GVVC Weekly – Week 82

Jackie Lynn “Dream St.” (Official Music Video)

Circuit Des Yeux (サーキット・デジュー) とBitchin’ Bajas (ビッチンバハス) のユニット、
ジャッキー・リンの新作アルバムから3つ目の先行トラックです。最初はエキセントリックな
エレクトロニック・ディスコパンクだったり、次はロウなオルカンUSロックだったりと同じ
作品に収録とは思えない音楽の振り幅。今回はある意味サーキット・デジュー本体路線の
延長線上で考えられるラウンジーでレトロなサントラ風の楽曲で、程よい枯れ具合というか
ウェットなドリームサウンドが自然に褪色したような風合いをしており、すごく滋味がある。
これはアルバム全体で一体どうなってるんだろう、USガールズ、Perfume Geniusの新作と
並んで、今年指折りの名盤化が約束されてる感じ。期待大のイチオシ推薦版です。

今公開されてる3曲続けて聴いてみ?流石に混乱するわ。

Braids – Snow Angel (Official Video)

ブレイズの新作から新たな先行曲ビデオです。コロナ騒ぎで例に漏れず発売延期してますね。
9分ありますがプログレ展開ではなく反復クラウト感のあるのミニマル路線の楽曲で、これは
カッコイイ。ラファの声がサウンドにハマってる。しかし今回のアルバム、カラーに統一性が
見えないな。ここまで公開してるトラック全部まるで違うし、通しでどんな印象になるか全く
読めないですね。中盤で相当熱の籠った独白になり、ポストパンク的な様相を呈してきます。
10年位前に出てきた頃はアニコレフォロワーみたいな扱いだったのに、ホント化けたね。


The Memories – The Sign

メモリーズって軽いローファイ・ガレージの印象しかないですが5月末リリースの新作からは
少し新機軸を見せてきているようです。2つ目の先行曲であるこちらエイス・オブ・ベイスの
カバーで、原曲のアーリー90’sホワイトレゲエポップをインチキ感たっぷりに仕上げてます。
ペラいけど歌唱がイイ感じに仕上がってるなと思ったら歌ってんの何とコリーン・グリーン。
もう1曲の方も少しフォーキーで陽の光を感じる落ち着いた穏やかなUSインディロックと、
ローファイ感はありません。ま、10年近くもやってりゃ人間そうなって来ないとウソだよな。

Squid – Sludge (Official Audio)

スクイッドがWarpと契約したようです。なんかもうほんとナルホドって感じの人選ですね。
一気にアシッド感が増して、豪華なサウンドになっちゃった。悪くないけど、個人的には
あまり好みではないかな。ワープのバンド系A&Rは外しっぷりが酷くて、センスがないので
この先ちょっと不安です。マキシモパークからこっちThe Hundred In The Handsとかさ、
あとBorn Ruffiansとかその辺マジ笑えないから…。バンドには手を出さない方が良かった。
グリズリー・ベアだけは最の高ですけども、他所でも売れてたし、前作でもう移籍したしね。

Scottibrains – Aristorats

Speedy Wundergroundのダンらが新たに結成したスコッチブレインズのデビュー曲。
このご時世ということでリモートで制作され、ミックスはダンの娘(15歳)担当とのことです。
粒の粗いサウンドで、ファズまみれの微シューゲイジング・ジャムから徐々にテンポアップし
サイケ疾走クラウトロックへ雪崩れ込む長尺インスト楽曲です。咆哮みたいな音が格好いい。

APRIL – New Conditions

アイルランド、キルデア州出身のエイプリル・ロウラーによるソロユニットです。多分、
そんなに作り込まれた音楽ではない。でもなんかミックスが良く聴こえるのと、少しだけ
R&Bっぽいローファイベッドルームポップでそこに少しアンビエント系の雰囲気が入ってる。
サンクラではJames BlakeやBillie Eilishのカヴァーなどを沢山上げており、何か納得ですね。
多分来月には忘れてると思うけど、若者の手作り感満載で、たまたま良く出来た素敵な一曲。

今週のLPフルリリース

Activity – Unmask Whoever (LP)

Groomsのメンバーが始めた新バンド。先行曲が結構良かったけどその印象通りの内容で
エレクトロニックも使用するちょっとサイケでスペーシィで、かなりオルタナなごった煮
NYアートロック。これで全て説明できています。”かなりオルタナ”なところが特徴かな、
この手合いでオルタナ成分も強く入れて来てるのって珍しい。クオリティ高いですよ。
あの頃のブルックリンっぽさあるサウンドで、Bear In Heavenあたりと一緒に観たい感じ。


orion sun – Hold Space For Me (LP)

いや、コレは期待通りイイです。基本的にはダウンテンポR&Bと考えてもらっていいが、
構成するエレメントがほんとアトモスフェリックで全体的にアンニュイなのでアンビエント、
シューゲイズ的な雰囲気を強く持って耳に入ってくる。ギターも多用されてるし、音像が
凄くインディ・フレンドリーなんですよね。ちょっとdenitia & sene思い出すところもある。
コーラスかけてトロトロになったギター弾き語りのアルバムクローザーM-11も素晴らしい。


Nap Eyes – Snapshot of a Beginner (LP)

正直初期からの変わり様って所も込みでの評価になってしまうがこのサウンドは格好いい。
曲でなく音響的な部分だけでドリーム感を付加したフォークロック、オルタナカントリーで、
たまにはもっとドライヴするキャッチーな楽曲も入れてくる等、滋味や枯れっていう方向性に
行ってしまいがちな音楽性を、間口の広いものに仕立てるぞっていう心意気が感じられる。
青すぎるインディポップやロックと、渋すぎるフォークロックのミッシングリンク的な作品。


Waxahatchee – Saint Cloud (LP)

う〜ん、すごい。やはり声なんだろうなぁ、ボーカルが特別すぎるからもう何でもいいよって
感じになってしまう。トラックとか軽くショボいし、もう相当キャリアあるのにこれデモ?
みたいな曲も多い。ずっとツアーしてたんだろに、サーッと作って録音したとしか思えないが
それでもそれなりに説得力あるんですよね。なんかズルい。もちろん、ずっと聴き続けられる
ような名盤、好盤では決してない。ただこの人はもうこの人である事が重要なタイプなので
コレでいいんでしょう。今回バンド感は0で、オルカンSSW然としてる。ジャケットいいね。


Little Dragon – New Me, Same Us (LP)

何か音が悪い方向に変わってる気がするんだよな。アレンジは確かにこの人達らしいママだが
もっとシルキーで幕のかかったような白く、光のあるサウンドで、北欧っぽい冷たさもあった
気がするんだけどその辺が薄れて、ちょいマッチョで太いサウンドに感じる。これじゃ特徴が
無くなってしまってる気がするんだけどね。ジャジーなヴァイブもあるエレクトロニカバンド
みたいな印象が強すぎるってのもあるけど、もう少し繊細なチューニングでお願いしたいな。
微妙に盛り上がらせない寸止め楽曲構成は相変わらず。一応ポップスたりえる音楽性なのに、
15年もやってわかりやすくキャッチーな曲は今まで1つもねーからなこいつら。さすがだよ。

日本のリリース

tamanaramen – hahen (prod.CVN)

昨年のCVNシングルカットにも起用されていた玉名ラーメンの新作EPがリリースされ、
そちらからCVNプロデュースのトラックがビデオで出ています。以前よりスタイルとしては
トリルウェイヴをバックに日本語を歌う、モノローグ混じりのSSWっていう認識でしたが、
今回はベースと同化した淡く揺らぐシンセレイヤーの海の中を、太いキックのみで支える
かなりアトモスフェリックなサウンド。天上のトリップホップみたいな世界観になってます。

・Psychic IllsのボーカルWarren Tresが41歳で亡くなりました。死因は公開されてません。

Sacred Bonesからリリースしていた諸作が印象で、アーシーで煙たいサイケロックを展開。
ご冥福をお祈りします。