GVVC Weekly – Week 89

ellis – pringle creek (official video)

エリスの先月リリースされた新作アルバムから、ビデオカットです。これは役作りではなく
リネアのリアル旦那ブランドン(Captured TracksからリリースしているChastity)も登場。
ダサいカットも沢山あるけど、情緒溢れる映像で、素敵なロケだったのがわかる。これは
もっとミニマルな編集だったら相当いいビデオになったかもね。自然の中でギターソロを
エアギターするシーンが終盤にあるんだけども、そこの動きが気合入ってて大変よろしい。


Dehd – Loner

シカゴのデッド、早くもフォローアップの新作アルバムが引き続きFire Talkから出ます。
2019年のGVVCベストトラックでも”Lucky”が5位に入選しましたが、この人たちは実に
メロディがいい。旋律的なところだけじゃないので、歌心と言ったらいいんですかね。
サウンド的には粒子が粗くてあまり繊細なテクスチャーじゃない割には印象が汚くなく、
すごい甘さもあって、地味に男女ツインボーカルなのも効いてます。アレンジも結構
自己満足系ではなくサービス精神のある構成で、色々と聴きやすいんだよね。オススメ。
本当はビデオが出てるのですが、芝居仕立てで尺が二倍あり、しかも曲の途中にも挿入
されるのでテンポ悪く、楽曲を聴くのには適さないのでこちらの方を載せときました。


Mary Lattimore – Dreaming of the Kelly Pool

ハーピストのメアリー・ラティモアがギタリストのPaul Sukeenaと共作シングルを発表。
美しくて繊細なアンサンブルで素晴らしいサウンドスケープ。ドローン部分はスローアタック
ボリューム奏法的なギターで担いつつ、その上をハープの爪引きが軽やかに躍るスタイル。
ダイナミクス系と空間系を駆使したテクニカルな音作りで、エフェクター好き悶絶の内容。
ハープにもリバーブだけでなく複雑なディレイや残響にモジュレーション成分が入ってる
ように聴こえる、エアでマイクで集音したものにかけてるのかな…ライブだとどうすんだろ。



Mrs. Piss “Knelt” / “Downer Surrounded by Uppers” (Lyric Video)

チェルシー・ウルフが2人組ユニット、ミセス・ピス(おしっこ夫人)を新結成しました。
2曲同時に出てまして、THE KILLSを重くしたようなドゥーム・ノイズロックのナンバーと、
一転、高速で疾走するグランジバーストのトラック。音楽性とダウナーなロックイメージに、
何故だか少人数のユニットとわかる、こじんまりとした雰囲気もあって、本当キルズ的かな。
ちなみに速い方の曲名ですが、つまり「陽キャ達にかこまれた陰キャ」という事です。合掌!


Silverbacks – Muted Gold

ダブリンのシルバーバックス新曲はかなり完成度の高い、緻密に構成された乙なトラック。
もちろんポストパンクベースではあるんですけども、ミニマルじわじわ系のクラウトロック
フィーリングが強いリズム構成に、ちょっとブルックリン一派のマスロック・プログレ系に
ありがちなパーカッシヴで細かいギターワークが展開されて、中々絶妙な塩梅の仕上がり。
あとな、ここまで効果的なウーッ、ハーッ!のカンフー合いの手聴いたことないんだよね。


Behemoth – A Forest feat. Niklas Kvarforth (Official Video)

ポーランドのブラックメタルバンド、ベヒーモスがCureのA Forestをカバー。普段だったら
まあ取り上げない界隈ではあるんですけども、なんかやけに出来がいいから一応載せとくね。
多分、名カバーって次元で全てが上手くいって、聴ける。原曲に馴染みある事前提ですけど。
リタジーとかデフヘヴンとかたまに扱ってるしいよね?その辺聴けるならこれはアリですわ。


Gayngs – Appeayl 2 U

ミネソタとウィスコンシンコネクションの大所帯コレクティヴ、ギャングズ。10年ぶりの
新曲は、有名ベニューのアニバーサリーライブ限定で復活する予定だったもののコロナ禍で
なくなったということで、急遽アップされたものです。これはPoliçaのメンバーが中心の
プロジェクトで、当時まだここまでビッグでなかった(成功が約束された感じではあったが)
あのBon Iverも参加しており、今作でも演奏してるみたい。レイドバックしたアダルトな
ごった煮サウンドで、ジャジーだったりソウルだったりもするフリーフォーク的サウンドの
10年前のスタジオ作は本当に素晴らしいけど、今回のはまあ、さっと録った感じで軽くて
サウンドもイマイチかな。企画モノって事で、前のアルバム聴くきっかけになればいいよ。
あの”プリンス”が袖で観てて、ギター背負って飛び入り参加する寸前までいってたのに何か
やっぱやめたってなって実現しなかったのがニュースになってて、それの印象が強いよね。

今週のLPフルリリース

Porcelain Raft – Come Rain (LP)

先行曲でも書いたけど、ピアノ弾き語りに近いスタイルの楽曲がこの人のイメージというか
雰囲気にマッチしてて、かなりプラスに作用してる。少し怪しい英語の謎のイタリア親父が
独り、暑苦しいボーカルで一生懸命ドリームポップやってるこの姿になんか惹かれるんよね。
今までは歌を全体のサウンドに埋没させる様なもっと曖昧なミックスだった気がするけど、
これも時代か、今回結構パリっとした音作りで、浮遊感は減退したものの多分この方がいい。
名門Secretly CanadiansからLP2作発表したけどそれらは正直微妙で、どうしても10年前に
Acéphaleから出してたヒットシングルや12″の印象が強いし、ダニエル在籍時のあのYuckと
スプリットとかもあった気がする。メロディは依然やや弱いんだけど、一枚の作品としては
個人的に今作が一番ダレずに聴けるんだよね。もう自主リリースになっちゃってるっぽいが、
愛嬌あるし好きだからずっと続けて欲しい。インタールード込みで8曲の実質ミニアルバム。
M-1,M-5,M-7みたいなのがもっと聴きたいけど、この路線ばかりで1枚だとそれも微妙かな。


Moses Sumney – græ (LP)

なんかもう、いつからかわからないけどダーク・エクスペリメンタル・ソウルSSWみたいな
スタイルって本当に一般化したよね。R&BとかHip-Hop出自じゃなく、エレクトロニック
流れの、Tri-AngleやArca周辺のヤツがゴスペルっぽくなってきて、FKA twigsだってその
範疇だし。変な話、今にして思えば歌い始めた時のJames Blakeが嚆矢だった気もするね。
彼はさしてダークじゃないし、ホワイト・ソウルだけど。で、この作品だけど、そもそも
1枚のアルバムを2回のリリース日に分けて半分ずつ発表、でも分作じゃなく同一タイトルと
その戦略が気に入らない。プロモーション効率がいいって話で、もうそう珍しくなくなって
きてるみたいだけど、正直厭だね。ただ、この人は歌がいいから、シンプルに削ぎ落として
生々しい、ほとんど独白みたいな楽曲がかなり素晴らしくて、M-12とかM-17はオススメ。
それでも結構重いから、トラックからして重厚な楽曲はちょっと疲れちゃって聴いてられん。