GVVC Weekly – Week 272

Rosie Tucker – Paperclip Maximizer

L.A.のSSW、ロージー・タッカーが今月リリースする新作アルバムから三つ目となる先行曲のビデオです。以前はエピタフからリリースしていたような気がするのですが、同じ地元のレーベルに移籍していますね。
内容は最近やや多いなと感じる、デッドな響きのUSインディ風トラックの上で空間系のかかりがごく薄い明瞭なボーカルが力強くリードしていくサウンドで、ちょっとエモの要素も入ったような雰囲気がそこはかとないやるせなさやフラストレーションを伝えてくる素晴らしい楽曲。
気怠さとパンチのある存在感が上手く同居していて、コーラスのタイトルフレーズが凄く耳に残るし、それでいて全体がなんとなくオシャレ気味にまとめられているのもポイント高いです。良いね。


How To Dress Well – No Light (Feat. Anarthia DLT)

ハウ・トゥ・ドレス・ウェルがプロパー新作としては実に6年ぶりとなるニューアルバムをアナウンスし、2つ同時に公開された先行トラックから片方をピックアップ。かなり間が空いたのでそらそうかというところですが、レーベルは移籍し今回はSargent Houseからになるようです。
こう言ってはなんだが若干、胡散臭さのあるタイプ(必ずしも悪い意味ではない)なので正直イメージとしては合う。音楽性も当然ながら変化していて、以前は特徴的な裏声インディR&Bをひたすら純化・先鋭化させていた印象がありましたがすこしフォーカスをぼかし幅をもたせた雰囲気に。
特にAnarthia DLT(誰?全く情報なし)を客演に迎えたこの楽曲は極端にエディットというかグリッチ入ってはいるものの歪んだギター的なサウンドが主役になった宅録系のインディロックとも解釈できる内容で、彼の中では圧倒的に新機軸です。新作にはCFCFなども全面的に参加しているようで、ちょっと面白くなりそうだね。


Roofman – old friend

オランダのSWW、ルーフマンが今月末にリリースする新作アルバムからの先行曲。他にも2曲出ているのですがこちらをチョイス。
ソング・オリエンテッドな弾き語りプラスアルファ系のシンプルなサウンドではあるのですが、メロディが良いのと、ちょいとダビィにウェットな質感になっている全体の音色がひとクセあり、あまりクリーンになりすぎないように仕上げているのが面白い。
あくまでも偶然の産物かもしれないのですが敢えてサイケやドリームと謳う程ではない絶妙に中途半端なさじ加減で、終盤の展開なども流して聴いてると想定していなかったものが飛び出してくる感じで不意打ちの美学を勝手に感じます。でも多分この曲だけですね。


Anna Tivel – Disposable Camera

ポートランドのSSW、アンナ・ティヴェルが5月にリリースする新作アルバムから最初の先行曲がビデオ公開。
音楽性的には昨今のSSWバンド系インディとしか言い様がない実にシンプルなもので、本当に特定ジャンルのカラーを一切付与しないノーマル単属性なサウンドはMiddle Kidsあたりと近いが、どこか侘び寂びを感じさせる語り口はブレスが漏れ聞こえてくる様な深い音像で程よく感傷的であり、非常に奥行きのある4分間を演出してますね。
この「トモダチ」と「せんせい」が合体したようなキャラに本人が扮する謎ビデオもなんとなく曲のムードに合っていて面白い。

今週のLP/EPフルリリース


Gwendoline – C’est à moi ca (LP)

基本的にコールドウェイヴやダークウェイヴと呼ばれるような音楽って、まぁ多少は好きな要素もあるんだけども、どうしても諸手を挙げては受け入れられないというか、距離を置いてしまう。
今回のコレも一応はそういった分類になるし、やっぱりこう全身黒い服を着ている人達ではあると思うが、違いを感じるのはまずどこか軽妙な点。こういうのって、いわゆるCOLD CAVE路線の硬質なリズムマシン的なビートか、生バンドのポストパンク系ビートかに分かれる印象だけど、ここでの鳴りはそのどちらでもないというか、前者寄りではあるものの明らかに質感が異なる。
そしてこの手ではあまり聴かないようなアレンジ、ちょっとバレアリックだったり(M-5とか)どちらかというと清涼感すら漂っているような音色が自然に組み込まれていて、全体を通してのカラーが暗黒一辺倒ではなく明確に色彩を持っている点。勿論その彩度は高くないけど、決してグレースケールではないし、いい感じのスモーキートーンや中間色で綺麗に纏められていて、ポエトリーリーディングも入る薄めのボーカルメロディと軽めのビート圧なんかともあいまってか妙に上品で他にないような雰囲気なんだよね。
しかし、フランス語とこの音楽性は相性が凄く良いというのが嫌という程わかったわ。あと、パリじゃなくてレンヌってのがまたいい。これちょっとまたこの先の発展系を見てみたい。フルのバンドにならないかな。