GVVC Weekly – Week 108

Pet Shimmers – All Time Glow (Official Video)

Oliver Wilde率いるペット・シマーズの今年2作目となるフルアルバムが早くもリリース。
一つ前の曲は少し趣を変えてましたが、LP全編とほぼ同時公開のこちらはまた違う印象。
ゴチャゴチャした音像に、少し濁った男女ツインボーカルと、意図的にピッチの不安定な
ウワモノサウンドなどが混ざり合い、揺れに揺れが加えられたサイケで甘い音像。どこか
破滅的な美しさも兼ね備えた、儚げで危ういオルタナ・アートポップが展開されています。
スパークルホースは勿論ですが、the spirit of the beehiveの一部楽曲にも近さを感じる。
誰かの半生分の思い出写真を、時間軸めちゃくちゃに乱雑にコラージュしたものだったり、
継ぎ接ぎのショートムービーを見せられてるような、記憶のバーストを喚起させる音楽ね。


tomberlin feat. Harrison Whitford – Jim Cain (Bill Callahan cover)
(註:一日限定公開だったみたいで消えてますが書いちゃったのでそのままにします。)

トムバーリンが、ビル・キャラハンの最高傑作アルバムから1番か2番目にいい曲をカバー。
元々ステレオガムのコンピ用の楽曲でしたが単独でも公開されました。恐ろしくいい出来で
ちょっと鳥肌たったわ。まあ原曲がどれだけ凄いかもあるけど、曲の良さ100%活かしつつ
陽のイメージはそのままで、完全に新しい音像を提示できてて凄い。キーは変えてるけどね。
彼女のボーカルも相変わらず素晴らしく、ギターとペダルスティールの客演が相当効いてる。

この原曲が入ってるアルバムは掛け値無しの歴史的名盤、人の人生変えるレベルの金字塔よ。


Psymon Spine – Modmed

7月にNorthern Spyとサインし、バリィさんをフィーチャーしたトラックを公開していた
NYのサイモン・スパインからニューシングルがビデオで公開。そもそもバンド本体にBarrie
サポートメンバーのSabine HollerとNoah Prebishが所属していたんですね。二人もビデオに
沢山登場しています。サウンドはローファイ路線のインディディスコ・ブルーアイドソウル
ってところで、アリエルピンクをまともにしたような音楽になってますが、結構好きですね。
メイングルーヴがいい出来で踊れるし、構成もちょっと一捻りあってそこはかとなくお洒落。


Gulfer – Nature Kids

2年くらい前に来日していて、その時のライブ盤も発表しているモントリオールのガルファー
新作からの先行曲ビデオ。いかにもTopshelfっていう感じの音楽で、ちょっとマスロック的
アプローチも忍ばせるんだけど、ストイックになり過ぎない程度のバランス調整で軽いヤツ。
エモ系のサウンドで、こういうタッピング聴くとね、反射的にマイナス・ザ・ベアのあの人
思い出すんですよね。居たんですよ。あらゆるフレーズを”絶対タッピングで弾くマン”が。

何回か来日してたし、知ってる人は知ってると思う。これやりながら屈んでね、肘というか、
二の腕とか使って足元のエフェクター同時ON/OFFとかもかます、マジモンの職人でした。


Purity Ring – Better Off Alone

ピュリティ・リングから、Alice Deejayのカバーですがこれなんかいい感じ。このサウンド、
この人達の音楽性を極限までデフォルメして、わかりやすく提示するとこうなるよっていう
ようなもので、正直チャラいですがこれでいい。何か完全に吹っ切れてて潔さを感じるのよ。
このフォーマットのままで、まんま原曲の正統進化・現代版って感じでね、ベストな選曲。


Brittany Howard – Baby (The Late Late Show with James Corden)

アラバ・シェイクスのブリタニー・ハワード、昨年のソロデビュー作収録楽曲をTVで披露。
毎度ながらの素晴らしいアンサンブルだけれど、特に今回この入りが格好良すぎるでしょ。
アレンジは基本的に音源と同じながら、ビザールも映えるこのステージングと編成も込みで
めちゃめちゃ華やかに、ダイナミックなテイクで、普段からこのライブ版の方聴きたい位ね。
ほんと凄いな、なにこれ。この演奏力でメインストリームの鬱陶しさを感じさせない辺りも
まじで素敵で、いい意味であっさりしてる。こんなバランスなかなか無いっすよ。観てみ?

今週のLP/EPフルリリース

The Reds, Pinks & Purples – You Might Be Happy Someday (LP)

サウンド面を語ったらまずはネオアコという言葉しか出てこない。タグにも思いっきりC86
って書いてあるし、そういう純然たるギターポップでしかない音楽って正直、それだけでは
愛でられないんだけど、この人がちょっと違うのはまずボーカル。いい意味で少しクドくて
ルックスもね、いわゆるこれがUKの冴えない大学生みたいな子らがやってたら違ってくる。
でもこれはUS西海岸の髭モジャいぶし銀おじさんがやってて音にもその雰囲気出てるわけ。
まあ、Skygreen Leopards, Art MuseumsでバキバキWoodsistあたりからリリースしてた
バックボーンあるから滋味があって当然だし、ハードコアも若い頃通ってるでしょって思う。
曲によっては若干ダイナソーJrだったり、キュアーみたいなる瞬間も少しあるのがスパイス。
メロの引き出しが多くて、単純に曲がいいし、懐の広い音楽ね。こういうのを応援しようぜ。


Gabriel Garzón-Montano – Agüita (LP)

前のアルバムは聴いてられないほど苦手な曲達の中に、1曲だけ好きなやつがあったんだが、
今回は聴いてられないほどキツい曲は減ったよ。先行で紹介したM-8が一番甘くていいけど
アンビエント感増しめの曲は他も基本的に素晴らしい。でもビート強めのトラックになった
途端にガラ悪くなるの勘弁して欲しいんだよな。いっそこの両極端分けて作品作ってくれよ。
あとな、音だけ流しててもむせ返えるくらい香水の香りしてくる程セクシーすぎるんだから、
こんなNSFWなカバーアートにまでする必要ないだろ。見ちゃいけません!て言いたくなる。


Cartalk – Pass Like Pollen (LP)

先行の一つM-3でいいなと思ったが、全体聴いた中で一番いいのはM-1。なんか競合の多い
サウンドだからなかなか、そこまで強烈な個性あるわけじゃないんだけど、特にSSW寄り
というか、プライヴェートな感じが色濃く出てる。スロー目の曲の方が絶対合ってるけど、
ちょいちょい90’sのザ・オルタナロックサウンドな楽曲が入ってて、そっちはなんか普通。
その手の音作りの時、女声だと特にボーカルのトラックをダブルにしてある事が多いけど、
この手法自体があまり好きじゃないんだよな。この人も明らかに重なってない時の方がね、
いい声に聴こえますし、イノセント・ワールドじゃないんだからそこまでやる必要ないよ。


Dolphin – If You’re Cold They’re Cold

ほぼノーマークだったけどM-1が紛れもなく名曲でやられた。ダウナーなオルタナロックで、
リズムのギミックはゼロだし、なんならギターもベースもドラムも特段聴きどころすらない。
でもボーカルの良さが全てて、この歌唱だけでオルタナが成立してるからもうそれでいいよ。
淡々としたバックと不協和音の上に、歌詞がすごい勢いで飛んでくる求心力の強い言葉たち。
このアートワークさ、まずベッドパッドとシーツしこうな?これで寝ちゃマットレスに悪い。


Laura Jane Grace – Stay Alive (LP)

サプライズでのリリース。異様に音がいいなと思ったらElectrical Audioでアルビニとの事。
なんかほぼ弾き語りベースなんだけどこの締まってハリのある響きが、Neutral Milk Hotel
みたいな感じにまでなってて訴求力が凄いよね。パワフルでどこかパンク。これは良いです。