこからOiっぽさも若干残しつつ、もうちょっとゆるめにシンガロングなブリットポップ風テイストに振ったこの楽曲がやけに魅力的で、変な話が初期ヴァクシーンズとかOGですがロイヤルヘデックあたりのようなサウンドに。
そしてこの音楽性でこのタイトル、一見JAMのカバーとしか思わないが、あえてのミスリード狙いか、オリジナルです。でも一番はやっぱボーカルの奴がなんだかんだ良いのかな。ツボ入りました、愛嬌あるわ~。

今週のLP/EPフルリリース

Ben Gunning – No Magic Hand (LP)

ジョセフ・シャバソンと連名のアンビエント作をリリースしていた印象しかなかったんだけど、こんなのだったんだ。…って前のも聴いてみたら今作から一気にオリジナリティのあるサウンドに進化したのね。
複雑に絡み合った音楽性だけどコード感、歌い方とベースのビート等からしてかろうじての基本形はオルタナR&Bというか、インディ・フューチャーソウルみたいなところかな。そこに、OPN以降のエレクトロニック〜ニューエイジが先鋭化したサイバネティック感のある電子音が挿入されつつもどこかアコースティックでオーガニックな響きも同居した非常にコンテンポラリーなムードの音楽。
個人的な印象としてはDominoからリリースしてたMotion Graphicsっていたと思うけど、あれとプリファブ・スプラウトが合体したような感じだね。神経質な奴が密室で一人でやってる感が凄いし、なかなかめんどくさい意匠だとは思うけど結構好き。もう少しだけ抜け感を出して聴き易くしてれるともっと間口が広くなると思う。