GVVC Weekly – Week 236

Squid – The Blades

引き続きWarpから来月リリースされるスクイッドの新作アルバムより三つ目の先行曲がビデオで公開。
ボーカルがあまりにもそれっぽい歌い方する所謂ロンドンのポストパンク勢なのですが、サウンド・アレンジの方で他とちょっと一味違うのがなんかわかる独特な風情を持つ彼ら。特に近年は妙なスケールの大きさを感じるサウンドが仕込まれていて、この曲もヒリヒリと不穏かつプログレッシブなポストハードコア、ポストロックとも呼べるような音楽性になってますね。
映像の方は役所にて窓口はガラガラなのにガキンチョのイタズラにより整理券番号がとんでもないことになってしまった人が主役の面白ショートムーヴィー仕立てで、かなりサウンドの方と展開もシンクロさせた出色の作品で必見です。


Buck Meek – Haunted Mountain

ビッグ・シーフのバック・ミークはソロでも活動していますが、遂にそちらでも本体と同じく4ADと契約しての新作アルバムをアナウンスし最初の先行曲が公開です。
ペダルスティールの入った勢いの良いオルタナカントリーのポップな楽曲になってまして、そこまで乾き過ぎずに程よい煌めきもあり、個人的には今までの彼のソロ作で最も素晴らしい楽曲だと思います。
バンドの方ではあの次元のシンガー抱えてるもんで、どうしても相対的にボーカルの存在感が弱く感じがちでしたが、録りやミックスなのか、何か変えたのか、今回はそこも比較的モノにしてるように聴こえるし、ほんと細かいトコですが明らかに違う出来栄え。他の曲も聴いてみたいな。


Loraine James – 2003

ロレイン・ジェイムズが引き続きHyperdubからのリリースとなる新作アルバムをアナウンスし最初の先行曲を公開。去年も何か出してた気がするし、別名義も出してたしなかなかのペースです。
今回はサンプリングループをベースにしたアブストラクト・ダブのようなサウンドで、ほぼビートレスと言えるような構造に、本人の独白がユラユラとたゆたうクールな音像はHTRKみたい。
アルカとかソフィーあたりの流れっぽい路線のトラックは正直好みではなく、全体的にはこの人にもその手合いの側面が間違いなくあるのだろうが、音の質感に凄みがある中でもうちょっと叙情的かつメロディアスな感覚もあるように感じられて、一応全部の作品を聴いてはいる。リリースノートに今作はより親密というか深い部分出してくる作品というような触れ込みが書いてあるから、期待です。もっと歌ってる曲増やしていいのよ。


Sea Lemon – Cellar

シアトルのシー・レモンがLuminelleからのシングルをリリースし、ビデオを公開。
昨年のEPはspirit gothから出していたけれど、このルートってあり得るんだ?という展開。レーベルの規模って意味では大してステップアップでもないかもしれないけど、ブランドってとこで見る目変わってくるのは仕方ない。
音の方はスロウダイヴみたいな清涼感たっぷりのシューゲイズ・ドリームポップで、これといった強烈な個性はないのですが、ココが拾うのがよくわかる深く曖昧な甘さが際立った小綺麗なサウンドで、研ぎ澄ますとより深化しそうな感じがします。


Speakers Corner Quartet – Soapbox Soliloquy (feat. LEILAH)

ロンドンのスピーカーズ・コーナー・カルテットが来週リリースするデビューアルバムから五つ目なのでおそらく最後の先行曲。
一つ前の曲も紹介しましたが、今回はレイラをフィーチャーし、もはやジャズというよりはちょっとジャジーなヒップホップとオルタナが混ざったような雰囲気で、ある意味レディヘみたいな音像とも言える仕上がり。
この人たち編成が面白くて、ベースとドラムにフルートとヴァイオリンがパーマネントのカルテットってのが効いてるのか、よくミッドが空くからドラムがラウドにしてなくても異様に目立って聴こえる。ある意味、主旋律がいないような構成なので、ほとんど全曲にゲストボーカル据えるのにも最適だし、考えられてますよね。

今週のLP/EPフルリリース

M. Sage – Paradise Crick (LP)

今回も素晴らしいです。ポップやフォークの要素がない歌なしアンビエント作家で一人だけ選べとなったら何の迷いもなく彼、絶対王者の新作は生楽器とシンセの有機的な融合をさらに先まで深化させた結果、もはやアンビエント・アンサンブルといえるような代物に。
こんなに自然で柔らかく美しいサウンドスケープ、エレクトロニクス入っているのにもかかわらずナチュラルすぎて自然の景色そのもののような雰囲気は、曲が長くないこともありBGMとしてのテンポもよくてアンビエントにありがちな冗長さも解消。
また今回ビートとまではいかないが、軽いエレドラ・パーカッション系のエレメントがある程度明確に刻みを感じるリズムをとっており、特にM-8なんかはエメラルズというか、Steve Hauschildtのキッチーめなトラックくらいのさじ加減でほのかなニューウェイブ風味すら漂う。入門用にも最適で、これ以上にない聴き易さと朗らかさです。貫禄や圧倒するような凄みって部分は多少犠牲になってる気もするが、総合点では過去いちのベストアルバムでしょう。