GVVC Weekly – Week 83

Lido Pimienta – “Te Queria” (Lyric Video)

カナダのコロンビア系シンガー、リド・ピミエンタがまもなくリリースする新作から最後の
先行曲かな?他はM.I.A.的だったり、ダークめなトリップ・ホップ系だったりもするのですが
こちらは最も朗らかな装いで、スティール・パンが鳴り響くトロピカル・ニューウェイブ風の
楽曲に、歌心の爆発した素晴らしいボーカルが躍動します。スペ語って部分とその音楽性で、
マリア・ウスベックのソロやフアナ・モリーナあたりが浮かびますが、凛としたイメージも
共通点かもしれません。楽しげでラブリーではありますが、決して甘くはない音楽ですよね。
でも、強いのに優しいというか、何だか不思議な包容力を感じて…、繰り返し聴きたくなる。


Inventions – Outlook for the Future

Explosions In The Skyのメンバーによる別ユニット新作ですが、イメージと全然違う音に。
何だろこれ、フルート的な笛の音がこだまする自然派アンビエントのような音像なんだけど
基本的に騒がしい。ライオンキングというか、草原で原住民とお祭りダンスしてるみたいな
世界観になってます。LP全体の仕上がりが気になるね。Temporary Residenceっぽくない。
もっとノイジーなセピア色ノシタルジック系のアンビエント・ポストロックだったはずよ…。


Kllo – Still Here

メルボルンのデュオ、クローがGhostlyからリリースする2ndアルバムの先行曲ですね。
今までも一応さらっと出す曲出す曲聴いてはいたが、特徴が薄いというか悪くは無いけど
特別紹介するまでもないサウンドだった印象。今回も薄味なのは相変わらずだけど、少し
面白い事してきた。陽の光を感じるピアノ弾き語り的SSWが、ほんの少しだけインディや
ポストロックのテイストを織り交ぜてシンプルな編成のバックバンド従えてるような音楽
って超ありがちだけど完全にその手の楽曲ベースに、そこから本来はかなり遠い所にある
2ステップ・UKガレージ的なビートを持ってきて、折衷的なアレンジにするわけでもなく
ミックスだけで馴染ませたサウンド。なのにリミックス風では無いし、妙に自然なんです。


Francis of Delirium – Circles (official video)

なんと小国ルクセンブルグを拠点とするフランシス・オブ・デリリウムのデビューEPから。
まあ、元々はアメリカ、カナダ系の人たちみたいなのでガチでルクセンブルグ人が出てきた
わけではないです。なんか組曲構成といいますか、勢いバーストするオルタナロックパートと
しっとりコーラスのかかったストラト弾き語りパートがコロコロ入れ替わる面白い楽曲で、
多分ボーカルがいいのか、訴求力のある素晴らしい出来栄えでまあ”エモい”ですね。注目株。


Art Feynman – I’m Gonna Miss Your World

ルーク・テンプルの”別人なりきり系プロジェクト”、アート・ファインマンが新作リリース。
最初の先行曲はチャカポコビートのミニマルなシンセ・トライバル・ファンクみたいな音で、
BGMにもなるのに踊れるという、矛盾した雰囲気。ニューエイジ系に聴こえる部分もあり、
長さを感じさせない佳曲ですね。アルバムには、2018年発表の”Ideal Drama”も収録の模様。


Jenny Hval – Bonus Material

ジェニー・ヴァルが昨年のアルバムと同じセッション(おそらく)から新曲を公開しました。
その名もボーナス・マテリアルという事でそのまんまアウトテイク的トラックなのですが、
ビートレスでしっとりした薄いシンセレイヤーの中サックスとボーカルだけが浮かび上がる
まるで星空を見上げてるような音世界で、美しく開放的なサウンド。これすごくいいです。


Moses Sumney – Cut Me (Official Video)

こ〜りゃあいいビデオ、ハッとするカットが連発です。まあ、狙いすぎとも言うんですけど
グリーンの生い茂った部屋に置いてあるトランクの画とか特に好きかな。ぜひ全編ご覧あれ。


Waxahatchee – So Hot You’re Hurting My Feelings (Caroline Polachek Cover)

オリジナル新作アルバムをリリースしたばかりのワクサハッチーが、シリウスFMの企画で
Chairliftのキャロライン本人名義ソロ作から一番の名曲をカバーです。確かにこれカバー
したくなるのはわかる。シンプルな弾き語りですが、かなりイイ感じに仕上がっています。


Jelani Aryeh – Stella Brown

サンディエゴの19歳、ジェラーニ・アリエ君による新曲は恒例、若者のラブリーソング枠。
カンタンな音楽ばかりだったあの頃の空気感が出てるし、そこにこの歌心をのせるだけで
楽曲を成立させるっていうのが僕らの手法だよね。この、ただ流れてる歌声とその節回しが
なんか自然と耳に入ってくる不思議。それがつまりストーリーテラーの資質あるという事で
音楽に限らず、同じ内容を語っても話が耳に入ってくる奴とそうでない奴がいる。単純な
ことですけどそれだけなんですよね。説明できるもんじゃないし、それでいいんですよ。

今週のLPフルリリース

Empress Of – I’m Your Empress Of (LP)

もろダンスポップ系のトラックなのにベースが基本的に入ってないし、キックもやや控えめ。
ボーカルが本当にいいから、トータルのバランスというかコーディネイト考えた時にこれは
これで合理的で、締まりが良く聴こえるしスッキリした音像になってる。キャラクター的な
部分の魅力も明瞭にしっかり伝えられるし、最初の先行曲でも書いたことが、LP全体通して
適用されていたね。ただこのサウンドで、デカイ低音を浴びてぇとか言ってるタイプの人達
ちゃんと満足するのか正直疑問ではあります。次はダンスじゃなくてもいいと思うんだよね。


ellis – born again (LP)

個人的には最初に公開された一曲、M-6が本当に年1レベルのガン刺さりをしたため、当時
単独で記事にまでしました。その後、他の楽曲群も公開されていくにつれてその途中でもう
わかっていたことですが、正直に申し上げてアルバム全体は大して良くない。そんなに幅が
出せる音楽性じゃないと、楽曲勝負の度合いが強まってくるので余計にきついところもある。
ただこの甘くて切なくて、かつ精神が脆そうな、すごく女性性を感じるムードっていうのが
シマーリバーブ一般化以降のドリームポップ系サウンドスケープひな型とガッチリはまって
強烈にキャッチーな音楽性ではあると思うし基本、曲を短めに収めてる所も非常に好感触。
とにかくいい曲(メロディ)書くことに専念してほしいが、それって努力した所でどうなる
ものでもないんだよね。ピアノ弾き語りみたいなのはあっていいけど重めのスローコア路線
とかは捨てた方が良くて、ある意味で割り切って、シューゲイズの衣をまとったまま構成は
もっとポップス方向に舵切っていくべきかと。Fall Apart級を連発できれば、天下取れるよ。


Anna Burch – If You’re Dreaming (LP)

先行曲をいくつか紹介しておりましたが、アルバム全編でもトリックはなく同じイメージが
続きます。温かめの音色で彩られたソフトポップSSW的な楽曲のバンド編成作品で、敢えて
溌剌さを排除した方向性というか、ひたすらに弛緩し、気の抜けた炭酸のようなムードが
醸成されていて、これはさすがにダレるかな。あと、穏やかで淡い露光に包まれた世界観
なんですけども、それもどこか落ち着かないというか、少し嘘くさいんですよね。それすら
意図的なものかは正直、判別できかねる所ですがtagで自嘲的にbummer popと称してます。
やはり先行で切ってた曲特にM-8、M-9あたりは良いけど、レコードを持っていたとしても
これを敢えて聴こう!というシチュエーションがあまり想像できないのは弱いところですね。


TOPS – I Feel Alive (LP)

金太郎飴感は拭えないが、確かに曲はいいし、ブレのない完成度を誇ってるとは思います。
でも、どうしても個人的にはこの音がひっかかる。ミックスがクリス・コーディと聞いて
色々納得です。好みの問題だとは思いますが、少しプロダクト然とし過ぎちゃってるのよ。
あまりに端正な仕上がりで、芸術点が落ちてんだよね。それでいい音楽性の人らもいるから
一概には言えないんだけど、トップスはそうじゃないし、大事なものが損なわれたような。