GVVC Weekly – Week 99

Loma – Ocotillo [LYRIC VIDEO]

昨年のアルバムも素晴らしかったCross RecordsとShearwaterのボーカルによるユニット、
ロマがサブポップからリリースする2ndアルバムの先行曲ビデオです。このグループは本当、
オリジナルの組み合わせなんじゃないかってくらい自然な音楽性で、今回もすごくいいです。
アーシーで雄大なタイム感にほんのりサイケ成分とシャーマズムを孕んだイメージの楽曲で、
全体像はオーガニックなポストロック的とも言える仕上がり。ジャムも大変カッコよろしい。


Obscura Hail – Doomer (Official Music Video)

オージーバンド、オブスキュラ・ヘイルの新作EPから明確なリードトラックであろう楽曲。
スゴクいい曲だなぁと。まあ、モロにいい曲然とし過ぎている節はあるのですが、その分、
歌唱が割とアブストラクトなのと、全体の音像がファジーなのとでバランスとってるかな。
ビルスピやペイヴメント路線の音楽ですが、その辺よりギターソロはわかりやすく感傷的で
大味になりそうなギリギリのバランス。4分突入せず終わるのもギリギリセーフなポイント。


Knot – “The World”

一つ前の先行曲も紹介したKrillの後進バンド、ノットからまた新リードトラック公開です。
基本的にEMO寄りのマスロックでしかないし、何か複雑な音楽性では決して無いのだけど、
(いや、マスロック自体が複雑と言われたらまあそれまでなんですが)特化してる選手って
感じで好きよ。あまりにもバンド大好きさん達によるバンド大好きさん達のための音楽で、
この手ってのは音楽自体よりも多分バンド演奏の方が好きなんだと思うが、それもそれで
いいじゃないですか。ちょい細かいキメが多すぎる気がするから、もう少し緩急つけたら。


Cemetery (Live in Ghent)

昨年のアルバムが素晴らしかったベルギーのブルータスが、ライブ版をリリースします。
メタリックなポストコアで女性ドラムボーカル、しかも凄い熱量の籠った歌唱と、そこが
強すぎてもう楽曲とか以前の段階でこのバンドには独自の価値があるが、やっぱ選ぶなら
この曲になるよね。正直スタジオ音源と印象が変わらねーです、実際のライブ観たいなぁ。
でも歌うますぎんだろ、このドラム演りながら歌っとんのやぞ。おまけに音楽性がこれで、
仲間の出してる中音も相当ウルサイでこれ。流石にイヤモニしてるとはいえ、マジで凄い。


The Reds, Pinks & Purples – Pictures of the World / Tell Me What’s Real

スカイグリーン・レパーズ、Art Museums等でリリースしていたグレン・ドナルドソンの
プロジェクト、ザ・レッズ・ピンクス・アンド・パープルズ。音は狙った名前にマッチした
ザ・ザ・ザ・ネオアコサウンド。この和製英語、完全に表現するグローバルスタンダードの
表現何があるのかずっと考察してるが、未だに答えが出ないね。ちなみにこの楽曲のタグは
c86, jangle pop, post-punk-popなどになってるけど、なるほどというか、これって言葉
ないわけだよね。c86っつーのが早いのか…やはり、neo acousticを広めていくしかない?
両A面シングルでして、2曲ともボーカルがしょぼい初期プライマルスクリーム風で良いです。
その辺の庭で撮っただけ、しかも無加工みたいなジャケットも貫禄のインディっぷりですな。


SUMAC -May You Be Held

アイシスのアーロン・ターナーが今やっているスマックの新曲。さすがに守備範囲外のモノ
だし、日常的には聴かないんだけど、これさ、完全にドゥームウメタル的な音作りの人らが
このアブストラクト、フリージャズインプロみたいな楽曲を演奏していて満足するのが甚だ
疑問で、あまり聴いたことがないような音楽になってて面白いの。これが、メタリックな音
じゃなかったらほんと、いくらでも代替品あるんだけど、マジでメタル化したフリージャズ
としか表現のしようがない音楽でさ、流石って感じするよね。聴いてて楽しくはないけど。


Laura Veirs – Burn Too Bright (Official Music Video)

ローラ・ヴェアーズの10月リリース新作LPから最初の先行トラックがビデオで公開です。
感傷的なエモ味のあるオルタナ・フォークで、この路線で3分未満って結構、珍しいような。
全体的にモコモコしたサウンドとしょぼい歌唱によってインディの範疇に収まってますが
これクリアーで溌剌としたメジャー・サウンドでプロデュースされたら一気にしょうもない
泣きロック化してしまう危険性を孕んだ楽曲ですね。でもなんか悪くないんだよなコレは。
しかし、Raven Marching Band Recordsって自主レーベル名、邪気眼にも程があんだろ。

今週のLP/EPフルリリース

Thanya Iyer – KIND (LP)

すげーいい。先行何曲か聴いて期待してたが、全体では予想以上の出来。すごく自然愛を
感じるしね。本人も定義できないと言ってるこの音楽性、ほんと表現するのが難しいが、
オリエンタルでジャジーなニュアンスのあるエクスペリメンタル・オルタナポップSSWって
所か?アンサンブルがどうもインプロ感あるというか、バンド編成で曲作っていってるのが
わかる構成してて、その辺が開放感というか、こじんまりとしていなくて、アーシーさを
強く感じる部分と相性良く、かなりプラスに作用してる。これ本当、聴けば聴くほど凄いよ、
大地、愛、っていうプリミティヴさと、すごく洗練されててシルキーな質感が同居していて、
スマート。トライバル・アーバン・フリージャズのポップスっていう矛盾だらけなサウンド、
なのに大別するとやはりオルタナティヴ・インディの範疇であることは間違いないという。
これは逸材すぎんでしょ…。ここから先どうなってくんだろね。これがTopshelfからっての
また何とも言えない絶妙さ。アルバム単位今年TOP5確定です、これはヴァイナル買うかな。
ただの1曲も微妙なトラックありません。音も異様にイイし、本当にイチオシ、太鼓判です。


Charm – Sugar Mountain (EP)

ぱっと見シュガーマウンテンがバンド名と思っちゃうけど、チャームってバンド名いいね。
山岳エコーがやや強めにかかってるが、基本は中庸で普遍的なインディロックのサウンドで
単純に曲がいい人達。なんの変哲も無いってとこではRBCF的なバランスだけど、もう少し
いなたいかな。語る部分少ないんだけど、正直こういうのでいい。みんな奇をてらわない
音楽性でひたすらグッドメロディや美しい音像を追求してればいいんじゃナイ?と思わせる
内容。3曲入りEPというかシングルというか…な、あまり見かけない形式でリリースです。


FALL OF MESSIAH – Senicarne (LP)

確かにフランスにこの印象はある。ドリーム系のブラックメタルがもっとスクリーモ風な、
ポストロック的とも言えるアンサンブルに寄りすぎた結果、最早ブラメタではなくなった
ような代物で、envyとかの系譜にも結構近く、これ日本のあの辺のフォロワーバンドですと
言われても信じるね。まあ、分類の話は置いといて、単純に展開やフレージングが順張りに
気持ちいいんだ。正直、大味でダサめな部分も多いがディープパープルのリフやフレーズが
ダサカッコいいのとある意味同じで、アルセは無理でもこっちは大丈夫な人結構いると思う。
マイルドに格好悪くなった版と思えばDeafheavenとか好きで聴くのと同じ感覚でいける。
ジャケットが笑えないくらい酷いから、ココがまともならヴァイナルで欲しかったかな〜。


Madeline Kenney – Sucker’s Lunch (LP)

引き続きジェンがプロデュースでベースも全部弾いてるってことで前作の延長線上の音楽。
ジャケが悪趣味になってるように、少し色彩をケバくドロっとさせたような向きはあるね。
曲は相変わらず良いし、集中力を感じるすごく研ぎ澄まされた出来で、店とかで不意に耳に
入って来たら絶対にイイと思うであろうイメージが可能。淡いムード、浮遊感、ソフトな
メロディと角の取れた質感に、理知的なコンポジション。フルバンド編成でもバンド感は
なんか薄いから、やっぱSSWサウンドという他ないのかな。どうしてもBGM的な音楽には
なっちゃうけど、これはこれでいい。ただ、次はもうちょっと変えて来ないとキツかもな。

時事ネタ
・例のバーガーレコーズ事件からのワルシャワ、モンチコン炎上についての所感記事も準備
してるんですが、それも仕上がらない内に同じsexual misconduct絡みでPart Timeは引退、Hoopsも解散で、一方リベラルの旗手扱いのテイラー・スウィフトがmerchで他所のロゴを
丸パクリと、もう地獄絵図だね。もちろん本人の指示じゃないだろうけどこれはこれでさ、
日頃から持ち上げてるSwiftiesは一転黙り込んだりするわけ。世の中全てポジショントーク。

あとはSpotifyのCEOの発言、ストリーミングのリベニューが低い、生活できないって声に
対して、それは3-4年にアルバム一枚作るみたいな奴が怠けている、ナメてるだけ、
というような趣旨の発言してて、ここでも普段主張してるのと全く同じ事が起こってる。

質が劣っても、満足しなくても、もっといいものが、時間かければ作れても、妥協して
ひたすらリリース、後でデモ版もリリース、ライブ版、アコースティック版もリリース、
なんならインビューや楽曲解説も音源として発表してスポティファイで配信すればいいと。
営業努力が足りない、生産性が悪いと言ってるのね。
ほんと産業・産業・産業脳で、コモディティと同じ土俵で音楽を、アートを考えてるわけ。
そしてそんな連中ばかりがのさばってるのが今の世の中だから。

Zola Jesusのコメントを引用します。

“it is extremely clear that @Spotify billionaire daniel ek has never made music, or art of any kind for that matter. he refuses to understand there’s a difference between commodities and art. the potential for cultural growth will suffer because of it”