GVVC Weekly – Week 88

Cass McCombs – The Wine of Lebanon

キャス・マコームズの単発シングルがAnti-からリリース。あまりこういうシングル然とした
楽曲のイメージがないが、今回それも納得の完成度、説得力と間口の広さを併せ持った会心の
一曲なんじゃないですか?これはどうしたの、この曲だけなのか、こんな方向性のアルバム
今後出てきたりするのかしら?いぶし銀の作家性だった彼がここにきて、元々の良さは全て
そのままに、意識してのことなのかどうか、キャッチーさすら感じさせる一発。フレッシュ!
彼が曲名と同じフレーズを繰り返し、初見で一緒に歌えるようなコーラス入れてくるとはね。


Destroyer – foolssong

コロナの始まりに、リリースしたアルバムのツアー真最中だったデストロイヤーのダンさん。
その直近のライブ映像と、quarantine中のvastな世界が織り混ざったビデオが出ました。
ムービーとサウンドがかなりマッチしてて不思議と今にしっくり来る。歌詞もすごくいいね。
Where the honeyed diamonds of the light leaving your eyes were?


Squirrel Flower – So Hot You’re Hurting My Feelings [OFFICIAL AUDIO]

本当、この曲の勢いが止まらんね。こないだワクサハッチーもカヴァーしてたし正直ちょっと
フックの部分の説得力というか80’sの決定的名曲みたいな貫禄があって、聴いた瞬間これは…
ってなるから納得で、実際にこの曲のオリジナルが公開された時、即、これは凄いよとココで評したし、また私の審美眼が証明されてしまったようね。今回この”救われるフラワー”さん
バージョンもなかなか良くて、あえて大味にスロウバーストさせ、コーラスの旋律を最大限に
ビッグ・メロディとして鳴らす、Waxahatcheeの削ぎ落としとは逆の方向性で、これも乙。
オアシスの有名曲みたいな、皆が肩組んで歌える超・スーパーアンセムみたいになってるよ。


Sinead O’Brien – Roman Ruins (Official Visualiser)

Speedy WundergroundにChess Clubと、拾われるレーベルから間違いなさすぎる感じで、
名前がどうしてもシネイド・オコナーに空目してしまうんですが、例によってアイルランドの
シネイド・オブライエン。ポエトリー・リーディング・SSWバンドといったらいいのかな、
この語りのスタイルはいいね。多分これでもっとポストパンク的な音楽だったら鬱陶しくて
しょうがないが、ちょっとUSオルタナ的な方向性のアンサンブルだからいいんでしょうね。


Lydia Ainsworth – Forever

リディア・エインスワースの新曲、先週AustraのLPレビューで近い方向性と言及したのが
これでは完全に嘘になってしまう程のびっくりイメチェンをタイミングよく果たしたね。
か、変わりすぎだろ。一気に朗らかに、シンセやアートポップ性を捨て、サニーサイドへ。
でもまだ慣れてないというか、無理してる感が出てて全然よくないね。歌唱がもう楽曲に
まったく馴染んでないし、浮ついてる。よくこの状態で出そうと思ったな。正直、元々の
路線が次作でようやく真の完成を迎えそうだったのにどうしてこのタイミングで…頼むよ。


Jorge Elbrecht – Tuesday Morning

ここんとこダークづいていたジョージ・エルブレヒト、Violens期感の強い新曲を発表です。
特に良くはないんですけどね…お、これやるのかって感じで。V EPっていう4曲入りの時が
最もネオアコに近く、サイケ感も薄くて清涼で甘美なサウンドやってて、あれがもう一度
聴きたいところではある。ただ昨年の本名名義アルバムはかなり良かったし、難しい所です。


Mamalarky – How to Say (Official Music Video)

リヴィ・ベネットの圧倒的な存在感が輝くLAのママラーキーから新曲のビデオが公開です。
Dirty Projectorsのシンプルな部分だけを抽出したような2分足らずのサニーサイドポップに
なるほどFire Talkからのリリースなざらついたローファイ・テープコンプ的な質感のサウンド
コーティングが鈍い光を放つ面白い楽曲で、すごくイイね。一つ前はもっとガレージ感の強い
トラックでしたが、なんかガバっとした音なのは同じかな。早くLP尺で聴いてみたいです。


Owen – A New Muse [OFFICIAL AUDIO]

アメフトが復活以降かなり活動的アンド普通に良くて困惑気味でしたがオーウェンの方でも
新作が出るようです。正直この名義の過去作と比べるとかなりアメフトに引っ張られている
内容で、後半の展開とか完全にバンドとの違いがわからない。ただこの人って基本ボーカルが
少し暑苦しいので、よりその部分が強調されてるこちらは個人的にはそんなに好みではない。
弾き語りみたいな感じの時期あったが、これは単純に少しアコースティック編成なアメフト。


Joe Goddard & Hayden Thorpe – Unknown Song (Official Audio)

ホット・チップ主要人物の一人、ジョーさんとWild Beastsを辞めたハイデンさん連名楽曲。
組み合わせを聞いて予想した通りの内容で、Hercules and Love Affairのゲボ(guest vocal)
にハイデンさんが参加したような音楽〜からの、Hot Chip印のコード・プログレスで一気に
開けるデジタル・スカイみたいなニューウェイヴ・ハウスです。こういう、即イメージがわく
コラボっていいよね。どうなるか全く想像つかない!ってのもそれはそれでいいんだけどさ。
ビデオがめっちゃダンスマニアにDDRとトラック共々90’sフィール溢れる一発になってます。


DESIRE “LIQUID DREAMS” (Official Video)

ディザイア新作からまた新しいのが出ました。前の曲でも思ったけど、もっとスカスカで
削ぎ落としすぎた音像の印象が強かったから、ちょっと派手になっちゃってこれじゃなんか
声の違うCHROMATICSっていう感じもある。ダサめのシンセソロを思いっきり挿入したり
ギターは使ってこないあたりも差別化なのかな。ちなみ泳いでるのどこぞのモデルではなく
ボーカル本人だし、ジョニー・ジュエルではなくこの人がIDIB社長ってことになってるね。

今週のLPフルリリース

OMMA – DOMA (LP)

基本的に丸く柔らかい音ばかりで構成されたアンビエントでレフト・フィールドと呼びたい
感じの作風。湿った感じはなく、ちょっと宗教的な響きでフランス語?のスポークンワード
とかも入ってくるんだけど自然派って感じがして凄くいい。でも現代音楽って言いたくなる
突き放した雰囲気もあって、バランスが絶妙。ドルフィンズ・イントゥ・ザ・フューチャー
とかの方向性と通じる部分もあるね。あとジャケットが素晴らしいんだけど、デジタルのみ。


SHINER – Schadenfreude (LP)

あまりに変わってなくて驚いたが、楽曲の出来自体はともかく勢いは本当に劣化してない。
ポストハードコア経由のエモとポストロック中間みたいなバンドが凄く流行ってた15年近く
前、ディスメンバメント・プランやファラケット、ピンバックにペレなどを誰もが聴いてた。
その文脈の中でかなりオルタナ、ヘヴィロックの傾向が強いサウンドだったけど、独特の
空気感というか、歪みにシューゲイズ的な方向性とは違うベクトルで空間系を多用してくる
ギターワークとやけに重さを感じるドタバタドラム。ボーカルも変にカリスマティックで
こんなバンドは他にいないって。ただ、バンドやらん奴が聴いて楽しい音楽かは不明だね。


Buscabulla – Regresa (LP)

先に出てた楽曲が凄く良くて期待してたが、まあまあ。こないだのリド・ピミエンタでも
思ったけど、ラテンの要素を臭くなり過ぎないようにポップに洗練させて、身体性も強く
感じさせるのにマッチョに振り切らずインディの範疇に収めるって、昔ぜんぜんなかった
気がするけど、最近ちょいちょい見かけるから嬉しいんだよね。でも一応体裁としては
これもエレクトロニック・ポップっていうことになるんだろうし、オーガニックの定義が
かなり揺らいでる実感がある。電化かどうかで二分されてたのが、その先にインターネット
って区分まで出てきた感じで、音源DJが普通になりすぎて、CDでDJしてるのがアナログ
だねって若い子たちに言われるって話にも通じる。アナログの意味とは…。ブスカブラ、
でもいいんだけどやっぱブースカブーリャって呼びたいなぁ。ボーカルがかなり甘いのが
聴き易くていいけど、下手こいたらしょうもない恋愛R&Bみたいになっちゃいそうな感じ
あるから、さじ加減は難しいところではあるね。明らか捨て曲っぽいのある点もマイナス。