Mora Mothaus – Overture to a Dream


Mora Mothaus – Tail Eater

東京のSSW、Mora Mothaus(モーラ・モスハウス)のデビュー(多分)EPで、
曲単体では去年から徐々に公開してたみたいですが、フルでのリリースは年明けのようです。
不勉強ながら先週までその名前すら存じ上げなかったのですが、聴いてみたらこれが…
およそ黙ってはいられないレベルで素晴らしかったので紹介。


Mora Mothaus – Overture to a Dream (EP)

一言で表すならゴシック・ドゥーム感のある美しい音響フォーク・スロウコアで、
Emma Ruth RundleMarissa NadlerChelsea Wolfeなどのイメージに近いですかね。
フォークと言っても生々しい荒削りなものではなく、広がりのあるポストロック系の音像で、
ボーカルに圧倒的な存在感というよりも、アレンジメントがすごく緻密に練られていて、
チープさが一切ない、シームレスに繋がるプロフェッショナルな楽曲構成をしています。
録音が良いからか、どこかチェンバーポップっぽさまであって、とても音楽的。
鳴りがモダンなので4AD、Bella UnionよりかSargent HouseにTemporary Residenceかな。

EP全体的に高水準ですが、特にM-1″Tail Eater”の完成度はズバ抜けていて、
上述したような同系統の一流SSWと並べて遜色ないレベルの地平に到達しているサウンド。
この曲は正直、予備知識一切なしで聴いたら絶対日本人と思ってないどころか、
完全にどっかそこそこ名のある海外レーベルのニューリリースにしか聴こえないですし、
そんなの滅多にあることじゃないので…。終盤の展開の説得力とか、ビビりますってこれは。

軽くヴァシュティ・バニヤン的な幽玄フォークM-3″Sacred Darkness, Sunshine”では
ダーク要素無しで、冷たいけど暖かいアンビエント童謡の弾き語りと、振り幅も見せます。

これ、チェルシーウルフがやったように、ブラックメタル系のバンドを従えて
ドゥーム・シューゲイズ路線のバンドサウンドに進んでもいいし、
幽玄フォーク路線を推し進めてもいいし、そこからギターの輪郭をトロトロ曖昧にして
Grouper的なドローン・フォークに向かってもいい。教会でライブするようなね。
それを全部やるのもアリだし、今のこのEPの時点でそのどれもに片足は突っ込んでるから
なかなかに間口の広い音楽になっているんですよ。リリックも立ってて聴きやすいの。

日本で、かつ歌モノでダークな耽美性を孕む世界観を実践しようとすると、どうしても
“V系文化”と言ったらいいでしょうか?そういう所に多少なりとも包摂されてしまいがち、
というかそれがほぼ不可避であったと思いますが、Mora Mothausは
完全にその呪縛から逃れることに成功してます。だからこそ、違和感なく聴けるんですね。
ゴスに振り切ってない音楽性なのと、英語が相当にマトモな事も強く影響してますが、
自己陶酔感が行き過ぎず、どこかサラリとしていてライトなタッチがあるのもポイント。
ここに至った本人のバックボーンも気になるところです。

少し退廃的な美だったり、ダークなビジュアルイメージに心惹かれるって事は
どこの国の人でもあるわけなんです。で、黒いドレープの服着た人達の文化っていうのは
いろいろな形で発現するわけですが、こと日本では、音楽だと初期段階でどうしても
マーケットの大きい”アレ”に触れてしまうので、そこに引っ張られがちなんですよね。
その存在自体は日本オリジナルの文化として、それはそれで何も言うことはないんですが、
ダーク・ゴシック・エステティックっていう世界観の人材を全部持って行っちゃうので、
暗黒系の意匠が、その文化圏ではないところと隔絶されすぎてる現状があると思うんです。

そういう意味でもこのモーラ・モスハウスは本当に特別な存在に映るし、推したい。

この綴りで”モスハウス”っての、違和感あるけど本人がそう記述してるからそれに準じます。
例えば、発音でいくと絶対ボン・イヴェールとは言わんけども、かといって日本語で
わざわざボニヴェァって書くのも無粋ですからね、それと同じようなところだと思いますが。
完全に余談だけどDustin Wongの国内盤などで”ダスティン・ウォング”表記になってるのが
すごい気になってたら、何と本人の意向って話でした。(Teen Runningsの金子君情報)

Mora Mothaus – Sacred Darkness, Sunshine (Odd Connection Live)

この動画だけを出してからその後音沙汰なしの謎プロジェクトOdd Connection
(多分、本人かその周辺の人脈によるものだと思いますが)
によるショート・ドキュメント風ライブフィルムも。多摩川河川敷だね。

EPのカバーアートなども自身で手がけているとの事。(俺も!まぁ、そこは基本。)

そのMora Mothaus、もう直ぐライブが予定されていて今週末の1月18日(土)、
執筆時点でもう明後日ですがNEHANN(ネハン)のイベントに出演するようです。


この企画、ラインナップもいい感じの注目イベントですよ!

ネハンは昨年夏にcassette tape echo/TANGINGUGUNの一世さんに教えてもらってから
気にはしてて、新音源出たらと思ってたけどなかなか出ないのでここで軽く紹介しときます。
(その一世さんはご夫妻で上記のイベントにDJとして出演します)


NEHANNは出で立ちからして徹底されてるクール系のダーク・ポストパンクで、
基本はThe Soft MoonやLebanon Hanover、The Horrors的な世界観。正直、
日本でこの路線はどうしても出だした頃のLillies and Remainsを彷彿とさせるんですが、
UK一辺倒じゃなく、グランジの影響もかなり感じられるので、いい塩梅に落ち着いてる。
直近のライブ映像とか見る限り、このサンクラの曲群よりさらに数段仕上がってるから
早く新しい音源を出して欲しいですね。絶対次の作品でもっと広く知れると思うし、
なんかスケールがでかいというか、あまり具体的な音楽性うんぬんに造詣ない人でも
難しいこと抜きでカッコイイ!って思えちゃう感じの風格があるから、期待大です。
1/29、YYOKKEさん率いるWOOMANのイベントにも、注目のWaaterらと共に出演予定。