GVVC Weekly – Week 85


Vex Ruffin – Do it Right

ヴェックス・ラフィンがStones Throwからリリースする新作EPの先行トラックを公開。
今回はやってくれましたね…最の高です。もともと印象は良いですが、これは本当に理想形。
ヒップホップ的な感覚がベースになったサンプリング・レアグルーヴっていう文脈のモノな
はずなんですけど、その土俵で場違いなほど究極にインディでナードなヘッポコ脱力仕上げ。
ある意味ミニマルとまで言いたくなる音像。もうちょっとはゴチャゴチャしてたはずだけど
他の収録曲が気になりますね。ソウルとかヒップホップとか、広義のブラックミュージックは
基本的にマッチョイズムなので、せっかく曲やメロディがよくても、演奏や歌唱、アレンジが
上手すぎ、プロすぎ、淀みがなくてタフすぎて、俺らはそこが逆に気が散る、っていう問題が
根本的にある。ある意味で水と油。我々はアマチュアリズムのプロであるべきなんです。で、
その解決策の一つ、模範的な妥協案みたいな”何か”がここに提示されていると、私は見ます。
別物なんだけど、変な話アリエル・ピンクの聴きやすい曲と並べられるし、あの頃感ある。

Pure X – Middle America (Official Video) / Fantasy (Official Video)

ピュア・エクスタシーが6年ぶりの新曲を発表しました。特有のフワフワと弛緩した浮遊感は
そのままですが、初期と比べると音像のザラつきはかなり抑えられていて、甘さも同時に減退
してる気がします。カントリーがかった煙たいミッドファイ・オルタナロックになっていて、
レーベルはなんとこの音で成る程納得のFire Talkですが、Infinite Bestと共同で二重に納得。

Porcelain Raft ‘Come Rain’

ポーセレン・ラフトが5月に新作アルバム(8曲ですが)をリリースするようで、先行曲です。
この人も、チルウェイヴとその流れの宅録ベッドルーム黄金時代を強烈に思い出させる存在
ですよね。今回はビートレスのビアノ・バラードで、綺麗な装飾に乗せられたちょい暑苦しい
歌唱が際立つ楽曲。グレン・グールド的な神経質そうな感じと伊達イタリア親父が合わさった
ような奇妙なキャラクターだと思ってたんですがそこのイメージとうまく今回マッチしていて
なんかいいんです。声が似てるのか、一瞬デストロイヤーに聴こえるところもあったりする。

Faye Webster – In a Good Way (Official Video)

フェイ・ウェブスターの新曲は特にアルバムリリースなどに言及なく、単発シングルな模様。
基本路線は変わらず、以前から十八番とするちょい生々しくて親密な恋愛の歌になってます。
ただこれ、ビデオでの動きが個人的にはいまひとつ気に入らないというかモヤッとするね。
作品聴いても、この子がイマイチどういう人なのかわからない。インタビュー等を深掘りして
いないので何とも言えないのですが、凄く魅力的な気もするんだけどかなりキッチュなとこ
あるから、悪い意味のナンセンスというかスレスレの存在だと思う。ハマりそうでハマらん。


Bob Nanna – Mr. Albatross

Braid, Hey Mercedesのボブ・ナンナがソロ作LPをリリースします。エモ・レジェンドの
一人で、今回の曲は特にイメージを裏切らないそのまんまEMOバンド弾き語りバージョンて
風情です。去年出してた他の曲はもっと枯れ系のUSインディ路線で程よくヘロヘロしており
この辺が半々だと結構いいバランスだなとは思いますね。ジャケットがくそダセェな。

Angel Olsen – New Song

COVID-19の流れで、数多公開されてる”自宅で撮ってみました”的なビデオって色々観たが、
なんか、これが一番聴けた。か~なり割れてるけど、でもリバーブの具合が理想的なのよね。
この新曲すごくいいし、次作はぜひ作り込まないサウンドで、もう基本弾き語りみたいなので
オッケーだから、芝居ががってないヤツで頼む。ホントいいボーカル、いいキャラクター。

CHROMATICS “TEACHER” (Official Video)

早くも新作、というかもうずーっと引っ張ってる”あの”Dear Tommyが出るらしい。しかし
トラックリスト出たとしてもまだ話半分に聞いておくべきでしょうね。まぁ、さすがに今回は
リリースされるとは思うけども。んで、今回のシングルですが良くないね。基本的に自己模倣
金太郎飴サウンドなクロマティックスではありますが、これ急いで作ったろ。相当軽いし、
作りがチャチい。全く同じ路線の楽曲でもやはり作り込みの差って何だかんだわかるから、
いくらカリスマでも、なめられちゃ困る。ついこないだアルバム出したばかりってのもある
でしょうけどね。どんなにお気に入りの飯屋とはいえど、毎日は食いたくないよって話です。

今週のLPフルリリース

Lido Pimienta – Miss Colombia (LP)

本当にイイ。特筆すべきはやっぱこの弾ける歌心、ストレートに飛び込んでくる節回しですが
サウンドもラテン風味のオルタナ・エレクトロニックポップで絶妙なところに落ち着いてる。
ポップといっても相当お上品なポップネスで、ちょっと神聖なムードまで孕んだ作品ですね。
自ら”alter latina”とタグ付けしてるのがかなりしっくりくる感じで、全てがほどほどに融合し
暑苦しくなくて、ケバケバしくない。ルーツ中南米勢がカナダやUSの都市部で洗練されると
こういう塩梅に落ち着いていくのって素敵だよね。エッジも知性も感じるし、格の高い音楽。


Kluster B – b [LP] (LP)

スウェーデンと完全バンドサウンドってとこで、HaterやSteve Buscemi’s Dreamy Eyes
あたりとの比較になるけど、その辺よりかなりフリーフォームというか脱構築的なサウンド
してて、オルタナやポストパンクまで含むインディ系ロックの要素全部ごった煮って感じ。
結構尖ったギターの音出してるし、USのハードコア系出自がねじれポップ路線に吹っ切れた
時になる塩梅の音楽っぽさがある。先行曲(M-10)を聴いた時、北欧系のイメージ通りから
始まり、プログレッシヴに展開していく様が凄く良いなと思ったが、そのセオリーに倣って
構成されてる曲は他に一切なくて、全体的にかなり鈍く重い。ちょっと騙された感あるね。
正直知らんで聴いたら北欧と思わんし、面白いけどもうちょっと締まりが欲しいというか
メリハリがなさすぎて、シュッとわかりやすく攻める楽曲が2つくらい挿入されてたらより
完成されるかな。ボーカルが少し弱いのが気になるが…Rama Lamaって良レーベルだね。

日本のリリース

S.D.S =零= (Subscription Double Suicide =Zero=) (V.A.)

EM RecordsからCVNの佐久間さんキュレーションで面白いコンピの企画が出ています。
実にナイツさんらしい(AVYSS magazineらしい)ラインナップで面白く、強烈に”今”ですね。
この世代って、どうしても元はと言えばHip HopやR&B的な方向性のものであったビートを
ベースに据えてる印象があって、その上にポストインターネットのありとあらゆるカオスが
ドリームだったりダークだったりレイヴだったりといろんな方向性に花開いてるって感じで、
このフォーマットが生活環境も含めてZ世代の一番自然な形なんだろなと思うと感慨深いね。
しかし、ほんとバンドやオーガニックなSSWには興味なさそうなのが、悲しい所ではある。