GVVC Weekly – Week 130

Mannequin Pussy – “Control”

マネキン・プッシーがEpitaphからリリースする新作EPより先行トラックをビデオで公開。
いや、このバンドはやはりいいね。何よりボーカルのインテンシティが素晴らしいんだけど
ダイナミックレンジが広いというか勢い一辺倒じゃないし、バンド全体のアンサンブルが
90’sのグランジから00’sのエモをいいとこ取りした上でヘヴィロック、ハイエナジー的な
ニュアンスもほんと香りだけ感じる越妙なさじ加減。ドバっと行ってるな~と思ったら急に
キュっと抑えて感傷的な泣きを入れるその手際が本当に職人芸というか、『手馴れ』です。

Andy Stott – The Beginning

アンディ・ストットがフルレングスとしては久々のリリースを発表、最初の先行トラック。
もう1ヶ月以内にはリリースとなるようです。これはかなり歓迎したい比較的軟派な路線の
トラックになっており、いつものAlison Skidmoreをフィーチャーした全編ボーカル入り。
インダストリアルとかグライムは正直ほとんどいらなくて、こういうアンビエントテクノの
ちょっとビートとベースが締まっててかっこいいな?位のサウンドでいいのよ。ジャケット
今回めちゃ良いので水泳の飛び込みのやつ以来ちゃんとLPで買おうと思います。ちなみに
a completely mainstream artistのプロデュースオファーが来ているらしく、誰なのかな。


Molly Lewis – Oceanic Feeling (Official Video)

Jagjaguwarがオーストラリア出身の著名口笛奏者、モリー・ルイスとサインし新作を発表。
サウンドの方がエキゾ・ラウンジジャズになってまして完全にLes Baxterの世界観というか
それにしか聴こえない。すごい良いかと言われるとコメントに困るんですけどなんか面白枠
というかですね、変わり種としてまああってもいいかな。ビデオの方はかなり悪趣味ですね。
ちなみにJagjaguwarを含むSecretlyグループの従業員だけの労働組合が先日できたらしい。
その規模ってもはやインディじゃないし、広義のインディ音楽ビジネスをやっている大企業。


Enumclaw – Free Drop Billy (Official Music Video)

前回の楽曲も紹介したラップ畑のクルー達によるイーナムクローのお次のシングルがこちら。
さすが自称オアシス以降で最高のバンド、ブレない楽曲の金太郎飴具合で、なんか妙に納得。
オアシスなのは歌だけで実際シューゲイズ入ってるけど、このデチューン系のエフェクトを
こんなオーバードライブ以上の歪みと一緒にかけんなと。汚えしコード感が完全に消失して
ベースのピッチだけで精神の安定を保ってるようなサウンドになっており実にシットゲイズ。
まあ、こういうのはストリート感があって大変よろしい。なんか佇まいが格好いいんだよな。


beabadoobee – Last Day On Earth (Official Video)

ビーバドゥービーの新作EPから最初のトラックはオルタナロック感の減退したサニーサイド
ネオアコ風味の90’sサウンドで1975プロデュースとのこと、すごく合点が行く変化ぶりね。
出だしからアルバムまで正直そこまでいいと思ってなかったし、あの方向性自体がそれほど
ハマってると感じなかったんだけどこの路線の方がいいんじゃないでしょうか。でもこれを
もう少しだけ尖らせて洗練させたようなのはJapanese Breakfastに求めてたんだけどなー。


Yellow Ostrich “Julia” (Official video)

イエロー・オーストリッチ、解散を発表していましたがボーカルのソロバンドとして復活し
7年ぶりにアルバムをリリース、引き続きBarsukからです。最初の先行曲がこちらでして、
演奏はかなりゲスト参加ミュージシャンが多く担っているようで全部自分で演奏しました系
作品ではないようです。バンド時代の印象と少し違ってなんかこれは少しレディオヘッドの
OKコンピューターに入ってそうな曲だね。ちょっと不安な状態を保つコード感で浮遊感を
加え雰囲気出してくるあるあるな音像ですが、最後のギターソロが結構いい感じでしたね。


Rachel Chinouriri – Through The Eye

ジンバブエ系のUKシンガー・ソングライター、レイチェル・チノウリリが4月にリリースの
新作EPより先行トラックを公開です。大雑把にSSWと言ってもソウル系のでしていわゆる
エクスペリメンタルR&Bという感じの音楽性ですが、なんかこの曲は構成の妙というかね、
尖り具合と美しさ、普通に歌モノとしてのキャッチーさのバランスが良く大変いい出来です。
個人的な好みとして基本ボーカルや声をチョップト&スクリュードってその時点で好きじゃ
無いのですが、このくらいの使い方ならいいかなぁ。つい何度も聴いてしまう深みがある。


Laufey – Best Friend (Official Video)

アイスランドのシンガー、チェリストであるロイヴァイ(って発音するらしいよ)・リンが
4月に自身初のオフィシャル・リリースとなるEPを発表、そちらからの先行楽曲となります。
チェロの弾き語りでめちゃくちゃクラシックなスタンダード曲のカバー動画を上げる人って
イメージで、なんでもビリー某なども言及するバズりミュージシャンとなってまして成功が
約束されたような感じですが、ほんとにオールドファッションというか、インディの文脈で
全く無いんですけど、地力というか妙な魅力があるのは分かる。すげーシックないい声だし
メインストリームで売れるかもね。複雑なルックスしてますが、ハーフチャイニーズらしい。
ズッ友とは瓜二つの妹か姉の事で、並んで一日遊ぶビデオは顔が似過ぎていて判別不可です。

日本のリリース

STILL DREAMS – Last True Love [Official]

本邦スティル・ドリームズが来月Elefant Recordsからリリースする新作ミニアルバムより。
これはさ…完全に女声版ビザール・ラヴ・トライアングルじゃねえかよっ!なんていうかさ、
ものすげークオリティの高いパロディ芸みたいな。まあそういう曲もあってもいいんじゃ…
って思ったけど確か去年もCUREやったばっかり。ま、まぁ、その曲はアルバム未収録だし
セーフ?でしょ。Ltd500、ピンクカラーヴァイナルのアナログ12″プレオーダー受付中です。

今週のLP/EPフルリリース

The Antlers – Green to Gold (LP)

久々のアルバムだけど、1stの頃に強かった要素がすごく熟成されたものになってて、本当に
ちょっと感動に近いレベルの出来だね。UnderseaっていうEPまでは良かったけどそれ以降
なんだか路線が微妙になっちゃってた分ここに来て初期のサウンドを年齢と経験で洗練させ
完熟した特色としてこのクオリティで展開してるのがある意味ミュージシャンシップ理想形
とも言えるし、文句ない。先行曲いいなとは思ってたが正直、期待の遥か上を行く内容です。
この二人は音楽性の形容が難しくて、響きがポストロックなオルタナカントリー・フォーク
ってところになるとは思うんだけど、空間系フレンドリーでウェットな視線、フィルターを
もってして牧歌的な田園風景を眺めているような感じなんだよ。滋味深い自然賛歌だねえ。
昔、確か渋谷のクアトロでLocal Nativesと2マンの来日公演があったから行ったんだけど
アントラーズの方が断然良くて、人生観たライブのうちトップ5には余裕で入る内容だった。


Floatie – Voyage Out (LP)

思ってた以上にマスロックしてるね。微かにジャジーなフィーリングもあってもちろんエモ
でもあるんだけど、M-1とか完成度がすごくて、ソフトになった女声版のFaraquetみたいな
感じにも聴こえる、ギターの鳴りがどう考えてもDC系の流れを汲んだポストHCなんですよ。
あとはAncient Greeks的でもある。つまりクリーンに洗練させる方向性のハードコア由来
バンドサウンドUSマスロック・ポストロックの理想形みたいな奴、ひっさびさに聴いたわ。
シームレスに楽曲が繋がる編集も効いてて、とてもテンポよく進むし、何と言ってもですね
長尺で間延びする展開のトラックがない。この手がやりがちな、自己満垂れ流しのパートが
全然出てこないんですよね。また通しで聴きたいと思えるかどうかはここが本当に重要です。


Esther Rose – How Many Times (LP)

今回は先行1曲目のタイトルトラックが強烈で、それは理想的なさじ加減の調整だったけど
全体聴いた感じ、もう少しだけカントリー感を減退させれないのかな?今ひとつ垢抜けない
というか、カントリー要素が強いのに垢抜けないと本気のカントリーになっちゃうでしょ。
いや、本気のカントリーやってるんですと言われたらそれまでというか何も言うことはない
わけだけど、見せ方やレーベル考えたらそんなハズないだろうから、じゃあもうちょっとは
モダンに洗練させてインディの装いにして欲しさある。でも他にもまあいい曲あるし、あの
ちょっとカラっとして気の抜けたボーカルは素敵だと思うから、エンジェル・オルセン的な
方向性になりがちな所をうまいこと差別化できるような落とし所を見つけて行って欲しい。


Xiu Xiu – OH NO (LP)

最初の先行曲、グルーパー参加曲が本当に理想形で、たまにはこういうの作って欲しいなと
ずっと思ってたようなモノだったし、ほとんどの曲をそれぞれ違うゲストとデュエットした
作品って触れ込みだったから淡い期待を抱いていたんだけども、開けてみたら割と平常運行
っていうか、そんなにシンプルに朗らかにはして来ないか。まあ他のゲストも著名な人たち
とはいえキワモノ揃いだから当然っちゃ当然。M-14に配置されて大団円のサービス曲扱い
となった例のグルーパー曲は完全に浮いてて涙。ちょうど10年前くらい、少しだけ色気を
出してた時期があって、前半の曲は割とキャッチーだったりしたアルバムもあったんだけど
その路線でもいいから、偶に俗世に降りて来て欲しいなぁ。M-9はキュアーのカバーですね。

シャロン・ヴァン・エッテンをフィーチャーしたM-1のビデオもLP本編と同時に出てます。