GVVC Weekly – Week 210

Amber Arcades – Barefoot On Diamond Road

ユトレヒトのミュージシャン、アンネロッテさんによるアンバー・アーケイズの新作アルバムがアナウンスされ、最初の先行曲が公開です。
ほぼ生音のみで、かつちょっとイナタイ路線だった前作の雰囲気からはかなり趣を変えてきて、スクエアーな宅録のシーケンス感が強いモダン系のインディポップに。
ほのかにドリーム、ほのかにサイケっていうところは基本変わらず、全体的には強烈なカラーなどのない中庸な音楽性と抑えの効いたオトナな雰囲気です。
6年くらい前の1stがめちゃくちゃ地味に大人しくしたAlvvaysみたいでジャケも良くて好きだったんだけど、そっから個人的に望んだようには進まなかったね。でもこれも悪くはないかな。

Taken By Trees – Say You Don’t Mind (Official Visualizer)

Concretesのヴィクトリアによるテイクン・バイ・トゥリーズがゾンビーズのコリン・ブランストーンのカバー曲のみで構成されたEPをアナウンスし、最初の先行曲。
これは原曲からしてビートレスの弦楽隊バッキングによるチェンバーポップ的なテイストのためそもそも彼女との相性もいいはずで、歌としてのテンポや骨組みは割とそのまんま、アンビエント感と十八番のアンニュイさをプラスしモダナイズした仕上がり。
柔らかい音像で淡く揺れるリゾート・コーラスポップになってます。

Kraków Loves Adana feat. Ruth Radelet & Adam Miller – “When The Storm Comes” (Official Video)

クラコフ・ラヴズ・アダナが来年1月にリリースする新作アルバムから、元Chromaticsの二人をフィーチャーした先行トラックをビデオ公開。
元からサウンド的にシンセを抜いたクロマティックスって感じなんで噛み合わせは良いに決まっていて、取って付けたような客演っぽさも一切ない実に自然な仕上がりです。
ただ正直テクスチャーとか音像はともかく、いかんせん曲が弱いよね。これはラスさんのソロとかも同じ印象で残念なところではあります。活動すればするほどジョニー・ジュエルの凄さが浮き彫りになるって悲しいな。

Caroline Rose – “Love / Lover / Friend” [Visualizer]

ニューヨークのキャロライン・ローズが来年の北米ツアー発表にあわせてセルフプロデュースのニューシングルを公開です。
初期はキッチュなガレージロックぽい趣もあって直近作では少ししっとり目のオルタナ・シンセポップに進行していましたが、そこから今回のこれはさすがに何があったのか心配になる位の変貌ぶり。
ストリングスが大々的に導入され厳粛なムードを伴った繊細なフリーフォークで、アンビエントのニュアンスも入っており前情報なしで聴かされたら絶対にこの人とわからない仕上がりです。
流石に単発の公開なので、この路線のアルバム作ったりはしないでしょうが不意打ちすぎてちょっと印象に残りました。

今週のLP/EPフルリリース

Aoife Nessa Frances – Protector (LP)

ホント格好いい音像。いわゆるアンビエント系SSWが持っている基本的な長所は保持したまま、より生バンドアンサンブル方面に発展させたある意味フォーキーなポストロックとも呼べる幽玄で芸術点の高いサウンド。
なのに突き放したスノッブな感じはなく、温かみすら感じるタッチとほどほどに明瞭なボーカリゼーションは強度のあるメロディを紡ぎ、それを彩るソフトなサイケデリアはスムーズで流麗。先行のM-1,M-3やライブではかなり前から演奏していたM-8あたりは特に素晴らしい。
前作もかなり良かった印象があるけど今回はもう名盤と呼べるレベルだと思うし、もう完成系まで行ってる。
ただ音が深いというか没入感が高く、そこはかとなくドープで空間に影響を与える度合いが大きいので、いろんなシチュエーションで気軽に趣味のいいBGMとして機能させることができないのが悩ましい。必ずしもマイナスなことではないのだけど。
レーベルも順調にステップアップしてるし、今でも少し彷彿とする瞬間があるオルダス・ハーディング的な路線も考えられるが、こっからどうなるか。


girlpuppy – When I’m Alone (LP)

昨年のEPのリードシングルがなかなか素晴らしくて、年末リストにもギリギリでランクインさせた。
前作から1年ちょっとで届けられたこのフルアルバムは、予想とかなり違って数多のゲストミュージシャン達によりガッチリ演奏がサポートされたすごく手堅い仕上がりに。
もはやベッドルームインディって趣はほとんどなく、インストが正統派にオーセンティックなアレンジで、少しだけオルタナ感のある内省的なフォークロックと言えるような風情。
クレジットみたらわかるが、本人は完全に歌だけでギターすら一切弾いてないからね。(ハンドクラップを担当パートとしてクレジットすな!)
さすが名門Royal Mountainそう来たかって部分もあるが、この子の武器、特色が活かせてるかというとちょっと何とも。
本人が未成熟な段階でウワモノの音色にドリームもシューゲイズもニューウェイヴもなく、DIYもかなぐり捨てるなら、削ぎ落とす程に純粋に楽曲勝負の比重が上がるわけだからね。
次は全部独りでやってみて欲しい。


Deru – We Will Live On (LP)

あまり深い考察はできないんですが、コンセプトものというか、特殊なトリガー的なデバイスで生のアップライトピアノをデジタル制御し無人演奏させるみたいなところで、ホントそれ聞いて想像する印象そのまんまなサウンドなのが面白くて。
結局、タイム感がシーケンサーのノリで打鍵も素っ気ないんだけど音色だけがリアルのピアノっていう誰得ピアノアンビエントなんです。ちょっとプリペアードっぽさも出ててKelly Moranとかみたいなニュアンスもあるね。もしそこでこのインスタレーションやってたら絶対聴いちゃう。