GVVC Weekly – Week 84

Laura Marling – Held Down

ローラ・マーリングの新作から素晴らしい先行曲が出ました。初期から考えても然程派手な
変化はないんですけど、少しずつ違いはあって、ここが今までで一番間口の広い着地点だと
思います。彼女の存在感は本当に神々しくて、敬虔な気持ちになるというか、修道女だとか
尼僧のような、俗世から隔絶され人間離れした雰囲気で、ものすごく純・キリスト教的な
世界観ですし、ジュディ・シルもそんな感じだったんでしょうか。バンド編成の音になって
久しいですが、特徴であった禁欲的なアレンジをやめ、今回は随分とサービスした作りです。

Laura Marling – Song For Our Daughter (LP)

っと、その週のうちに本編リリースされました。COVID-19の現状を踏まえ急遽前倒しでの
公開のようです。すごく美しくて、彼女の作品の中でも最も聴きやすいアルバム。際立って
アウトスタンディングなのは上のシングルだけですが、清らかさと円熟味に親密さプラスで
丁度いい塩梅。薄味なのは相変わらずですが、浮世離れが田舎暮らし位にはなったのかな。


Sweet Spirit – No Dancing

オースティンのスウィート・スピリットはMergeとサインしフルアルバムをリリースします。
これコーラス部分だけみたらかなりありがちなダンスポップ路線の楽曲だが、ヴァースでは
コード感を抑え、全体のアレンジも限界まで削ぎ落としてるからなんとかなってるというか
ミニマルに抑えた装いで、ABBAになっちゃいそうなのを、すんでのところで芸術点キープ。
こういうバランス感覚がやっぱマージに拾われるポイントですかね。3分以内なのもグッド。


Harkib – Dial It In

Sky Larkingの中心人物ソロで、元バンドと音、存在のイメージとしてはなんかHop Alongの
フランシス・キンランと被るんですが、こっちの方がよりオルタナ寄りかな。僅差ですが。
そんなにバンドでやってるものと変わらない楽曲が先に2つ出ましたが、今回のは少し違って
面白い。まあそれにしても普通のバンドサウンドだけど。職人、Wye OakのJenも参加です。


Lou Rebecca – To Keep You (Official Video)

ルー・レベッカの昨年作アルバムから唯一のNeon Indianプロデュース楽曲がビデオで登場。
これだけ明らかにサウンドがリッチで本格派な鳴りをしてて、浮いてるので比べると面白い。
同じロマン系シンセポップでもここまで違うものなのね。ビデオにはアラン・パロモ本人も
めちゃくちゃ登場しています。Italians Do It Better的な世界観から、デヴィッド・リンチ感を
抜いて、セルジュ・ゲンズブールな方向性に調整したってなところで、イメージ通りの映像。


The Beths – “Dying To Believe” (official music video)

NZのザ・ベスがCarparkからリリースする新作アルバム最初の先行曲は、会心の一発です。
パワーポップ、エモ、そしてストロークス的なものが理想的なバランスで配合された音楽で、
楽曲構成もすごく美しい。シンプルな編成なのに曲中に聴きどころがかなり沢山あって、
ミックスも素晴らしいから余計に際立ってる。かなりお手本みたいな仕上がりですねコレ。


AZITA – Shooting Birds Out of the Sky

アジタが2012年以来の新曲をリリースです。少しジャジーなUS都市部フォーク・ロックで
ある意味ノラ・ジョーンズ系がインディ化したみたいなのにも聴こえる、微妙に複雑な音楽。
これ、めちゃくちゃいい曲だね。8年ぶりということですが、これくらいのテンポでも皆が
ゆっくり音楽やり続ける、一番いい形のものを発表する、みたいなのが本当は一番いい。
産業化、商業化するためのレール、スケジュールに無理に乗せる必要は全くないんですよ。


Washed Out – Too Late

ウォッシュト・アウトさんの新作が出ます。前作は突然どうしたの?って路線のサウンドで
Stones Throwに移籍してリリースしていましたが、今回はSUB POPに出戻りとなってます。
それも納得のサウンドで、前作が無かった事になってるというか、完全に元に戻ってるよね。
代名詞化しているあの最初のヒット曲のアップデートバージョンみたいな趣で、なかなかの
強度、覚悟を感じます。そりゃもう目新しさは一切ない音楽だけど、下手に色々やるよりは
一番得意なものをただひたすらにブラッシュアップし続けるのがいいのかなと思わせる内容。


Shiner – Life as a Mannequin

なんと19年ぶりでまさかのシャイナー新作です。Life and Timesなんかもやってましたが、
これは思った以上にThe Eggの頃のサウンドほとんどそのまんま保ってて嬉しい復活ですね。
ポストハードコアをベースに、ヘヴィに片足突っ込んだ激オルタナ・ポストロック、エモで
Jawboxの系譜ではあるんですが、本当カッコいいんですよ。他にいないバランスなんです。
50歳くらいのはずなのに、声が全然変わってないのが凄いわ。2曲同時に先行が出てますね。


Fools – Deefyfe

グリズリー・ベアのドラム、クリス・ベアさんがソロ作をリリースしますが、その内容は
ニューエイジ系のシンセアンビエントでして、何とMusic From Memoryからのリリース。
まさにそういう感じの音で、想像してたものよりガチな出来です。まあドラマーとはいえ、
プロデュースとかもしちゃう、相当多才なミュージシャンなので不思議ではないですけどね。
名義もかなり匿名性が高くて、情報なしだと絶対気付かないよ。これ、結構オススメ作です。

今週のLPフルリリース

Jackie Lynn – Jacqueline (LP)

先行曲3つ(M-1,M-2,M-3)がそれぞれ見事に異なった趣で、一体どうなってるのと思ったが
アルバム全体でもまあ曲ごとに明確に方向性を分けてる感じでしたね。もう少し一曲の中で
様々な要素が複雑な発現をしてるような完成度を期待していたが、悪い意味でかなり軽めに
仕上げられたニューウェイヴ的楽曲もあったりで、求めてた凄みっていう観点では肩透かし。
本家で多用するドスの効いた魔女声も結構控えめにしてて、異物感はそれほど感じない。
Grouper的な曲や土臭いディスコ風な曲まであったり、思いついたもん全部やったって所か。
現状ではそれぞれの本家プロジェクト達が明らかに上だけど、仕上がったら良くなりそう。